スーパーラグビーで過去2回の優勝を誇り、昨季まで6年連続でプレーオフに出場しているニュージーランドの強豪、チーフスに挑んだサンウルブズだが、ホームの東京・秩父宮ラグビー場で完敗を喫した。3月24日におこなわれた第6節で対戦し、相手に9トラ…

 スーパーラグビーで過去2回の優勝を誇り、昨季まで6年連続でプレーオフに出場しているニュージーランドの強豪、チーフスに挑んだサンウルブズだが、ホームの東京・秩父宮ラグビー場で完敗を喫した。3月24日におこなわれた第6節で対戦し、相手に9トライを奪われ10-61。失点は今季ワーストを更新した。サンウルブズはこれで、開幕から5連敗。

 前半4分、今季初出場となったSO田村優が自陣からキックしたボールが味方選手に当たり、それをチーフスが確保し、たたみかけてLOタイラー・アードロンが最初のトライを挙げた。

 12分には、サンウルブズが自陣深くのスクラムで押し込まれて反則をとられ、チーフスが速攻、オールブラックス(ニュージーランド代表)LOでもあるブロディー・レタリックがインゴールにねじ込んだ。

 17分にも敵陣深くに入ったチーフスは、ショートスローのラインアウトからサインプレーが決まって連続トライ。

 速い出足でプレッシャーをかけようとするサンウルブズだが、チーフスはさらに19分、オールブラックスのエキサイティングなラインブレイカーであるSOダミアン・マッケンジーが自陣22メートルラインから突破してチャンスメイクし、次々とつなぎ、WTBソロモン・アライマロがフィニッシャーとなった。

 自陣で劣勢が続いていたサンウルブズは23分にようやく敵陣深くに入り、アドバンテージをもらっての連続攻撃からWTBホセア・サウマキがインゴールに押さえたかに思われたが、TMO(テレビジョンマッチオフィシャル)でノックオンが確認され、トライは認められなかった。
 サンウルブズはその後、相手に反則があったためマイボールで再び攻め、ラインアウトからモールで押し込むもトライライン付近のブレイクダウンでターンオーバーされ、好機を逃した。

 前半、4回のラインアウト失敗(被スチール3回)もあって波に乗れなかったサンウルブズだが、35分、昨年まで3季在籍していた古巣との対戦を楽しみにしていたFLリーチ マイケルが右外で好走してWTBセミシ・マシレワにつなぎ、ようやくこの試合初得点。サンウルブズのトレーニングスコッドメンバーだったマシレワだが、負傷の松島幸太朗に替わって急きょ14番を任され、デビュー戦初トライとなった。

 5-28で折り返したサンウルブズは後半早々、チームトップのトライゲッターであるWTBサウマキが自陣10メートルラインから突破し、タックラーを振り切ってゴールに持ち込み秩父宮を沸かせた。

 しかし攻撃力が高いチーフスは45分(後半5分)、正確で、スピードあるパスの連続からSOマッケンジーがトライを決め、流れを引き戻す。さらに52分、サンウルブズが落球したあと、チーフスは自陣深くからカウンターアタックを仕掛け、新戦力のカナダ代表選手で本来はバックローワーであるアードロンが力強い走りでビッグゲインし、仲間につないでWTBアライマロがフィニッシャーとなった。65分にはブレイクダウンでのターンオーバー後、キック&チェイスでトライ。終盤にも2トライを加え、元スーパーラグビー王者の底力を見せつけた。

 前節で強豪のライオンズに善戦したサンウルブズの映像をチェックし、対策を立てていたというチーフスのコリン・クーパー ヘッドコーチは、「(サンウルブズには)WTBに大型で決定力のある選手がいると思っていたので、そこをシャットアウトするのを念頭においていた。ラインアウトでもプレッシャーをかけようと思っていた。その結果として、我々はやってきたこと、持っているものをうまく出せた」と快勝を喜んだ。

 また、オールブラックスの7番でもあるチーフス主将のサム・ケインは、「ここ数年の日本ラグビーを見ているが、速さが鍵。そこを自由にさせるといけないと思っていた。そのためにも、ブレイクダウンで自分たちのペースに持っていくのが大切だった」と勝因を語った。

 サンウルブズはツアー帰りだったため、国内で調整していた新しい選手も入れ、リフレッシュしてこの試合に臨んでいた。「スーパーラグビーでは継続して戦っていけば強度にも慣れるが、いろいろなことを考えながらメンバーを決めている」というジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ。試合後は、怪我人のチェックをすぐにしたという。「来週、バイウイーク(試合がない)なので、解散の前に把握したかった。コーチとして、試合のすぐあとには話さない。感情が入ってしまうからだ。ただ、選手がガッカリしているのは明らかだ。序盤にトライをとられて自信を喪失した。士気が下がってしまった。それが顕著に表れた」と話す。

 ヴィリー・ブリッツ主将は、「メンバー変更があったからうまくいかなかったとは思わない。新しいメンバーの試合に臨む姿勢は素晴らしかった。しかし、追っかける立場になると苦しくなる。その状況で強引に攻めようとするとミスが起きる」と敗戦を振り返る。

 61失点したことについて指揮官は、「チーフスはカウンターアタックがずば抜けていた。その相手にスキを与えると今日のように失点につながる。ミスタックルが多かった」とコメント。そして、「(相手SOダミアン)マッケンジーひとりではなく、チーム全体にゲインラインの前で止めることを心掛けてやっているが、前に出ている分、ひとりのタックルミスなどから崩された。しかし、前に出ないと食い込まれるだけなので、このディフェンスをやっていく」と、ラッシュディフェンスの修正とさらなる向上を追求する考えだ。

「すぐに立て直さないといけない。今日は、自分たちのポテンシャルを発揮できなかった。ライオンズ戦(3月17日/●38-40)、ブランビーズ戦(2月24日/●25-32)は勝ってもおかしくない試合だった。選手たちは、自分たちの信念を失うようなことはないと思う。ただ、スーパーラグビーでは試合を重ねていくと、上位と下位に二極化してしまうときがある。いま、自分たちはその後者にいる状態だ」

 サンウルブズは次週は休みとなり、今季初勝利を目指して4月7日に秩父宮ラグビー場で、同じオーストラリア・カンファレンスのワラターズに挑む。