フランス・パリで開催されている全仏オープン(5月22日〜6月5日)の12日目、まもなく行われる女子シングルス準々決勝。 ユリア・プティンセバ(カザフスタン)は、セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)戦に向けて準備する中で、自分の…

 フランス・パリで開催されている全仏オープン(5月22日〜6月5日)の12日目、まもなく行われる女子シングルス準々決勝。

 ユリア・プティンセバ(カザフスタン)は、セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)戦に向けて準備する中で、自分の勝算が低いことは知っている。

 「彼女は、伝説的偉人よ」とプティンセバは、世界1位のセレナについて言う。「言うまでもなく、私には失うものは何もない。ただコートに出ていってプレーするだけよ。それ以外に何ができるというの?」。

 21歳、世界ランク60位のプティンセバは、控えめに言っても、ダークホースだ。

 セレナは70のタイトルを獲り、一方のプティンセバはまだ優勝経験がない。セレナは、キャリアを通して7600万ドルの賞金を稼いだが、プティンセバは、もう少しで100万ドルといったところだ。

 セレナはいま、22番目のグランドスラム・タイトルを目指している。それは、シュテフィ・グラフ(ドイツ)と並ぶタイ記録で、オープン化以降の最高記録であり、これを超えれば、彼女はマーガレット・コート(オーストラリア)が持つ史上最多記録まであと2つと迫ることになる。

 一方、プティンセバにとってこの試合は、初めてのグランドスラムの準々決勝だ。彼女はこれ以前に、グランドスラムで一度も3回戦以上に勝ち進んだことはなかった。

 34歳のセレナは、これ以前の2対戦でプティンセバを破っている。今年のインディアンウェルズの2回戦と、2013年マドリッドの2回戦でのことだ。

 これらの試合は、同じパターンをたどっている。プティンセバは第1セットでセレナをタイブレークに追い込み、第2セットでは、1ゲームしか取れずに惨敗している。  しかしプティンセバは、セレナにいい印象を与えたらしい。セレナは、プティンセバに、自分に似たファイティング・スピリットを見ているようなのだ。

 「彼女はすべてのポイントで200%の力を振り絞っている、と感じるの」とセレナは言う。「私にも少しそういうところがあるわ。私もすべてのポイントで全力を尽くす。私はファイターなのよ」。

 もしかしたらそれはプティンセバが、セレナのコーチであるパトリック・ムラトグルーが経営する、パリにあるムラトグルー・アカデミーで、かつてトレーニングを積んでいたという事実に起因するのかもしれない。

 雨により、試合日程が大幅に乱れる中、ふたりは水曜日に4回戦を戦った翌日の木曜日に、準々決勝をプレーすることになった。

 もっともセレナは、それを通常のWTAツアーでプレーするときと同じで、それほど気にしてはいないという。 「そういうことには慣れるものなのよ」と彼女は言う。「まったく問題はないわ。私にとっても、ほかの誰にとっても」。

 しかし、あまりの雨に、月曜には一試合もプレーされず、火曜日にはたった2試合が消化されただけ――これはプティンセバにとって、ある不都合を生み出したようだ。

 「私は4回戦をプレーするのに、2、3日待っていたのよ」とプティンセバ。「それで、予約期間が終わっちゃったから、ホテルを変えなければならなかったの。でも、待つだけの価値があったことだから、うれしいわ」。

 テニスの長い歴史を振り返っても、グランドスラムシングルスで、準決勝に進出したカザフスタン人プレーヤーは、これまでひとりもいない。プティンセバが大きな番狂わせを演じれば、彼女は準決勝で、キキ・バーテンズ(オランダ)か、昨年の準決勝でセレナとフルセットの戦いを演じたスイスのハードヒッター、第8シードのティメア・バシンスキーのどちらかと当たることになる。

 プティンセバよりランキングが2つ高いだけで、やはりノーシードの24歳、バーテンズもまた、グランドスラムで初の準々決勝をプレーしようとしている。彼女は昨年のパリで、4回戦に進出していた。

 バシンスキーは、ふたりの間の唯一の対戦だった2年前の全米オープン1回戦で勝利を収めているが、その試合は、バーテンズが第2セットで棄権したことにより、終わりを迎えていた。 「彼女はコート上で気分が悪くなったのよ」とバシンスキー。「彼女は、クレーでは恐るべき相手よ。彼女がここまで勝ち上がってきたことは、私にとっては驚きではないわ」。(C)AP