平野歩夢、片山來夢(らいぶ)のワンツーフィニッシュ、松本遥奈の3位表彰台など、3月5日から10日(現地時間)にかけて行なわれたスノーボード・バートンUSオープンでの日本人ライダーたちの活躍についてはすでに詳細をお伝え済みだが、同大会では女…

 平野歩夢、片山來夢(らいぶ)のワンツーフィニッシュ、松本遥奈の3位表彰台など、3月5日から10日(現地時間)にかけて行なわれたスノーボード・バートンUSオープンでの日本人ライダーたちの活躍についてはすでに詳細をお伝え済みだが、同大会では女子スロープスタイルにおいても日本スノーボード界期待のニュージェネレーションが世界を驚かせた。



大会終了直後の村瀬心椛。表情にはまだまだあどけなさが残る

 彼女の名は村瀬心椛(ここも)。2004年11月生まれ、岐阜出身の13歳である。USオープンはもちろん初参戦。ウェイティングから大会前日に出場が決まった新星は、鬼塚雅、藤森由香、岩渕麗楽(れいら)ら”平昌組”が予選で姿を消すなか4位に食い込み、日本人で唯一決勝に進出してみせた。

 今回のUSオープン女子スロープスタイルには、平昌五輪スロープスタイル金メダリストのジェイミー・アンダーソン(アメリカ)、同じくビッグエア金メダリストのアンナ・ガッサー(オーストリア)をはじめ錚々(そうそう)たる面々がエントリー。そんな大舞台に臆することなく、予選2本目のランで75.3の高得点を記録。流れるような身のこなしが目を引いたジブセクションから、キャブアンダーフリップ540・フロントサイド720・バックサイド900と繋ぐ見事なルーティンだった。

「USオープンは目標にしていた大会なので、出られたこと自体が本当にうれしかったです。でも音楽を聴きながら滑っていたおかげで緊張はしなかったですね。ジェイミーやアンナはやっぱり強いです。”自分に勝つ”というオーラが出ていて、そういうところを私も見習いたいなと思いました」

 残念ながら決勝は強風のため中止。4位という予選順位が、村瀬にとっての初めてのメジャー大会のリザルトとなった。しかし、ジブセクションできれいにメイクした高難度のトリックが今大会のベストトリック賞を受賞し、表彰式でも大喝采を浴びるなど確かな存在感を示した。

 実は彼女、今大会では披露しなかったが、「バックサイドダブルコーク1260」という大技を女子では世界で初めて成功させている。その持ち前の高いジャンプスキルに加え、今大会では日本人ライダーが総じて苦手とされているジブセクションでもセンスを見せつけた。

「最初はハーフパイプの練習をしていたのですが、ある時『あそこにある”鉄みたいなの”をやってみたいな』って思って、レールに挑戦してみたらすごく楽しくて。そこからどんどん練習を積んでいくうちに、スロープスタイルでやっていきたいと思うようになりました。ジャンプの方が得意ではありましたけれど、去年から羽島(岐阜県)の施設でジブをたくさん練習できるようになったこともあって集中的に強化してきました」

 4歳でスノーボードを始め、たった9年で世界のトップカテゴリーへと躍り出た。「勝つための自分なりの考えを常にノートに書いて、常に読み返しています」という13歳。その視線の先には、世界一のスノーボーダーになるという明確なビジョンを描いている。

「今の一番の目標は北京五輪で金メダルを取ること。そしてUSオープンやXゲームズでも常にいい成績を残して、私の名前を世界中に広めたいです」



悔しさを胸に、笑顔で来季の飛躍を誓う岩渕麗楽

 そんな村瀬と明暗を分けたのが岩渕麗楽である。平昌五輪ではビッグエア種目で4位に入賞。メダルまであと一歩のところまで迫る活躍を見せたが、村瀬同様に初出場となったUSオープンは予選10位でのフィニッシュとなった。

「正直なところ、五輪が終わって自分の中でドーンと疲れがきちゃったところもあって、集中しきれていなかった部分はあります。でも、どんなにハードなスケジュールやコンディションでも結果を出していくのが本当に強い選手。悔しいですけれど、まだまだ自分にはそのあたりの地力が足りなかったです。いい勉強になりました」

 USオープンでは悔しい結果となったが、平昌五輪の4位、その前のXゲームズ銀メダルと、16歳のシンデレラガールが見せた今季のめざましい活躍は決して褪(あ)せることはない。むしろこのUSオープンで課題が見えたことで、今後の彼女のさらなる飛躍への大きな布石になるだろう。本人も力を込めてこう語る。

「今シーズンは自分でもびっくりするくらいトントン拍子でした。でも、それに浮かれたり、平昌やUSオープンの悔しさを引きずっている場合ではないですね。次に向けて新しいことをどんどん身につけていかないと。4年後の北京はもちろん、USオープンやXゲームズは毎年ありますから。満足することなく、自分で限界を決めずにチャレンジしていきたいです」

 さて、このUSオープンをもって今季のスノーボードシーズンは、ほぼ終了したと言えるが、村瀬と岩渕の2人に関しては5月に開催されるXゲームズ・ノルウェーにも前出のジェイミー・アンダーソンやアンナ・ガッサーらとともに正式に召集されている。村瀬はこのUSオープンでの飛躍が、岩渕は今季全般を通してのパフォーマンスがそれぞれ認められた格好だ。

 13歳の村瀬心椛と16歳の岩渕麗楽。間違いなく、北京五輪へ向けたこれからの4年というのは彼女たちがサイクルの中心になってくるはずだし、このまま順調に成長曲線を描くことができれば金メダルも夢ではない。今後の女子スノーボード界を引っ張っていくであろう、才能と情熱にあふれた10代2人の今後から目が離せない。

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