専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第151回

 東京五輪から新たに正式種目に採用される競技で興味深いのは、3人制バスケットボール(3×3)です。

 本格的なバスケットボールをする場所がなく、空き地や公園などに設置されたひとつのゴールを標的にしてコート半分ほどのスペースでバスケットをしていたら、それが面白いからと、ついには五輪の正式種目になるって、すごくないですか。

 そうした競技の縮小版と言えば、フットサルなんかもそうですね。サッカーの”ミニ版”として、社会に広く認知されています。

 スポーツというのは、時代の流れによって、さまざまなものに変化していきます。例えばラグビーも、元はサッカーから派生して生まれました。一説には、イギリスの高校生がサッカーの試合でボールを手で持ってプレーしたら、「そういうやり方もありだな」となって、そこからラグビーとして世の中に広まっていったと言われています。

 もし日本の高校生が同じことをしたら、何とか連盟や協会とかの怖い会長さんから、「そもそも、あなたは選手なのかしら」とボロクソに文句を言われそうです。挙句、「けしからん」とか「ルールを守れ」とか言われて、廊下にバケツを持って立たされるのがオチでしょう。

 現代のスポーツ全体に求められるのは、多様性です。柔軟な解釈で、スポーツをもっと楽しく、簡単にショーアップさせましょう。

 というわけで、本題のゴルフの話です。

 ゴルフをカジュアルにして、なおかつ面白い遊びにする方法はないのでしょうか。いろいろと知恵を絞って、ゴルフの簡易版スタイルを考えてみます。

 一般的にゴルフを簡易にするとき、飛ばないボールやクラブにして、短い距離で楽しむアイデアがあります。グラウンドゴルフやスナッグゴルフ、ミニゴルフなど、実際に行なわれているものもたくさんあります。

 けど、個人的な感想では、満足感はイマイチです。やはり、通常のゴルフボールと自分のギアを使ってゴルフをしたいのです。

 そもそも、日本にはショートコースがたくさんありますから、そこでミニゲームをしたほうが、簡易ゴルフよりも楽しいと思います。

 ただ、ショートコースではドライバーを思い切り打つことはできませんから、それが不満に思う方も多いでしょう。結局、ゴルフはドライバーで思い切りボールを打って、しっかりラウンドしてこそ、みなさん満足するのかもしれません。

 そうなると、ゴルフの簡易版、さらにはショーアップや多様性を考えるなら、プレースタイルよりも、コースのほうで考えたほうがいいかもしれません。

 簡易版コースの最もポピュラーなものは、9ホールのコースです。多くの場合、グリーンが2つあって、それをアウトとインに分けてラウンドすれば、18ホールラウンドできるという計算になります。

 実際、そういうコースに行きましたが、プレーとしては通常の18ホールのコースを回るのと遜色ないです。ときどき渋滞する以外は、楽しくラウンドできました。

 一方、こういうコースもありました。なんと、ティーグラウンドにグリーンがあるコースです。

 どういうことかというと、ティーグラウンドとグリーンが対(つい)になっていて、逆方向からもラウンドできるのです。つまり、18ホールあったら、36ホール分楽しめるのです。

 これは、コースの端と端から同時に打つ――そんなことしたら、高速道路を逆走する暴走車みたいになって、事故を起こしてしまいますがな――のではなくって、ある日は1番ティーからスタートして、ある日は18番グリーンの脇にあるティーグラウンドからスタートする、ということです。

 発想としては面白く、とある日は打ち下ろしだったホールが、別の日に行くと、打ち上げのホールになっているわけで、刺激的です。ただ、この逆走できるコースは、2回行かないと、その面白味がわからないのが難点ですかね。

