ラグビー日本代表は6月5日、バンクーバーへ発つ。B.C.プレイススタジアムでのカナダ代表戦を現地時間11日に控え、スコ…

 ラグビー日本代表は6月5日、バンクーバーへ発つ。B.C.プレイススタジアムでのカナダ代表戦を現地時間11日に控え、スコッド33名のうち25名が現地入りする。
 
 今回渡航する唯一の大学生は松田力也。京都・伏見工高時代から攻撃スキルと勝負強さを買われた、身長181センチ、体重92キロのBKだ。いまは大学選手権7連覇中の帝京大で副将を務める。テストマッチ(国際間の真剣勝負)デビューの実現を、静かに見据える。

 ツアースコッド発表前の29日、松田は東京・帝京大百草グラウンドにいた。帝京大のSOとして、関東大学春季大会Aグループの4戦目に出場。筑波大を80-7で制し、「入りから自分たちのラグビーができた。意思統一、できています」と淡々と振り返っていた。

 所属チームでは、ずっとゴールキッカーを務めてきた。安定した成功率を保つべく、普段から集中的に蹴り込んでいる。

 昨秋のワールドカップイングランド大会でジャパンが3勝して以来、期待の星とされる松田は以前にも増してキックのことばかり聞かれるようになった。当時の日本代表副将だった五郎丸歩が独特なプレースキックのフォームで「時の人」となったためだろう。

 12本中10本を決めた筑波大戦後も、その例に漏れなかった。「悪くはないです。ただ、(グラウンドに舞う)風を読み過ぎて2本、外してしまった。風に乗せようと思ったんですが、それで(弾道が)弱くなってしまいました。その辺は(今後は同じ失敗をしないよう)修正をしたいと思います」と、冷静に自己分析していた。

 レギュラー入りを果たした1年時から、如才のなさで通っていた。外部の人間と接する際は、ただただ折り目が正しい印象だ。筑波大戦の直後に代表入りについて問われると、「まだ」と口元を緩めるのみだ。もっとも、「仮の話」として国際舞台を想起すれば…。

「いい準備はできている。もし選ばれれば、自分の全力を尽くしたいなと思います。自分にとってのいいもの(経験)を、かつ、結果を得られるように努力していきたいです」

 岩出雅之監督いわく、「2019年(ワールドカップ日本大会)はSOで」。守備網の隙間をえぐるランを長所に各年代代表でも主軸を張った。満を持してのジャパン入りへは、「与えられたポジションでベストパフォーマンスを出せるように。チャンスのあるところで、どんどんアピールしたいです」。高校時代の本職だったFBやCTBなどにも、意欲を示す。

「強気のランは、アピールポイントです。一方で、テストマッチという大きな舞台では、(全般的に)精度の高いプレーを要求されると思います。状況判断も、大事になる。そこについては、いままで自分が(課題として)考えてきた部分でもあります。先輩たちにアドバイスを聞きながら、レベルアップをしたいと思います」

 いくつかの問答を終えると、笑顔でウェイトジムへ消えて行った。(文:向 風見也)