WEEKLY TOUR REPORT米ツアー・トピックス 2月25日、松山英樹が誕生日を迎えた。26歳になった。 ここ数年は、アメリカPGAツアー転戦中に、仲間たちとバースデーを祝うのが恒例だった。昨年はメディアの囲み取材でも「年を取っ…

WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 2月25日、松山英樹が誕生日を迎えた。26歳になった。

 ここ数年は、アメリカPGAツアー転戦中に、仲間たちとバースデーを祝うのが恒例だった。昨年はメディアの囲み取材でも「年を取っちゃいました。もうアラサーです」と言って、おどけていた。

 しかし今年は、左手の親指付け根付近の痛みから、2月頭のウェイストマネジメント・フェニックスオープンを途中棄権。以降、戦列を離れて、日本に一時帰国して療養中の身にあった。どんなバースデーを過ごしたのか、気になるところだ。

 その松山が、3月15日に開幕するアーノルド・パーマー招待(3月15日~18日/フロリダ州)でいよいよ復帰する見通しとなった。

 今季のメジャー初戦となるマスターズ(4月5日~8日/ジョージア州)まで、すでに1カ月を切り、その動向が心配されていただけに、今回の復帰は朗報となる。多くのファンも、ホッと胸をなで下ろしていることだろう。

 さて、その松山が欠場している最中、47歳8カ月という大ベテランのフィル・ミケルソン(アメリカ)が、世界選手権シリーズ(WGC)のメキシコ選手権(3月1日~4日/メキシコ)でツアー通算43勝目を挙げた。2013年の全英オープン以来、5シーズンぶりの美酒だった。



5シーズンぶりの勝利を飾ったフィル・ミケルソン

 ミケルソンが語る。

「勝てなかった4年以上の日々は、本当にタフな時間だった。自分では世界のトップレベルで戦えるプレーをしているつもりなのに、結果がついてこない。本当にフラストレーションがたまる毎日だった。もう勝てないかもしれない、と思うこともしばしばあった。だけど、僕は楽観主義なんだ。必ず勝てると信じていた」

 WGCの勝者としては、ビジェイ・シン(フィジー)の45歳5カ月を抜いて、最年長優勝記録を更新。24歳のジャスティン・トーマス(アメリカ)とのプレーオフを制した、見事な勝利だった。

「今の僕は、体力も気力もとても充実している。よかったときのスイングを取り戻し、今がベストなところもたくさんある。実際にティーショットは、僕のキャリアの中でも最も好調な状態にある」

 大ベテランのゴルフであっても、”ヤングガン”を相手に戦えることを証明したミケルソン。その表情は、今なお自信に満ちあふれていた。

 ミケルソンが勝利から遠ざかっていた4年半あまりの間に、台頭してきたヤングガンがたくさんいる。松山もそのひとりだが、すでに今季2勝を挙げているトーマスは、今最も勢いのあるヤングガンと言えるだろう。

 昨年は”松山キラー”として、ことごとく松山の前に立ちはだかった。一番のハイライトは、昨年8月の全米プロ選手権。松山との熾烈な争いを制して、トーマスはメジャー初優勝を飾った。そしてその勢いのまま、フェデックスカップ王者にも輝いた。

 そのトーマスが今回、ベテランのミケルソンに屈した。プレーオフ1ホール目で敗れた彼は、こうコメントを残している。

「もちろん、負けたことはとても悔しい。だけど、フィルが勝ったことはゴルフ界にとってとても素晴らしいこと。僕たちも、これからずっと長いこと勝つことができるんだ、と思える。何より、フィルの努力を考えると、ものすごくうれしかった」

 一方、この大会では新鋭の活躍も話題になった。最終日に崩れてしまったが、3日目まで首位に立っていたのは、21歳のシュバーンカル・シャルマ(インド)だった。

 勝てば、WGC最年少優勝記録だったが、さすがにビッグタイトルを目前にしての重圧には勝てなかったようだ。最終日は、前日とは別人のようにパットが決まらず、「74」とスコアを落として9位タイに終わった。

 ともあれ、このシャルマにとっても、優勝したミケルソンはまさしく”レジェンド”と言える存在だ。

 1996年7月生まれのシャルマ。少年の頃、母国インドで早朝に放送されていたゴルフ中継をよく見ていたという。なかでも、2004年にマスターズで初のメジャー制覇を遂げたミケルソンの姿は、強烈な印象として残っている。ゆえに、最終日のミケルソンとの”競演”には興奮を隠し切れなかった。

「まさかミケルソンと、世界選手権シリーズの最終日、それも最終組で一緒にプレーできるなんて……。夢のようだった」

 ちなみに、このシャルマはアジアツアーを主戦場とする選手だが、今季の欧州ツアーでは、昨年12月のヨハネスブルグ・オープン(南アフリカ)、2月のメイバンク選手権(マレーシア)と早くも2勝。現在、欧州ツアーの賞金ランキング『レース・トゥ・ドバイ』でトップを走り、欧州・アジアでは最も勢いのあるヤングガンだ。

 さらに、今回のメキシコ選手権で9位と活躍したのち、マスターズ委員会から特別招待を受けており、まもなくメジャーデビューも果たすことになる。

 これらヤングガンの活躍を見て、ミケルソンはこう語る。

「トーマスをはじめ、ジョーダン・スピース(アメリカ)、ジョン・ラーム(スペイン)などなど、彼らヤングガンたちと対戦するのはワクワクする」

 そのワクワクする戦いに勝利し、大ベテランは満面の笑みを浮かべてこう続けた。

「(ベテランとはいえ)僕だって、すごく緊張する。特に今回は、しばらく優勝争いに絡んでいなかったから、ものすごくナーバスになった。だけど、僕はこの緊張感がとても好きなんだ。戦っているという証(あかし)だからね」

 折しも、ミケルソンの最大のライバルである、42歳のタイガー・ウッズ(アメリカ)もツアーに復帰し、2月末のホンダ・クラシックで12位になるなど復活の兆しを見せている。

 まもなく迎えるメジャーシーズン、「ベテランvsヤングガン」といった構図の戦いも大いに期待できる。大舞台で繰り広げられる白熱した争いから、ますます目が離せない。