ヘンドリック・ルダン(ユナイテッドヘルスケア監督)インタビュー 初代ジャパンカップ覇者が思うサイクリングのグローバリゼーション1992年、世界選手権の熱気も冷めやらぬ中に初開催されたジャパンカップ。その初代チャンピオンに輝いたのが名うてのベ…

ヘンドリック・ルダン(ユナイテッドヘルスケア監督)インタビュー 初代ジャパンカップ覇者が思うサイクリングのグローバリゼーション

1992年、世界選手権の熱気も冷めやらぬ中に初開催されたジャパンカップ。その初代チャンピオンに輝いたのが名うてのベルギー人ワンデイスペシャリスト、ヘンドリック・ルダン。ヘットフォルクやパリ〜ツールを制した名選手は現在、アメリカを拠点にユナイテッドヘルスケアの監督を務める。世界各国を転戦するルダン監督に、ツアー・オブ・ジャパンで訪れた久々の日本、そしてプロサイクリングのグローバリズムについて堺ステージ前にショートインタビュー。(聞き手/小俣雄風太)

ーーー今回の来日はジャパンカップ以来初めてですか?

そう、1992年のジャパンカップで優勝してからは来てなかったね。あれ以来初めてだよ。

ーーー今日、日本のレースに再びやってきたわけですがどう感じられましたか?

ワオ!大勢の人たちがここに集まっているよね。ロードレースがどんどんポピュラーになっていると感じるし、それは素晴らしいことだよ。1992年よりも人は増えていて、レースのオーガナイズも良好で、素晴らしい。日本にはもちろんケイリンの文化がありそれは重要なものだけど、ロードレースのレベルは今日ほどは高くはなかった。けれども今や、強いアジアの選手が登場している。日本だけでなく、中国やマレーシアからもね。これだけ多くの人がいるということは、よい才能を見つけやすくなったのは確かだ。次の10年でより多くの才能に出会えるのは間違いないはずさ。

こうした好オーガナイズのレースがある意義は計り知れない。ローカルのレーサーたちにとって、世界のトップ選手と走る機会となるし、彼らのレベルを引き上げることになる。

ーーー今日のサイクリングのグローバリズムについてはどうお考えですか?

グローバリズムは歓迎する。このスポーツはまだまだ大きくなるべきだから。ヨーロッパでは、特にベルギーでは自転車競技はナンバー1のスポーツだ。出来る限り大勢の人に見てもらうことが重要になる。もちろん世界150カ国で放映されているツール・ド・フランスがある一方で、自転車に関心の薄い国もある。

グローバリゼーションは好きだけど、一方で旅をするのはそんなに好きじゃないね。他の国に行けば時差ボケがついてくるし、移動に時間がかかる。私はこの2ヶ月でも国から国へ旅をして周っていて、ロサンゼルスに帰ったかと思えば次はストックホルム行き、てな具合だ。簡単じゃないよ。でもチームやレース主催者、UCIがスケジュールを調整することでグローバリゼーションの利点も生まれると思う。例えば、今年のアジアのレースカレンダーを見てみれば、マレーシアと台湾が、日本と韓国がレースを同じ時期に開催している。チームとしては同じ選手を送り込むことはできない。結果として新しいライダーを連れてこないといけないし、また時差ボケに見舞われるってわけさ。スケジュールの調整が重要だね。繰り返しになるけど、世界規模ではサイクリングはまだまだ次の10年で大きくなる。そのためのステップはこういうところにもあるんだ。

ーーーユナイテッドヘルスケアチームのこのツアー・オブ・ジャパンの目標について教えて下さい。

我々のチームはあらゆる脚質の選手で構成されている。残念なことにヤニ・ブライコヴィッチは来ることができなかった。スケジュールは問題なかったが、(ツアー・オブ・)カリフォルニアの最終日でひいた風邪が良くならなかった。とはいえいい布陣だよ、スプリンターにカルロス・アルサテとルーク・キオー。富士山ステージとその後を戦えるクライマーにはジョン・クラークとアレクサンデル・ハラミリョがいる。バランスのよいこのチームでステージ優勝を狙っていくけど、もちろん他のチームやアジア人選手、日本人選手も強い。ベストを尽くすよ。

ーーーどのステージを重要視していますか?

どのチームも富士山ステージを考えざるを得ないね。短いけれどすごく、すごくハードなステージだ。チームとしては総合リーダージャージをかけたチャレンジになる。とはいえ、すべてのステージが重要だよ。総合を危うくする大逃げを許さないこと、イラン勢に警戒すること。チャレンジにはなるけど、戦う準備はできているよ。

ーーーイラン人選手のことは知っていますか?

もちろんだ。ポルセイェディラゴールやソフラビ……ソフラビに関してはベルギーのロットチームで走っていたこともあったからね。この数年もツール・ド・ランカウィでイラン勢の強さは思い知らされている。強いチームなのは確かだし、時差ボケも我々ほどにはひどくないだろう。倒すべき選手達のうちの数名なのは確かだよ。私たちは戦略的なレースをしなくてはならないだろうね。