東京ヤクルトスワローズの沖縄・浦添キャンプを取材して感じたのは、「地獄のようで地獄ではない」ということだ。練習時間…

 東京ヤクルトスワローズの沖縄・浦添キャンプを取材して感じたのは、「地獄のようで地獄ではない」ということだ。練習時間は長く、内容も濃いものだったが、グラウンドには常に”笑い”があり、今季からキャプテンに就任した中村悠平も「おふざけじゃない楽しさのなかで練習に取り組むことができました」と胸を張った。

 今シーズンのスローガンは「SWALLOWS RISING 再起」。

 そこで再起をかけるヤクルトの主力選手たちに、それぞれの”現在地”について聞いて回った。



キャンプでは先頭になってチームを盛り上げていたバレンティン

 山田哲人は「開幕まで無駄のない1日を過ごしたい。今は『絶対にやってやる』という強い意志を持って練習をしています」と語った。

「去年の(球団ワーストとなる)96敗は忘れたくても忘れられないですよ。さすがに96敗は負けすぎですし、ファンの方たちの期待を裏切ってしまった。自分自身も打率が2割4分7厘に終わり、本当に悔しいシーズンでした」

 キャンプ中、「過去最高の練習量とスイング量でした」と語っていたように、充実した表情を浮かべていた。

「しっくりこないところも若干ありますけど、トップの位置とか、下半身はこんな感じかなと。上半身の部分がしっくりしてくれば完璧になると思います。今までは感覚で打っていたのですが、僕も8年目となり、その経験を『ここはこうだな』と頭が使えるようになってきました。(チームへの貢献について)僕自身は打って、走って、守れる選手だと思っています。塁に出れば走りますし、打つときはフルスイングします。それに状況判断をしっかりとしたプレーをしていきたいですね」

 雄平はキャンプ中、別メニューの日もあったが、最終クールで全体練習に復帰。キャンプ終盤での”特打”では1時間近くバットを振り続けた。石井琢朗打撃コーチから「煽ってるぞ。ほら、また煽った」と指摘が続く中、強い打球を弾き返し、「あっ、この感じだ」と手応えを感じとった様子だった。

「あのスイングのときは、石井コーチから言われていることがフィットしたというか。僕はどうしても始動からフィニッシュまで全力で振っちゃうのですが、バットのヘッドをうまく使えたというんですかね。”ポン”という感じで、インパクトのあとに無駄な力なくスイングすることができました。今日は動画も撮ったので、明日やってみて、まだまだであれば開幕までに完成する気持ちで取り組めればいい。僕自身、開幕を楽しみにしています」

 坂口智隆は、青木宣親の加入で厚みを増した戦力を有効に使うためのオプションとして、ファーストの守備練習に取り組んでいた。

「試合やシート打撃で打球を捕りましたが、練習を始めてまだ数日というレベルですからね。勉強することはたくさんありますけど、まっさらな分だけ多く吸収できていると思います。それがチームにとってプラスとなり出場機会が増えるのなら、ポジションは関係ありません。この考えはプロに入ったときから変わらないし、真剣に向き合っています」

 畠山和洋は「僕にとって、このキャンプはいい転機になりました」と言った。3年前のリーグ優勝に大きく貢献した”4番打者”は、ここ2年間はケガで苦しんだ。

「成績も下降したとかではなく、まったく仕事ができませんでしたからね。キャンプに入る前からずっとマイナス思考だったのですが、青木さんと再会できたことでまた前向きになることができた。ケガや衰えを理由に、自分の感覚だけで『もう無理だ』と判断していたんですが、青木さんが『もう一回、しっかり鍛えればまだまだできるよ』と、客観的な評価をしてくれた。

 今は『やってやろう』という気持ちが強いですね。よかったときの成績にどのくらい戻れるのか。不安は少しずつ楽しみへと変わってきています。年齢的には後輩に何かを伝える立場なんですが、まずは野球選手として試合を楽しみたい。それが結果的にチームへの貢献になると思います」

 中村は「目指すのは、絶対的レギュラーになることです」と前を向いた。新キャプテンは、チームが”スモールベースボール”を掲げるなか、”2番打者”としての起用が有力となっている。

