来年、2019年の世界選手権は日本開催(埼玉)となる。そこへ向けて、日本フィギュアスケートが男女とも出場枠「3」を確保するために必要なのが、3月21日からミラノで始まる今季の世界選手権で「上位2名の順位合計が13以内」を実現することだ…

 来年、2019年の世界選手権は日本開催(埼玉)となる。そこへ向けて、日本フィギュアスケートが男女とも出場枠「3」を確保するために必要なのが、3月21日からミラノで始まる今季の世界選手権で「上位2名の順位合計が13以内」を実現することだ。



平昌五輪で銀メダルの宇野に期待がかかるが...

 その達成は、平昌五輪が終わった時点では、男女ともに3枠確実と見られていた。とくに羽生結弦が優勝して宇野昌磨が2位になった男子は、羽生優勝で宇野が3位になった17年世界選手権と同様、ふたりが上位に入ると思われていた。

 だが、羽生のケガによる欠場でその行方はわからなくなってきた。平昌では男子3人目の田中刑事が18位という結果だったからだ。

 今回の日本は、宇野と田中に加えて友野一希が出場する。宇野については、ネイサン・チェン(アメリカ)と優勝争いをして、そこにボーヤン・ジン(中国)がどう絡んでくるかという状況だ。仮に宇野が1位か2位になれば、田中が12位か11位になればいいという計算になる。

 こうなると、ポイントは田中の順位だ。平昌の順位を参考にすると、羽生のほかに3位のハビエル・フェルナンデス(スペイン)と9位のパトリック・チャン(カナダ)も世界選手権に出場していないため、単純に繰り上げれば15位ということなるが、それでも合計13位以内には届かず、獲得枠は「2」となってしまう。

 田中は平昌ではショートプログラム(SP)を80.05点で20位と出遅れ、合計は244.83点。ただ仮に、彼が今年1月の四大陸選手権で出している自己ベストの260・31点を平昌で出していれば10位になっていた。また、羽生ら有力選手が欠場した今大会、自己ベストで田中よりも高い得点を出しているのは宇野の319.84点を筆頭に、五輪には出ていなかったマックス・アローン(アメリカ)の261.56点までの7人となる。

 つまり、田中がその力をきっちり発揮すれば、8位には入れる計算になる。そのためには、SPで自己最高の90・68点前後の得点を確実に出す必要があるだろう。

 男子3人目の友野は、18日までのプランタン杯からの連戦ながら、練習での動きは軽く、キレはある。しかし、これまでの自己最高が231.93点ということを考えると、10位前後は難しいだろう。やはり枠を3つとれるかどうかは、田中の出来にかかってくる。

 20日夜のメインリンクでの公式練習では、宇野のライバルとなるチェンの調子はいまひとつ。だが、次のグループで登場した宇野も5分ほど軽く滑っただけでリンクを上がり、右足首にアイシングをしてスタッフに背負われてホテルに帰る状態だった。宇野本人は笑顔を見せて「大丈夫です」と口にしてはいたが、どうなるかわからない状況で、3枠の黄信号が赤信号になる可能性も出てきた。

 一方、宮原知子と樋口新葉が出場する女子は、3枠復活の可能性が高くなっている。



表彰台を狙う宮原知子

 その理由のひとつに、平昌五輪の結果がある。230点台のハイレベルな戦いをしたロシアのアリーナ・ザギトワとエフゲニア・メドベデワ、ケイトリン・オズモンド(カナダ)に敗れたとはいえ、宮原はSP、フリーともに自己最高得点を出す222・38点で4位。そして坂本花織も209.71点で6位になっているうえ、7位のチェ・ダビン(韓国)には10点以上の差をつける結果だった。得点的には、そこで大差がついている状況であり、世界選手権でもその構図が大きく変わることはないはずだ。

 今回の世界選手権に、女子は平昌五輪出場の坂本ではなく、樋口が出場する。枠取りがかかる大事な試合に彼女を選んだのは、昨季の世界選手権に出場しており、今季も前半戦でしっかり結果を出して、グランプリ(GP)ファイナル進出を果たした実績と経験があるからだろう。

 樋口には、昨季の世界選手権で調子を崩して11位に終わり、平昌五輪の枠取りに貢献できなかったという思いもある。五輪代表権を取れなかった悔しさに加え、枠取りに貢献できなかった昨季の雪辱を果たさなければいけないという強い思いを持って今大会に臨んでいるはずだ。樋口は2月24日までのチャレンジカップでも203.94点とまずまずの成績。それは、世界選手権へ向けて気持ちを切らさずにいる証(あかし)でもある。

 また、平昌でその力を存分に発揮した宮原も、昨季は全日本選手権3連覇を果たしながら、股関節の疲労骨折で世界選手権出場を辞退したという無念の思いもある。借りを返すためにも、今回はしっかり3枠取りに貢献しなければという決意があるはずだ。

 そんな日本勢に追い風となっているのは、負傷していた右足首の痛みが再発したメドベデワの欠場だ。ザギトワと並ぶ優勝候補の彼女がいないことで、単純計算で宮原と樋口の順位はひとつずつ上がる。ふたりの順位合計13位以内という3枠獲得の条件クリアに一歩近づく。

 日本勢との上位争いに割って入ってきそうな選手は、五輪優勝のザギトワと3位のオズモンド以外に、地元開催で力を発揮しそうなカロリーナ・コストナー(イタリア)だろう。また、平昌五輪ではSP12位と出遅れながらも、フリーで8位にまで順位を上げたマリア・ソツコワ(ロシア)も、自己ベストは216.28点。五輪では15位に沈んだガブリエル・デールマン(カナダ)も、昨季の世界選手権では214.15点を獲得して3位になった実力を持っており、いずれも上位進出の可能性は十分ある。

 それでも、宮原がきっちり滑り切ればメダル圏内に入るのは確実で、樋口もミスなく力を発揮すれば210点前後は計算できるだけに、他の選手が持ち点通りの滑りをしたとしても10位以上は確実だろう。そう考えれば、女子の3枠獲得は期待してよさそうだ。3枠獲得の戦いは、21日の女子SPから始まる。