 一風変わったコースを求めるとなると、日本では限界があります。ならば、世界に目を向けて、面白いコースを探ってみましょう。

「絶対、ここに行きたい」と思っているのが、タイの『ロイヤルバンコクスポーツクラブ』のゴルフ場です。

 ここは、なんと競馬場の中にコースがあります。距離は短めですが、18ホールの設定で、500ヤード程度のロングホールもあり、十分にプレーを楽しめるそうです。

 競馬場の中にゴルフコースを造るという発想がすごいし、素晴らしすぎます。日本でも、東京競馬場や中山競馬場の中に造ればいいのに……って、絶対無理だろうな……。

 けど、野球場と練習場のコラボは実現しています。それは、神宮外苑です。

 神宮第二球場は、野球の試合がないときはゴルフの練習場になっています。野球をしている間でも、裏にある小さな練習場でなら、ボールは打てますけど。

 ともあれ、野球場でボールを打つのは、すごく気持ちいいです。だって、打った球が全部ホームランになるんですから。飛ぶ人は、7番アイアンぐらいでホームラン。飛ばし屋になった気分になれますね。

 夏は神宮球場でやっているヤクルト戦の歓声を聞きながら、ゴルフの練習をする。これもまた楽しい。

 昔、近所に事務所があったときは、よく行ったものです。あの独特の雰囲気はたまらない魅力です。練習後のビールもまた旨し、ですか。

 アメリカのコースで断然に面白いのは、PGAツアー、フェニックスオープンの会場となっているTPCスコッツデール。とりわけ、16番のショートホールは圧巻です。

 松山英樹選手が連覇(2016年、2017年)を遂げているこのトーナメントには、毎年多数のファンが来場。大会を通しての入場者数が50万人超えと、ケタ違いです。

 そして、その会場の名物ホールが、およそ160ヤードほどの16番パー3。ホールを囲むようにして3階建てのギャラリースタンドがあって、同スタンドだけでおよそ2万人以上が収容できるそうです。ひとホールあたりですよ。

 さらに、そのスタンドの上層部には『スカイボックス』と言われるVIPスペース(※30人ぐらい入れる、食べ放題・飲み放題のボックス)が200個もあり、ひとボックスが500万円弱で販売されているとか。それだけで、10億円近い売り上げですよ。いやはや、なんとも……。

 日本で一番有名なトーナメント会場のショートホールと言えば、東京よみうりカントリークラブの18番ホールですよね。クラブハウスの真下にあって、グリーン周りがちょうど、すり鉢状の芝生スタンドのようになっていて、トーナメント開催時には数千人のギャラリーで埋まります。

 でもそこは、たまたまそうなっただけで、狙って作ってはいませんけどね。

 そもそも、東京よみうりカントリークラブはある時期、アウトとインを入れ替えていますから。今では超盛り上がっている18番ホールですが、実は9番ホールだったのです。

 設計は名匠、井上誠一。井上先生にしてみたら……、勝手に順番を変えられて、そのほうが盛り上がるって言われてもねぇ……。今頃、天国でくしゃみをしているんじゃないですか。



いろいろとショーアップされたゴルフも見たいものですが...

 そんな感じでいろいろとコースを見てきましたが、日本も複合レジャー施設として、スタジアム型のゴルフ場を作れないものですかね。6ホールぐらいのコースで、イベント時には地下からサッカー場や野球場が現れてくるとかね。さらにコンサートもできれば、なおよろしいですが。

 ゴルフをやるにあたっては、「ルール&マナー」を守り、「あるがままに打て」、そして「パーおじさんとの戦い」と道徳の教科書みたいな、お題目が並びます。それが、ゴルフの教えです。

 そういうストイックな文化からは、スカッとするコースや、面白いコースなんて生まれません。もっと頭を柔らかく、いかにお客さんを呼ぶかを考えましょうよ。

木村和久(きむら・かずひさ)
1959年6月19日生まれ。宮城県出身。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、トレンドを読み解くコラムニストとして活躍。ゴルフ歴も長く、『週刊パーゴルフ』『月刊ゴルフダイジェスト』などの専門誌で連載を持つ。

『ヘボの流儀~叩いても楽しいゴルフの極意』3月5日発売