「誰もが『勝ちたい』と、強く思ってここにやって来ている。もちろん、僕もそのひとりですが」と、松山英樹は言った。 まもなく開幕するマスターズ(4月5日~8日/ジョージア州)。松山は今年で7回目の出場(過去にアマ時代2回。プロ転向後4回)と…
「誰もが『勝ちたい』と、強く思ってここにやって来ている。もちろん、僕もそのひとりですが」と、松山英樹は言った。
まもなく開幕するマスターズ(4月5日~8日/ジョージア州)。松山は今年で7回目の出場(過去にアマ時代2回。プロ転向後4回)となり、その情熱は一層強くなっている。
入念に練習ラウンドを消化し、いよいよマスターズに挑む松山英樹
松山は今季、ウェイストマネジメント・フェニックスオープン(2月)のプレー中に左手の親指付け根を痛めて、2日目のラウンド前に棄権。以後6週間、米ツアーを欠場して治療に専念した。そして、3月のアーノルド・パーマー招待で復帰してのマスターズ挑戦である。
松山は相変わらず、記者たちの囲み取材では悲観的な言葉が見え隠れしている。しかしどうして、心の中では勝利への執念が一段と高まっている気がする。
「先週から、ここで練習ラウンドをしていますけど、だんだん調子が悪くなっている感じがする」
そう話す感覚は、このオーガスタ・ナショナルGCで、本戦だけで22ラウンド、練習ラウンドを入れれば40ラウンド近くプレーし、コースを熟知している選手でしか理解できない”気づきの邪念”だと思う。
そうして、テレビインタビューではこう語っていた。
「なかなか最近は、自分の思いどおりにできないプレーが続いているので不安があるけれど、しっかりと自分のいい状態で挑めれば、チャンスはあると思う」
松山のマスターズでのデータを見ると、過去22ラウンドで、パー5のホールでは30アンダー。パー3のホールで10オーバー。パー4のホールで23オーバーとなっている。
なかでも、パー4では前半の1番(平均4.23)と7番(平均4.32)、後半では18番(平均4.41)、そしてパー3のホールでは6番(平均3.32)が”鬼門”である。
“鬼門”をどれだけクリアし、そのゲームの流れをどう組み立てられるかが、今年のカギになるだろう。
あとは、”不安”をどう断ち切って挑めるか、だ。
気づきの邪念――知りすぎるがゆえ、見えすぎるがゆえ、攻めあぐむ。守りに入って消極的なプレーになる、というのが気づきの邪念である。
先日、NHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』という番組で、将棋の「永世七冠」羽生善治棋士がこんなことを語っていた。
「キャリアを積んでいくと、どうしても守りに入っちゃうんですよね。(あらゆる局面が)よく見えるわけですから。そこで、一歩勇気を出して、新しいものに挑戦していくことが大切」
気づきの邪念を振り払うには、試されている自分の中で、守りばかりではなく、一歩攻めていく挑戦、勇気が必要なのだろう。
松山にとって今年のマスターズは、十分に優勝を狙えるだけの要素の積み重ねが、これまで以上にできている。
「それを、ここでどう出せるかだと思う」と言った本人の強い思いが、いい結果につながることを願っている。