なんとももったいないチームだなあと、ヴィッセル神戸の戦いぶりを見て思った。 J1リーグ第5節、金曜日の夜に柏レイソ…

 なんとももったいないチームだなあと、ヴィッセル神戸の戦いぶりを見て思った。

 J1リーグ第5節、金曜日の夜に柏レイソルと対戦した神戸は、健闘むなしく1−2と敗れている。



柏レイソルの守備に苦しめられたルーカス・ポドルスキ

 0−0で迎えた68分にFW伊東純也に独走を許して先制点を奪われるも、直後にFW田中順也がコーナーキックを頭で合わせて同点に追いつく。しかし、終了間際の86分にふたたび伊東にゴールを奪われて敗戦。昨季の上位チームに勝てる可能性は決して高くはなかったが、引き分けが妥当の結果と思われただけに、土壇場で浴びた被弾が勝負弱さを浮かび上がらせた。

 今季の神戸は、昨季途中から指揮を執る吉田孝行監督のもとで、より攻撃的なチームへの変化を求めている。昨季の吉田監督は前任のネルシーニョ監督の後を引き継ぎ、まずは守備組織の構築を図り、低迷していたチームをわずかに浮上させた。

 もっとも、守りは堅いがゴールは遠い。鳴り物入りで加入したFWルーカス・ポドルスキをはじめ、FWハーフナー・マイクや田中ら攻撃陣に多くのタレントを備えているにもかかわらず、彼らの能力を活かしきれないその戦いぶりに物足りなさが残ったのは確かだろう。

 そこで今季は、ポゼッションを意識した攻撃スタイルに転換。柏戦でもその狙いの一端は垣間見えていた。

 前半からボール支配で勝(まさ)ったのは、神戸のほうだった。柏もボールを大事にすることには定評があるものの、神戸のポゼッションは柏をはるかに上回っていた。

 その要因となったのは、1トップに入ったFW大槻周平の存在が大きい。この献身的なFWは絶え間なくプレスをかけ続け、柏のビルドアップを寸断。相手に長いボールを蹴らせて、守備陣の対応を楽にさせていた。

 大槻は昨季、湘南ベルマーレから加入も、わずかに1得点。得点を求めるのであればハーフナーのほうが適任だろうし、アビスパ福岡から加わったFWウェリントンでもいいはずだ。にもかかわらず、最前線に大槻を配置していることから、吉田監督の狙いがはっきりと見て取れた。

 そして後方でボールを奪えば、丁寧なビルドアップから相手の隙をうかがっていく。もっとも、ボール保持の時間は長かったものの、決定的なチャンスは生み出せない。ここに神戸の”もったいなさ”が浮かび上がる。

「もっと危険なところにパスを出すことをやっていかないといけない」

 そう振り返るのは、今季ベガルタ仙台から加入したMF三田啓貴だ。高い技術と走力が光る左利きのボランチは、現状の課題をこう指摘する。ボールは回せるが、バイタルエリアにはなかなか進入できない。いわば、ただ回しているだけの状態に過ぎなかったのだ。

 こうした現状を危惧し、ハーフタイムに吉田監督が「ただボールを回すだけではダメだ。常に前を意識しないといけない」と檄(げき)を飛ばしている。もっとも、危険な位置にパスを入れられないのには理由があっただろう。それは、本来そこにいるはずのポドルスキがいなかったからだ。

 前半のポドルスキはビルドアップに加わろうとする意識が強すぎて、低いポジションにいる時間が多かった。時に最終ラインの位置にまで降りてきて、”出し手”の役割を担っていた。もちろん、高い技術を備えるこのストライカーは出し手としても機能していたが、しかしその分、前線の人数が足りず、攻撃に厚みを生み出せない状況を作ってしまっていたのだ。

「彼がビルドアップに参加することで助かっている部分はあります」

 同じく出し手を務める三田はそう振り返る。ただ一方で、もどかしい心境も吐露した。

「(ポゼッションを)作ってから前に出るということはルーカスにやってほしいと監督も言っているので、そこはもっと要求していきたい。彼が下がるのであれば、自分がもっと前に絡んでいくことも意識していかないといけない。(大槻)周平君やマイク君を孤立させないのが大事かなと思います」

 後半に入ると、吉田監督の想いに応えるべく、くさびのパスの数は増え、前への圧力も強まった。ポドルスキも下がる機会は減り、前で受けようとする意識が高まっていた。こと攻撃に関しては、明らかに後半のほうが迫力を備えていた。

 一方でリスクを負えば、その分、危険性も高まり、当然、相手の攻撃を受ける機会も増加する。カウンターから独走を許した伊東のゴールは、神戸が前半の戦いを継続していれば、おそらく生まれなかったものだろう。

 慎重すぎた前半から打って変わり、後半は積極性を示した。結果的にその判断はマイナスに働いてしまったものの、それでも慎重さを保つだけであれば、昨季の神戸と変わらない。足が止まり、ミスも目立ったものの、気概を示した後半のパフォーマンスのほうが個人的には好感が持てた。

 前述のタレントに加え、MF郷家友太という若きタレントの台頭も促されるなか、神戸には他チームがうらやむような攻撃陣が揃っている。彼らを活かす攻撃スタイルを求めなければ、やはりもったいない。

 そのカギを握るのは、間違いなくポドルスキだろう。出し手ではなく、使われる側としてより高い位置に置いていたほうが、はるかに相手にとって脅威である。なぜ下がるのかと言えば、パスが出てこない状況に不満があるからだろう。

 であれば、ポドルスキが下がる必要のないようにポゼッションの質を高めればいい。このワールドクラスが高い位置にとどまり続ける状況が生まれたとき、神戸の攻撃スタイルはより輝きを増すはずだ。