WEEKLY TOUR REPORT米ツアー・トピックス PGAツアーは今、”復活”がトレンドかもしれない。 WGC メキシコ選手権で47歳のフィル・ミケルソン(アメリカ)が4年7カ月ぶりに勝利を飾ると、続くバル…

WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 PGAツアーは今、”復活”がトレンドかもしれない。

 WGC メキシコ選手権で47歳のフィル・ミケルソン(アメリカ)が4年7カ月ぶりに勝利を飾ると、続くバルスパー選手権ではポール・ケーシー(アメリカ)が、タイガー・ウッズ(アメリカ)とパトリック・リード(アメリカ)を1打差で退けて、2009年以来、実に9年ぶりの優勝となるツアー2勝目を挙げた。

 そして、先のアーノルド・パーマー招待(3月15日~18日/フロリダ州)では、最終日に「64」と爆発したロリー・マキロイ(北アイルランド)が逆転優勝。元世界ランキング1位が、2016年9月のツアー選手権以来、およそ1年半ぶりの美酒に酔いしれた。



アーノルド・パーマー招待でおよそ1年半ぶりの勝利を飾ったロリー・マキロイ

 マキロイは試合後、在りし日のパーマー氏を偲(しの)んでこう語った。

「僕が最後に勝った日は、アーノルド(・パーマー)が他界した、その日だった。そして、次の勝利がこのパーマー招待なんて、少し(運命の)悪戯(いたずら)めいたものを感じてしまうけど……。できれば(最終日の)18番グリーンでアーノルドが待っていてくれたら、どんなによかっただろう。

(パーマーとは)2年前、この大会で一緒にランチをして、たくさんの話をした。この大会に出てよかった。きっと、アーノルドもこの勝利を喜んでくれているに違いない」

 さて、今回のマキロイの”復活V”において、際立っていたのは、ドライバーショットとパッティングだ。

 昨年は肋骨の疲労骨折など、ケガもあって未勝利に終わったマキロイ。その間は「スランプ」と囁かれることもあったが、今年は欧州ツアーのアブダビHSBC選手権で3位、オメガ・ドバイデザートクラシックで2位に入るなど、本人曰く「復調までもう少しだ」という結果と手応えを示していた。

 ただ、PGAツアーでは、目立った結果を残せずにいた。今季初戦となったAT&Tペブルビーチプロアマでは、2日目に5パットを含む39パットを叩くなどグリーン上で大苦戦して予選落ち。前週のバルスパー選手権でも決勝ラウンドに進むことができなかった。

 そこで、バルスパー選手権で予選落ちしたその週末、フロリダ州ジュピターの自宅に戻ったマキロイは、ふたりのコーチと会っている。

 ひとりは、彼の長年のスイングコーチであるマイケル・バノン。同氏とは数週間会っていなかったそうだが、彼の指導のもと、マキロイはスイングの修正に時間をかけて取り組んだ。

 その結果、アーノルド・パーマー招待では見事にドライバーが復活。平均飛距離が316.7ヤード(1位)を記録するなど、マキロイらしさが戻って、それがスコアにもつながった。

 もうひとりは、ツアーのベテランプレーヤーで”パットの名手”として知られるブラッド・ファクソン(アメリカ)だった。

 月曜日、自宅近くのベアクラブで、マキロイはファクソンからレッスンを受けた。当初1時間の予定だったそうだが、レッスンは3時間に及んだ。というのも、レッスンがふたりのパット勝負になったからだ。

 強風が吹く中、ふたりの戦いは途中までファクソンがリード。ファクソンは、「もし今週、キミが勝ったら、そのキミに僕が勝ったことをみんなに伝えろよ」と言って笑ったそうだが、結局、終盤にマキロイが追い上げて、ふたりのパット勝負はマキロイが勝利した。

 その際、マキロイは「僕がベイヒルで勝ったら、『ブラッド・ファクソンにも勝った』と言うよ」とファクソンに宣言したという。すると、それが現実のものとなった。

 マキロイがファクソンから学んだことは、パットの技術だけではなかった。何より大きかったのは、”フィーリング”の伝授である。

「子どもの頃のように、グリーンを感じて打つことができた。たぶん、こんなパッティングができたのは、2014年以来だと思う」

 その2014年、マキロイはツアー4勝。全英オープン、全米プロ選手権と、メジャー大会も2勝している。

 アーノルド・パーマー招待の最終日、最終18番グリーンに立ったマキロイは、最後に7mのバーディーパットを沈めると、両手を大きく掲げて力強いガッツポーズを見せた。1打差に迫っていたブライソン・デシャンボー(アメリカ)を振り切っての、会心の勝利だった。

 マキロイが勝利を挙げた直後、ファクソンのもとにはパッティングのレッスン依頼が複数舞い込んできたそうだ。その中には、かつてのメジャーチャンピオンの名前がふたりあるというから、今後も新たに”復活”を果たす選手が現れるかもしれない。

 勝利にはまだ手が届いていないが、2週連続で優勝争いに加わったウッズも”復活”で注目されるひとり。期待の「役者」が次々に名乗りを上げて、今季メジャー初戦のマスターズ(4月5日~8日/ジョージア州)がいよいよ面白くなってきた。

 ちなみに、マキロイはマスターズで優勝すれば、4大メジャーのすべてを制覇。”生涯グランドスラム”を達成することになる。