フランス・パリで開催されている全仏オープン(5月22日〜6月5日)の8日目、女子シングルス4回戦。 昨季を世界ランク146位で終えたとき、シェルビー・ロジャーズ(アメリカ)が2016年の目標に掲げたのは、わりと控えめなもの…

 フランス・パリで開催されている全仏オープン(5月22日〜6月5日)の8日目、女子シングルス4回戦。

 昨季を世界ランク146位で終えたとき、シェルビー・ロジャーズ(アメリカ)が2016年の目標に掲げたのは、わりと控えめなものだった。予選を戦うことなくグランドスラムに出場するため、必要なだけのランキングを上げる、というものだ。

 彼女は全仏オープンでその目標をギリギリでクリア。ランキングを108位まで上げ、先月出場選手が発表されたとき、ボーダーラインぎりぎりで最後の一人として本戦出場権を獲得した。だが、現在の彼女を見ていると、目標を大きく上方修正したほうがいいと思える。

 ロジャーズはロラン・ギャロスで、3試合連続でシード選手を破り、準々決勝進出を決めた。1回戦で第17シードのカロリーナ・プリスコバ(ロシア)、2回戦でエレナ・ベスニナ(ロシア)、3回戦で第10シードのペトラ・クビトバ(チェコ)、4回戦で第25シードのイリナ カメリア・ベグ(ルーマニア)を下している。

 この30年間の全仏オープンで、ロジャーズよりランキングの低い選手が準々決勝に進んだのは5度だけである。

 「1ポイントずつ集中して戦うことを強く意識しているわ。次のポイントは新たな試合だと思うようにしてきたの。でも、ここまで勝ち進んでくると、その意識でプレーするのが難しくなってきた。ただ、私には失うものは何もないから、プレッシャーはない。今大会は素晴らしい経験ができているから、それを楽しみ続けたいし、少しでも勝ち進みたい。もう自分が経験したこともない新たなステージにいて違和感もあるから、“ここが私のいるべきところ”と自分に言い聞かせているの」  彼女は確かに、ここにいるべき実力の持ち主だ。ベグをコート中、走り回らせ、フォアハンドのウィナーを連発した。クビトバ、プリスコバを相手に、深いグラウンドストロークでポイントを積み上げた。

 「ベースラインのかなり後ろまで押し込まれたわ。ロジャーズがゲームをコントロールしていた」とベグは脱帽した。

 ロジャーズは勝利の瞬間、ラケットを落として両手で顔を覆い、涙を流し始めた。だが、彼女が感情を爆発させるのはいつものこと。 「どんなときも100%ーー涙が出てしまうの。悲しいとき、うれしいとき、お腹が空いたとき、本を読むとき、映画を見ているとき。簡単に泣いてしまう」

 ロジャーズは今回を含む10回のグランドスラム出場で、1回戦負けが6回、2回戦負けが2回、昨年の全米オープンでは予選を勝ち上がり、3回戦で敗れた。そして現在、準々決勝まで勝ち進んでいる。

 ロジャーズが準々決勝で対戦するのは、第4シードのガルビネ・ムグルッサ(スペイン)だ。ムグルッサは2015年のウインブルドン準優勝者で、全仏オープンでは3年連続でベスト8に進出している。

 ムグルッサは4回戦で、2009年全仏優勝者で第13シードのスベトラーナ・クズネツォワ(ロシア)を6-3 6-4で破っての勝ち上がりだ。(C)AP(テニスマガジン)