ひとつも負けていないが、勝ってもいない。 それが、J1第3節を終えての、セレッソ大阪の成績である。 3引き分けで勝ち点3は、よく言えば無敗だが、悪く言えば1勝2敗と同勝ち点であり、黒星先行に等しい。とにもかくにも勝ち切れず、歯がゆい試…

 ひとつも負けていないが、勝ってもいない。

 それが、J1第3節を終えての、セレッソ大阪の成績である。

 3引き分けで勝ち点3は、よく言えば無敗だが、悪く言えば1勝2敗と同勝ち点であり、黒星先行に等しい。とにもかくにも勝ち切れず、歯がゆい試合ばかりが続いている。



第3節の柏レイソル戦も引き分けに終わったセレッソ大阪

 第3節の柏レイソル戦も、そんなセレッソの現状を象徴するかのような試合だった。

 試合開始わずか4分にして、自陣でのDFマテイ・ヨニッチのパスミスから簡単に失点。その後はセレッソの攻勢が長く続いたが、MFソウザのミドルシュートで1点を返すにとどまり、3戦連続の引き分けとなった。FW杉本健勇が悔しそうに口を開く。

「(3引き分けは)負けないとも言えるが、引き分けではダメ。チームを勝たせるプレーをもっと見せないといけない」

 最初の一歩が踏み出せず、なかなか波に乗れない今季のセレッソだが、思えばケチのつきはじめは、J1開幕戦ではなかったか。

 ホームで横浜F・マリノスと対戦したセレッソは前半、鮮やかなパスワークで相手ディフェンスを完璧に崩し切り、最後はFW柿谷曜一朗が難なくシュートを流し込んだ。これでセレッソ先制、のはずだった。

 ところが、判定は柿谷のオフサイドでノーゴール。試合映像を見直す限り、MF福満隆貴からラストパスが出た瞬間、柿谷は完全にオンサイドのポジションにいたが、新シーズン開幕の晴れ舞台を彩る”祝砲”は幻となった。

 結局、逆に先制を許したセレッソは、終盤に追いつくも、1-1の引き分けに終わっている。今にして思うと、これこそが悪い流れのきっかけとなる、大きなワンプレーだった。

 MF水沼宏太は「あくまでも”タラレバ”だが」と断りを入れたうえで、こう振り返る。

「あれが入って、あの試合をものにしていれば、すべての歯車がうまく回っていたのかなと思う。(開幕戦は)相手が変則的な布陣だったこともあって、自分たちのバランスが崩れ、そこから守備に迷いが出て、ここまで来てしまった」

 とはいえ、柏戦は「前の2試合よりバランスよく戦えた」と水沼。結果的に初勝利はお預けとなったが、セレッソは徐々に本来の姿を取り戻し始めている。水沼が続ける。

「ここまで勝ち切れない試合が続いているが、それは負けなくてよかったという(内容の)試合でもある。ここ(柏戦)で負けてしまうと雰囲気が悪くなりかねなかったなかで耐えることができたし、粘り強く戦えていた」

 実際、柏戦に関して言えば、試合内容はかなりよかった。ボールを保持して攻めるだけでなく、ボールを失ったあとの守備への切り替えも速かった。本来は奪ったボールをしっかりつないで攻撃に移りたい柏に、まったくサッカーをさせない時間も少なくなかった。

 尹晶煥(ユン・ジョンファン)監督は、「相手のコンパクトな守備を崩すには、ショートパスだけでは解決しないと知らなければいけない。うまい選手は多いが、質というところで発展しないと、より楽しいサッカー、よりいいサッカーはできない」と手厳しかったが、十分評価に値する内容だった。

 上昇気配をうかがわせるチーム状態に手ごたえを感じているのか、水沼も自然と言葉に力がこもる。

「ミス絡みの失点で(気持ちが)落ち気味になってもおかしくなかったなかで、みんなが『前向きに守備をやろう』というところに立ち返れた。狙いどおりの守備ができたことは収穫だった」

 そして水沼は、「みんなでしっかり守備ができれば、(ボールを奪ったあとに)前に出る(攻撃の)力はJリーグでもトップクラスだと思うので、そこでチャンスを決め切れれば勝っていける」と語り、次節以降の試合に自信を見せた。

 開幕戦以来、ちょっとした勝負のアヤで引き分けばかりが続いているが、試合内容は決して悪くない。尹晶煥監督も「選手には闘志が戻ってきた。それが勝利につながれば自信になる」と語る。

 それだけに、早くほしいのが初勝利だ。杉本が口にした「ひとつ勝てば、どんどんよくなる。だから、早く勝ちたい」という言葉は、チーム全員の本心に違いない。

 まずは1勝。遅ればせながら、優勝候補にも名を連ねるセレッソのスタートダッシュは、そこから始まるのだろう。

 最後にひとつ。

 この試合の後半80分、セレッソのGKキム・ジンヒョンがGKを蹴ろうしてやめ、レフリーに何かをアピールする場面があった。ゴール裏の柏サポーターから差別的行為を受けたのが、その理由だという。

 試合後、当のキム・ジンヒョンも「マッチ・コミッショナーに任せている」と具体的なことは話しておらず、何があったのか(あるいは、なかったのか)については、Jリーグの調査を待つしかない。

 ただ、「選手はよく戦い、いいゲームをしてくれた。(苦しい時間もあったが)手を探り合うような、拮抗したおもしろいゲームだった」(柏・下平隆宏監督)だけに、騒動による中断で水を差される結果となったことは残念だった。