神戸製鋼コベルコスティーラーズ新体制。写真左から、アンドリュー・エリス主将、デーブ・ディロンHC、ウェイン・スミス総監督、前川鐘平主将、福本正幸TD(撮影:早浪章弘) オールブラックスの「頭脳」が神戸にやって来た――。 4月9日、神戸製鋼…

神戸製鋼コベルコスティーラーズ新体制。写真左から、アンドリュー・エリス主将、デーブ・ディロンHC、ウェイン・スミス総監督、前川鐘平主将、福本正幸TD(撮影:早浪章弘)

 オールブラックスの「頭脳」が神戸にやって来た――。
 4月9日、神戸製鋼コベルコスティーラーズは今季の初練習をおこない、新たに総監督(ディレクター・オブ・ラグビー)に就任したウェイン・スミス氏(61歳)、デーブ・ディロン ヘッドコーチ(43歳)らが就任会見をおこなった。 

 ウェイン・スミス氏といえば、カンタベリー出身(ニュージーランド代表キャップ17、ポジションはSO)、1997年からスーパーラグビーのクルセイダーズでヘッドコーチを務め、98、99年と優勝。その後はオールブラックスのアシスタントコーチとして2011年、15年のワールドカップ2連覇に貢献した世界ラグビー界のトップコーチだ。

 冒頭、福本正幸チームディレクターから就任の経緯について説明があった。交流が生まれたのは、スミス氏がチーフスのアシスタントコーチを務めていたとき(2012~14年)。神戸製鋼がチーフスとパートナーシップ契約を締結。選手を留学させるなど交流を深めていたのがきっかけだった。
 昨年、スミス氏がオールブラックスのアシスタントコーチを退くと聞き、「三顧の礼をもってNZに行きました」(福本TD)。
 スミス氏も1990年代、ワールドラグビー部のスポットコーチとして神戸に何週間か滞在、故・平尾誠二氏とも親交があったことで話がまとまった。

「オールブラックスは長くやりすぎました。おそらく200試合以上携わった。潮時です」(スミス氏)
 退任時、健康上の理由も取りざたされたが、「大丈夫です。全く問題ありません」(同)とのこと。ただ、「私には孫もいて、彼と過ごす時間も優先させたい」と、神戸に滞在するのは15週間。現場の指揮は、2013~16年にチーフスのディベロップメントコーチとして手腕を発揮したデーブ・ディロン氏を直々に招いた。

 今季、前川鐘平と共同主将を務めることになったアンドリュー・エリスは会見で言った。
「スミス氏は、私が人生で最も尊敬する指導者です。神戸に来て5年目になりますが、間違いなく今日がいちばん選手の目が輝いている」
 エリスはかつてオールブラックスでスミス氏の指導を受け、ダン・カーターとともにHB団を組んだ愛弟子だ。

 カーターが昨年11月に神戸加入を決めたのも、すでにスミス氏が神戸を率いることが決まっていたからだった。
「彼(カーター)とは毎週電話で話しています。彼は長いラグビーキャリアを神戸で最高の形で終わらせたいと言っています。セットにガチガチにこだわったり、ひたすらタッチに蹴りだすラグビーはやりたくない。何より、選手自身がエキサイティングだと感じられるラグビーをします。オールブラックスはそのスタイルですね。まずは選手たちが朝目覚めたとき“今日も神戸で練習したい”と思えるような環境を作ります」(スミス氏)

 実は神戸製鋼とチーフスのパートナーシップを締結させたのは、今は亡き平尾誠二氏だ。
 世界有数のコーチと惑星最高の司令塔は、不思議なめぐり合わせで、赤いジャージーに新たな息吹を吹き込もうとしている。(文:森本優子)