卓球ライター若槻軸足がお届けする「頭で勝つ!卓球戦術」。今回は、「大舞台での緊張を和らげる方法」について考えてみたい。卓球は競技だ。競技として行っている以上、試合がある。そして試合には当然勝ち負けもある。普段よりも大きい規模の試合、あるいは…

卓球ライター若槻軸足がお届けする「頭で勝つ!卓球戦術」。今回は、「大舞台での緊張を和らげる方法」について考えてみたい。

卓球は競技だ。競技として行っている以上、試合がある。そして試合には当然勝ち負けもある。普段よりも大きい規模の試合、あるいはその予選などでは、いつもとは違った緊張を感じることだろう。

体が硬くなる程度ならよくある。しかし、緊張で頭が真っ白になってしまい、普段の力の半分も出せなかった、なんてことは避けたい。

緊張するのは当たり前のことだ。緊張は悪者ではない。人間、適度な緊張がある方がパフォーマンスを発揮しやすいという研究もある。しかし、普段の実力のせめて80%くらいは発揮して試合がしたいものである。

そこで今回は、大舞台でもなるべく普段の力を出せるよう、緊張を和らげる方法を、精神面と技術面の、二つの観点から考えてみよう。

メンタル面から緊張を和らげる

 

まずは「自分が緊張している」ということを認める

緊張で頭が真っ白になり、あっという間に試合が終わってしまっていた。これはどうしても防がなければならない。

まず最初に行うべきことは、自分で緊張していることを認識することだ。

「緊張しているわたし」を俯瞰でとらえる。いわば、幽体離脱したような感じで、自分自身を頭上から眺めるようなイメージだ。そして、「おおー、緊張してるみたいだね。そりゃ無理もないさー、こんな大舞台だもの。」というように、自分の外に意識を置いて自分自身を眺めてみよう。不思議と心が落ち着いてくるはずだ。これは、わたしが敬愛する僧侶の小池龍之介氏が提唱している、心を落ち着かせる方法だ。

これは緊張以外の精神状態に対しても有効である。例えばプレーがうまくいかずにイライラしているとき。そんなときも、ふうっと力を抜いて、自分で幽体離脱をして、頭の上から自分自身を見つめるのだ。そして、「おー、怒っているようだねぇ」と考えるのである。そうすると、なぜか気持ちが落ち着いてくるのだ。これはぜひ試して頂きたい。

誰も自分の試合なんて見ちゃいないと思い込む

自分が今まさに緊張している、と気付けた。それだけでとても素晴らしいことだ。そのあとにあなたがすべきことは、観覧席にいる人達の顏をひとりずつじっくり見ていくことだ。

緊張する要因として、いつもと違う会場の雰囲気が挙げられる。そしてその雰囲気を作っているのは、主に人だ。いつもより大きな舞台なら、いつもよりたくさんの人数が会場にいることだろう。その大勢がコートでプレーをしている自分を観ている、と考えれば、緊張するのは当たり前だ。

しかし、観客達をよく観察してみよう。みなスマホに目を落としていたり、他の試合を観ていたりと、ばらばらだ。つまり、誰もあなたの試合なんて見ていないのである。練習会場に訪れたただの見物人とでも思えばよい。

逆に「観客全員が自分のことを応援している」と思い込む方法もあるが、それはそれで逆に緊張してしまう人もいるかと思う。なのでここはあえて、全員自分の試合には一切の関心がない、という風に考えてしまおう。

大舞台なら、相手も自分と同じように緊張しているはず

年に一回、参加できるかどうかの大舞台。であれば、対峙している相手もあなたと同様、ガチガチに緊張している可能性が高い。そう、硬くなっているのは相手も同じなのだ。

むしろ、相手の方が緊張していると思って間違いない。「自分も緊張しているけど、相手はそれ以上に緊張している」。そのように考えられれば、だいぶ心持ちも楽になるであろう。

技術面から緊張を和らげる

自分が一番得意なことをする

さて、心の中で精神的に落ち着くことに成功したら、今度はコート上でも落ち着かせよう。緊張しているときは、思うように体が動かず、いつもなら確実に入るボールもミスばかりしてしまう。

落ち着かせる為の方法として最も良いのは、普段から自分が一番得意な技術をする、ということだ。例えば、あなたが下回転サーブを出して、回り込んで3球目ドライブをする、のが一番得意なら、まずはそれを行うことだけを考えよう。

卓球は対人競技である。試合中は、自分が得意なプレーをしての得点と、相手の苦手を突いての得点との2種類がある。ここでは、相手の苦手は考えずに、とにかく自分が得意なプレーをすることに徹しよう。そうすれば、徐々に自分のペースがつかめてくるはずだ。

もう開き直ってコースを決め込んでブロック

そうは言っても、もちろん相手も攻め込んでくる。自分の得意なことをやらせてもらえるとは限らない。そんなときは、もう最初から「打たせて、ブロック」というように頭を切り替えてしまおう。

「打たれるかもしれない」という心理よりも、「どうぞ打ってくださいよ」という気持ちの方が余裕を持てるのは言うまでもない。

また、緊張してリラックスできていないと、体の筋肉の動きもどうしても堅くなる。そんなときでもブロックなら、筋肉を最小限しか使わずに、最も簡単に得点できる。

しかし、緊張した場面でコート全体をカバーするのは難しい。であれば、もう思い切ってコート半面だけしかないと考えてしまおう。逆を突かれたって気にしなくてもよい。

どうぞ打ってこいという気持ちで片面にヤマを張り、そちらに来たら確実にブロックを決める。これが1,2本できれば、徐々に心理的にも楽になるし、相手も少し険しくなってくるだろう。

サーブレシーブで終わらせず、なるべくラリーに持っていく

緊張しているときに一番難しいのは、サーブレシーブの台上プレーだ。卓球は手や指先のほんの小さなタッチで、得点にもミスにもなる、非常に繊細な競技だ。その繊細さが最も出るのは台上でのプレーである。緊張で手元が震え、手元が狂ってしまうのもうなづける。

であれば、できるだけ台の外での大きなプレーをすることを心掛けよう。ショートサーブよりもロングサーブ。ストップよりもツッツキ。というように大きなプレーに持っていけば、緊張の影響は受けにくい。

さらには、できるだけ長くラリーをすることも大切だ。序盤は特にボールに慣れる意味も込めて、一発で決めるよりもラリー戦に持ち込むことを心掛けたい。打ち抜くドライブではなく、少し回転を多めにしたループドライブを打つ。で、ラリーをしてなるべくたくさんのボールを打つ。その方が、体も心もほぐれて、いつも通りのプレーを取り戻しやすくなるはずである。

まとめ

今回の話をまとめると、

・緊張している自分を俯瞰で認識する
・自分の得意なプレーをすることを考え、できるだけ長くラリーをする

ということになる。

普段のあなたの努力は、こういった大きな舞台で活躍するために積み上げられてきたものである。その大きな舞台で、実力を満足に発揮できない。これほど悲しいことはない。それを防ぐには、普段の練習にプラスして、大舞台に挑むときの準備をしっかりしなければならない。

今回の記事が、その一助となれば幸いである。

文:若槻軸足(卓球ライター)