3月14日、日本代表の強化機関であるナショナル・デベロップメント・スコッド(NDS)の都内での合宿は大詰めを迎えていた。

 堀江翔太がボールを手に取ったのは、見学していたこの日の午後練習が終わった頃だった。なんと、松田力也や山中亮平らに、動きながらキックをする際の身体の使い方をレクチャーしていた。

 堀江の務めるHOは本来なら最前列中央の縁の下の力持ちで、コンタクトの局面などで力を発揮する。一方で山中や松田は、SOやCTBといったボールを動かす司令塔的な働き場の選手だ。本来なら、キックの精度を長所とするのは後者であった。

 ところがこの日の堀江は2人を前に、手元のボールを真下に落として足をぶつけるまでの流れを実演。背筋を伸ばし、パスやランにも移れるような体勢から右足を振り抜く。

 山中と一定の距離を保ってキックを蹴り合うと、堀江の放つ弾道は山中の手元へ吸い込まれてゆく。

 少年時代にサッカーやバスケットボールなども楽しんできた32歳の堀江は、HOでありながら空間把握能力やスキルに長ける選手だ。日本代表としてはワールドカップに2大会連続で出場中。国際リーグのスーパーラグビーへは日本のサンウルブズが始動するより3年前の2013年から挑戦(当時、レベルズに在籍)しているとあって、キャリアは国内屈指である。

 堀江と同じパナソニックの松田は、キックについて話し合った堀江について「いまは上半身の使い方を教えてもらいました。いろいろな経験をもとに細かいスキルをアドバイスされる。採り入れていきたいです」。帝京大時代には正ゴールキッカーとして大学選手権8連覇を達成しているが、堀江の話を心に響かせたようだ。

 当の堀江は、このセッションの肝を「ボールへ力がどう加わったら、少ない力で(ボールが)飛ぶか」と説明する。パーソナルトレーナーとして信頼する佐藤義人氏から授かった効率的な身体の使い方に基づき、プレー中に放つキックの動きを紐解いていたようだ。

「ラグビー選手特有の『こう』いう上半身を下げた蹴り方は、流れの中でやるのはなかなか考えにくい」

 ここで「こう」と話した時は、キッカーがプレースキックを放つ際に蹴り足の方向へ上体をひねる、ラグビー界でよくみられる動きをしていた。

「それに、パスにもいけるような(形での)この蹴り方の方が、実際に(ボールは)飛ぶんですよ。サッカー選手は、『こう』しないでしょ」
 
 今年、堀江はサンウルブズの一員としてチームの開幕戦にあたる第2節から2戦連続で先発出場。しかし3月3日の第3節(東京・秩父宮ラグビー場/対レベルズ/●17-37)で右のハムストリングの肉離れを起こしたこともあり、5日からの南アフリカ遠征には参加せずNDSで調整していた。

「この2週間、戦術、戦略を頭に入れながら過ごせたのはいいことかなと思います。メンタルもリフレッシュできた。『チーフス戦、行くぞ(復帰しろ)』とは言われてないので(先のことは)まだわからないですが、チーフス戦で(復帰)できるようにと思っています」

 視線の先にあるのは、本隊が帰国して迎える第6節だ。チーフスを秩父宮に迎える3月24日のゲームまでに、状態を整えたいと堀江は考える。ポジション不詳のパフォーマンスは披露されるか。
(文:向 風見也)