NBAファイナル〜ライター宮地陽子さんの現地コラム

ライター：宮地陽子

明日、現地時間６月２日から始まる今年のＮＢＡファイナルは、去年と同じ、ゴールデンステイト・ウォリアーズとクリーブランド・キャバリアーズの対戦となった。ウォリアーズにホームコート・アドバンテージがあるのも同じ。ＭＶＰを取ったステフィン・カリーと、ＭＶＰを取り逃したレブロン・ジェームズという両チームのトップスターの構図も同じ。

キャブズのほうは、故障していた選手が復活したり、メンバーが多少入れ替わったり、ヘッドコーチが変わったりと中身は変化しているが、ウォリアーズのほうは、「うちの場合はメンツ的にはほとんど同じ」（スティーブ・カー・ヘッドコーチ）だ。

ただし、忘れてはいけないのは、「ほとんど」の例外の中に、両チームにとって大きな存在の選手がいることだ。去年のファイナルではキャブズの一員で、今年はウォリアーズのユニフォームを着ているアンダーソン・バレジャオだ。NBAに入って以来、キャブズ一筋11年半だったバレジャオだが、今年２月、突然トレードで放出されてしまった。キャブズとしては優勝を狙うための戦力補強のために、ビッグマン・シューターのチャニング・フライと契約する話が進んでおり、ロスター枠をあけるための苦渋の決断だった。

「クリーブランドに12年いた後トレードになったのは、すごくきつかった。予想もしていなかったことが起きてしまった」とバレジャオは、トレードされた時のことを振り返る。

トレード先のポートランド・トレイルブレイザーズを解雇されたバレジャオに、すぐに契約オファーしたのが、昨季のファイナルの対戦相手のウォリアーズだった。

「ウォリアーズのユニフォームを着ることになるなんて思ってもいなかった。でも、それ以前にトレードされることになるとも思っていなかった。もっとも、この世界ではよくあること。そのことは理解している」とバレジャオ。

トレード自体は確かによくあることだが、ファイナルに出た選手が、そのシーズン中に所属していたチームと対戦するケースは珍しい。何しろ、NBA史上でも初めてのことだという。

バレジャオの移籍は、戦力面では、勝敗を分けるほどの差にはならないかもしれない。去年のファイナルでは、まだ前年のアキレス腱故障からのリハビリ中で出場どころか、登録選手に入ることもなかった。今年、ウォリアーズではユニフォームを着てのベンチ入りしているが、出番は多くはない。カンファレンス・ファイナルでは７試合の合計で22分の出場時間に終わっている。

かつてのチームメイトだったキャブズの選手たちにとっても、バレジャオがファイナルまで出てこられたことを嬉しいことだ。

ジェームズは言う。
「いいヤツにはいいことが起こると思っている。どっちにしても（トレードがあってもなくても）、彼にとってファイナルに出ていたわけだ。彼はこれまで多くのことを成し遂げてきた。自分を犠牲にしてきたこともたくさんある。彼が今、この場にいられるということは、彼にとっても、彼の家族にとってもすばらしいことだ」

しかし、ここからの戦いは敵同士。同情している余地はない。キャブズが優勝した場合でも、11年半チームに所属し、重要な一員だったバレジャオには優勝指輪が贈られるのではないかと推測する声もある。しかしバレジャオは今、そんなことは考えてもいないという。

「今、僕はウォリアーズの一員だ。ウォリアーズが優勝する手助けをすることに集中している」

明日開幕！NBAバスケットボール頂上決戦“NBAファイナル”

WOWOWではNBAファイナル全試合生中継！

■6/3（金）午前9:40〜現地会場より生中継／WOWOWプライム

「NBAファイナル第1戦 キャバリアーズｖｓウォリアーズ」

[現地]ゲスト：Bose(スチャダラパー)、解説:佐々木クリス

[東京]ゲスト：大神雄子(元日本代表) ほか