他の選手がバスに乗って練習場を引き上げるなか、布巻峻介はたいていその場に残っている。グラウンド脇のジムへ直行する。身体を追い込む。

 東京・辰巳の森海浜公園ラグビー練習場では2月から3月にかけ、国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦するサンウルブズ、日本代表候補らによるNDS(ナショナル・デベロップメント・スコッド)のメンバーがトレーニングをしていた。

 布巻はサンウルブズの国内練習時は本隊に帯同し、一部メンバーが南アフリカへ遠征した3月中旬はNDSに参加。その間は、自主的に居残り練習をすることが多かった。

 日本代表として5キャップを有する布巻は、サンウルブズに初めて加入した昨季はスーパーラグビー4試合に出場も今季ここまで出番がない。

 実はチーム始動時、ナショナルチームの指揮官も兼ねるジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチと面談していた。運動量や力強さなどの課題を告げられたという。

「パワー、フィットネス、フィジカル。全体的なレベルアップは必要だと言われました。僕もそうだと思っています。数値じゃわからないですけど、自分でもバテているとわかりますしね。(試合の)最後らへんは。そこは(ジョセフも)プレーヤーだったので、感覚的にわかるんじゃないでしょうか」

 淡々としたこの言葉の延長線上に、休憩時間返上のジムワークを据えるのである。さらにその延長線上に、出場機会を見出そうとしている。

 身長178センチ、体重96キロの25歳。東福岡高時代は激しく器用なCTBとして活躍し、早稲田大3年時からFLへ転向。タックルやジャッカル(接点で相手の球を奪うプレー)といった、かねて得意だったいくつかのプレーにより磨きをかけた。アピールポイントを絞り込んだことで、国際舞台へ上り詰めた。

 サンウルブズでは、自分より大柄な外国人選手と定位置を争う。特に公式で身長189センチ、体重105キロというピーター“ラピース”・ラブスカフニは、布巻がターゲットとする背番号7を3度つけて好タックルを連発する。

 プレースタイルが近そうで代表資格取得後の日本代表入りも目指すラブスカフニに対し、布巻は「凄いと思いますよ。むしろ応援していますし、勉強にもなります」。他者との比較という観点を持ち込まず、ただただ自分の良さを磨こうとしている。

「ほんと、そうです。だから(長所を認められてサンウルブズなどに)選んでもらえていると思っているし、そこを崩してもね…と。自分の持ち味を、チームの戦術に沿わせつつ出していきたいです」

 具体的に請われそうな自身の「持ち味」を、「状況判断を含め、トータル的なもの」だと捉えている。全体を見渡して防御ラインを整えながら、自分がタックルを放つポイントを探る。攻撃時は前後の選手との距離感を把握しながら、その時の最善策を選択する…。CTB経験者ならではの目配りで、チーム戦術に深みを加えたい。

 4月はまず、NDSで活動する。1~7日は沖縄合宿へ参加し、10~28日はニュージーランドツアーに帯同する見込みだ。現地では「JAPAN A」としてスーパーラグビークラブの控え組と計3試合、おこなうようだ。

 さらにサンウルブズの主力格も、同時期に同じ場所へ遠征している。それだけに、NDS勢がサンウルブズへ追加招集される可能性もある。

 もちろん布巻も、来るべき時を待つ。(文:向 風見也)