「同じことの繰り返しですね。いつもいい入りをして、いい試合はできていますけど、結局、簡単に一発で失点をして、最後は自分たちのミスで負ける……。同じだなって感じですね」 試合終了後のミックスゾーンで乾貴士は悔しさを…
「同じことの繰り返しですね。いつもいい入りをして、いい試合はできていますけど、結局、簡単に一発で失点をして、最後は自分たちのミスで負ける……。同じだなって感じですね」
試合終了後のミックスゾーンで乾貴士は悔しさをにじませた。
エイバルのホーム、イプルアで3月10日に行なわれたリーガエスパニョーラ第28節エイバル対レアル・マドリード。序盤からホームのエイバルがマドリード陣内でプレーをする時間が続いたが、終わってみればクリスティアーノ・ロナウドの2発の前に1-2と敗れ、レアル・マドリード戦初勝利は来シーズン以降に持ち越されることになった。
レアル・マドリード戦に先発、後半42分までプレーした乾貴士
この日の試合は、日本企業がエイバルのオフィシャルスポンサーとなったことや、相手がレアル・マドリードであったことから、イプルアにはいつも以上に多くの日本人サポーターの姿があった。そして人口約3万人の小さな町の、収容人数6500人の小さなスタジアムで躍動していたのは、ホームのエイバルだった。
「今日はすばらしい試合をやったエイバルを評価しなければいけない。彼らはすばらしかったし、偉大な試合をやった。特に前半はね。すばらしいシーズンを送っているすばらしいチーム相手の、難しいピッチでの試合だった」
試合後の記者会見で敵将ジネディーヌ・ジダンが「すばらしい」を連発したように、前半に関していえば、エイバルがレアルを圧倒していた試合だった。だが、2週間前のバルセロナ対エイバル戦で絶妙なアシストをしたリオネル・メッシ同様、リーガの誇るもうひとりの天才クリスティアーノ・ロナウドがエイバルの前に立ちはだかった。
しかも悔やまれるのが、いずれもチームの自陣でのミスパスから生まれたゴールだったことだ。
34分の先制点は、アナイツ・アルビージャの軽はずみな縦パスをルカ・モドリッチに奪われると、左サイドに展開され、クリスティアーノ・ロナウドがGKと1対1に。84分の勝ち越し点は、ペドロ・レオンのパスをダニエル・カルバハルがカット。右サイドで組み立て直され、完璧なクロスを上げられると、ドンピシャな打点のヘディングでネットに突き刺された。
乾が振り返る。
「レアル・マドリードとエイバルにチームとしての力の差はある。けど、そんなこと言っていたら、いつまでたっても勝てない。個人の差はある。それは認めざるを得ない。ただそれを補えるチーム力がエイバルにはあるので、そこで何とか勝ちたかったです。
自信は持っているし、このサッカーのやり方が間違っていないってみんな思っていると思う。これを突き詰めて、もっとよくしていくしかない。もちろんいいサッカーができたし、レアルを困らせることはできた。それに関しては満足しているけど、せめて引き分けにしたかった。勝ち点1と勝ち点0では全然違うので。たった1かもしれないけど全然違う。その1だけで、サポーターはもっと喜んでくれると思います」
今回もエイバルは強豪レアル・マドリードの前に敗れた。だが、いまエイバルが見せているサッカー、ホセ・メンディリバル監督のもとビッグクラブにも引けをとることなく戦えているコンパクトなプレッシングサッカーは、イプルアのスタジアムに記載されている”Another football is possible”のスローガンを体現するものだ。
結果こそ手にすることはできなかったが、それは多くの人を魅了するサッカーである。少なくともそう感じさせる試合でもあった。