日本代表では「ふざけた奴」に徹する？　英国帰りの畠山健介、6月ツアーに

　ニューカッスル・ファルコンズの一員としてイングランドのプロリーグであるプレミアシップに挑戦した畠山健介が6月4日、ラグビー日本代表に合流。現役3位、歴代4位の72キャップ（国際間の真剣勝負への出場数）を持つ30歳は、都内ホテルで「相変わらずいつも通り緊張して、いつも通り楽しみで、いつも通り誇らしい」と意気込みを語った。

　6月のツアーに挑むジャパンは、5日にバンクーバーへ発ち、B.C.プレイススタジアムのカナダ代表戦を11日に控える。帰国後は18、25日にそれぞれ愛知・豊田スタジアム、東京・味の素スタジアムでスコットランド代表と激突する。

　特にスコットランド代表は2～3月にあった欧州6か国対抗戦では2勝3敗に終わるも、FBのスチアート・ホッグが大会MVPとなるなど存在感を示している。何より日本代表は昨秋のワールドカップイングランド大会で、スコットランド代表に敗れている。9月23日、グロスター・キングスホルムスタジアムで10－45と屈し、目標の8強入りを逸した一因としてしまった。

「カナダ代表もホームだから負けられないでしょうし、スコットランド代表もシックスネーションズを観る限り調子は良さそう。激しい戦いになる。その中でも、いい結果を出していきたいです。僕もある程度のキャップを持っていますけど、（日本代表の試合は）何回あっても緊張するし、何回あっても楽しみだし、何回あっても不安です。これはずっと変わらないかな、と思います」

　集合したてのこの日は、取材機会に対応した。バンクーバーへ出かける25名が、都内ホテルの大広間へ時間差で入室。終盤に顔を出した畠山が座るや、その場に大きな輪ができる。笑い声を起こす。昨秋に娯楽番組をはしごしたそのままの姿で、チームでの役割を語る。

「きょう、集まってみて、はじめましてではないですけど、緊張していると見受けられるメンバーもいた。僕みたなふざけた人間がいた方が、ギュッとまとまるのかな、とも思います。そういう役割も、果たしていきたいです。メッセージを与えようとすると、こっちも向こうもかしこまる。気さくにというのはおかしいですが、普通に、『最近、どうなの？』とか、『（プロ契約を控える大学生に）○○決まったね、契約どうするの？』とか。そこで『いやいや、そんなの言えるわけないじゃないですか！』と返ってくるくらいになると、いい雰囲気になる。そういう明るい雰囲気を作って、グラウンドでやることはやる、と」

――明るくいるのも、知性のうち。

「うーん、そうですね。そういうふうに、書いておいてください」

　ニューカッスルには2月から約3か月間、国内のサントリーから期限付き移籍した。異国で学んだことのひとつに、「価値観を学べたこと」を挙げる。

　クラブはトンガ代表主将のニリ・ラトゥやアメリカ代表主将のトッド・クレバーらを揃えるなど、人種のサラダボウルだった。畠山は「（西洋文化に）かぶれていると言われればそれまでですが」と冗談を交えながら、「違う者に対する寛容さは向こう（ニューカッスルというチームとその周辺）の方が圧倒的に上でした」と語っていた。

「日本代表に肌の色の違う選手がいることに意見がありますが、現場の僕らとしては何も気にしていない。彼らも一緒に勝とうとしている仲間でしたし、それが当たり前だった。ヨーロッパも、そういう感じでした」

　2019年には、ワールドカップの日本大会がある。3勝を挙げた前回のイングランド大会までワールドカップに2回連続出場中の畠山は、「ラグビーの現役を続けている間は、常にトップカテゴリーに絡みたい」と意気込む。

　身長178センチ、体重115キロ。主に務める背番号3の右PRにあっては、決して大柄ではない。それでも戦術理解度と機動力で、存在感を残していた。自分よりサイズに恵まれた若手が台頭するいま、こう話すのだ。

「現役を続ける、イコール、そこ（日本代表）を目指す、と。いろんな考えがあるとは思いますが、僕にとっての現役選手の価値は、そこ（日本代表に選ばれ続けること）にある。そこまで格好良いものではないんです。自分がやっている3番にもいろんないい選手がいるのは認めるんですが、負けたくない。そういう、エゴみたいな…」

　駆け引きの妙に左右されるスクラムでは最前列に入るなど、経験値がものをいう右PRの位置。その働き場で年長者の領域に入った折、異国で人間観を豊かにした。自分だけの味わいを醸し、その時々のボスに請われる選手でいたい。（文：向 風見也）