「監督から『お前がチームのカギを握っているんだぞ』と期待してもらえて……ありがたいことですよね。僕は不動のレギュラーとして、誰も文句を言えない成績を残してきたとは言えませんからね。2015年こそ優勝しましたが、昨年は96敗と散々な思いをして、レギュラー剥奪もありました。

 キャッチャーとしては投手陣と一緒になってブルペンから高い意識を持って取り組み、2番を任されるのであれば、何をされたら相手は嫌なのか、この状況で何をすれば最適なのかなど、最低限の仕事は確実にしたい。キャプテンとしてやっていくなかで、もっともっと一人前になる必要があると思っています」

 ウラディミール・バレンティンは、フリー打撃でインパクトの瞬間に「ヨッシャーッ!」という叫び声とともにフェンス越えを連発。2月24日の阪神とのオープン戦では2打席連続本塁打を放つなど、”主砲”への期待は高まるばかりだ。

「今年のキャンプは厳しいと聞いていたので、しっかり準備してきました。この厳しいスケジュールのなか、妥協せずに全メニューをこなすことができたのは状態がいいからです。去年はレギュラー陣に故障が重なり、残念なシーズンになってしまいましたが、今年はみんなケガを治して戻ってきました。彼らと同じユニフォームを着て、一緒に練習するだけで気持ちも引き締まりますし、これから1年、ケガなく戦うことが大きなテーマだと思います」

 バレンティンは”モチベーター”としても、キャンプを盛り上げた。ライト前ヒットを想定したベースランニングではこんな光景があった。

「ライトマエ」と、一塁から二塁へ走り出したバレンティンは、塁間で”マリオ”のようなジャンプを見せて笑いを誘い、二塁に到達すれば太ももを押さえて「イタタタ……」と苦悶の表情を浮かべ、周りの選手やコーチが「おいおい」とざわつくと、「ナンテネ」とおどけてみせた。その姿に球場はドッと沸いた。

 バレンティンがその意図について語る。

「このキャンプは練習時間も長く、ツライです。でも元気を出して明るい状況をつくることで苦しさが少しは軽減されるんです。これは自分のキャリアのなかで学んだことのひとつです。やっぱり野球はチームワークですし、それが力となって強くなっていく。そういう雰囲気をつくり出せたらいいなと思っています」

 チームは”スモールベースボール”を掲げるが、バレンティンは相手の戦意を喪失させる一発が期待されている。

「そうした役割が期待されているのはわかっています。でも、ウチには雄平もいるし、ハタケ(畠山)もいるし、山田だっている。自分がやろうと強く思ってしまったらそれがプレッシャーになってしまいますが、みんなでやればうまく分散されるはずです。そういう野球ができればいいですし、レギュラーたちがそれぞれの能力を出せば、スモールベースボール以上のもの……たとえば、いつも一、三塁の状況をつくったりとか、そういう野球ができるはずです」

 このキャンプでは野手組に注目が集まったが、投手陣の気持ちもひとつだ。ベテラン左腕の石川雅規は「今のピッチャー陣に手応えを感じているとかではなく、僕たちはやるしかないんです」と語った。

「結局、ピッチャー陣が頑張らないと始まりませんので。3年前の優勝も、僕らがゲームをつくったからこそ打線も活発になったと思う部分があります。ぶっちゃけ、僕自身、自分の居場所を確保しないといけない立場で、去年の4勝14敗は寂しすぎますよね。そういうシーズンが続けば辞めなきゃいけなくなりますし……。欲を言えば、(昨年の)勝ち負けを逆にしたい」

 2月初旬、ヤクルト二軍キャンプ地の宮崎県西都市。ここでエースの小川泰弘は黙々と汗を流していた。昨シーズン終盤に右ヒジを疲労骨折。開幕には間に合わない状況だ。

「右ヒジはまったく問題ありません。今は下半身と体幹の強化をしています。人生はうまくいかないことの方が多いですからね。僕としては、目標に向かって一喜一憂せず、今できることは何なのかを考え、焦らずにやっていきたいと思っています」

 屈辱にまみれた昨シーズンの借りを返すべく、過酷なキャンプを乗り越えたヤクルトナイン。その先に待っているものは果たして……今シーズンの戦いぶりに注目したい。