ガルビネ・ムグルッサ(スペイン)は、ビーナスとセレナのウイリアムス姉妹(アメリカ)がグランドスラム大会で優勝する様子を、そして女子テニスのプレーが変貌していく様子を見ながら育った。 ムグルッサは、この力強い姉妹に感嘆し、憧れていた。彼女…

 ガルビネ・ムグルッサ(スペイン)は、ビーナスとセレナのウイリアムス姉妹(アメリカ)がグランドスラム大会で優勝する様子を、そして女子テニスのプレーが変貌していく様子を見ながら育った。

 ムグルッサは、この力強い姉妹に感嘆し、憧れていた。彼女は、このアメリカの姉妹のプレーの仕方、戦い方、そして振る舞い方が好きだったのだ。 「彼女たちが、すごく野心的だったところが好きだったの」とムグルッサは言った。「プレーするたびに、彼女たちはいつも心底勝ちたがっていた。ふたりともすごくパワフルだったわ。ふたりは、ほかの選手たちを威嚇し、怯えさせていた」。

 今、22歳となったムグルッサは、土曜日の女子シングルス決勝で、そのセレナ・ウイリアムスから全仏のタイトルを奪い取り、グランドスラムで初のチャンピオンとなった。スコアは7-5 6-4のストレート勝利だ。

 試合後のムグルッサは、テニスでもっとも重要なトロフィーを手にし、今後も獲得し続けたいと明言した。「もちろん優勝できてすごくうれしいわ。でも、私はもっと欲しい」とムグルッサは言った。「私の夢は、このままの勢いでプレーを続け、より多くの大会、これと似た大会で勝って支配することよ」。

 それはセレナが何年にもわたってやってきたことだ。セレナはグランドスラムで21回優勝し、オープン化以降の最多優勝記録、シュテフィ・グラフ(ドイツ)が持つ22回まであと1つに迫っている。しかし、その22回目を手に入れることに彼女はかなり苦労している。

 昨年のウインブルドン決勝での、ムグルッサに対する勝利まで、セレナはほぼ無敵ですべてのタイトルを獲ってきた。ところがそれ以降、ぴたりと止まってしまったのだ。セレナは全米オープン準決勝でロベルタ・ビンチ(イタリア)に、今年1月の全豪オープン決勝でアンジェリック・ケルバー(ドイツ)に、そして今、ムグルッサに敗れた。グランドスラム・タイトルが、3度連続で初優勝者の手にわたったのは、2011-12年以来のことである。  「それについて考えたわ。昨日考えたの。『私にだってきっとできるわ』って」とムグルッサ。「このところ勝っている人たちを見たときに、そこには新しい顔があって、『きっと私もそれらの新しい顔のひとりになれる』と思えたのよ」。  月曜日に発表される最新のWTAランキングで、ムグルッサは4位から、キャリア最高の2位に浮上する。彼女の上にいるのは、セレナただひとりだ。  ムグルッサは、かつてセレナやその姉のビーナスが見せたのと同じタイプの決意、果敢な姿勢をコート上で見せた。グラウンドストロークをハードヒットし、ラインぎりぎりを狙い、真の成果をもたらすリスクをおかしてプレーしたのだ。  「彼女(ムグルッサ)は、思いきってショットを打ち込んでいくのが好きなのよ。緊張が高まる瞬間、ほかの選手なら硬くなってしまうような瞬間でも、彼女は果敢に打っていく」とコンチータ・マルチネスは言う。マルチネスは、1994年のウィンブルドンで優勝を遂げた唯一のスペイン人女子プレーヤーであり、今はスペインのデビスカップとフェドカップのキャプテンでもある。

 「セレナも、そういうプレーをする選手ね」とマルチネスは言い添えた。「そしてムグルッサは、今後もグランドスラム大会で優勝するだろうと、私は確信している」。

 そのことに異議を唱える者はそういないだろう。ムグルッサが、サービスをはじめとし、もっと上達させたい部分がある、と話すのを聞けば、いっそうそう思える。  セレナは今、34歳で、すでに最年長の世界ナンバーワンであり、オープン化以降にグランドスラムで優勝した最年長の選手だとしても、彼女をもう終わった選手として扱うのは賢明なことではない。  グラフの記録は今もすぐそこにあり、追うべきであり、それは射程距離内にあるといえる。 「タイ記録の達成は簡単なことではない」と、セレナのコーチ、パトリック・ムラトグルーは言う。「でも僕らはきっとそこに行きつくだろう。必要なだけの時間はかかるだろうがね。でもグランドスラムの決勝、準決勝にたどりつくことができている限り、達成するための多くのチャンスを手にすることになる」。  彼はまた、こうも続けた。「もし彼女がそれを楽々とやってのけていたら、彼女は人間じゃないってことだ」。  ムグルッサのコーチ、サム・シュミックは、これがセレナ時代の終焉かと聞かれると、「違う違う違う。性急なことを言うな。とんでもないよ。違う違う。彼女は変わらず健在だ」と、答えた。「彼女(セレナ)はまだまだ幅をきかすだろう。そう願うよ。彼女は素晴らしいプレーヤーだ。僕らは彼女を必要としているんだよ」。(C)AP