みんなの期待を上回った『20歳』を迎えた八村塁八村塁は2月8日で20歳になった。20歳はNCAA挑戦における一つのキーワードでもあった。「塁に一番必要なのはハングリーさ。アメリカでの苦難の毎日に挑み、精神的に大人になってくる20歳になる頃を…

みんなの期待を上回った『20歳』を迎えた八村塁

八村塁は2月8日で20歳になった。20歳はNCAA挑戦における一つのキーワードでもあった。

「塁に一番必要なのはハングリーさ。アメリカでの苦難の毎日に挑み、精神的に大人になってくる20歳になる頃を楽しみにしたい」――。そう言って、明成高の佐藤久夫コーチは高校3年間で心技体を鍛えて八村をアメリカに送り出した。明成でトレーニングを担当した高橋陽介アスレティックトレーナーは、八村が高校を卒業する時にはこう語っていた。

「塁の身体はアメリカでのトレーニングとたくさん食べることによって、すぐに大きく、強くなると思います。高校では身体をバランス良く使ってプレーできるように、筋力トレーニングはもちろんのこと、ジャンプ力、持久力、背面を鍛えるトレーニングをハードにしてきました。アメリカの大学で通用するための基礎作りを高校3年間でやったので、筋力がつきやすい20歳くらいに差し掛かるとともに、その成果は出てくると思います」

また、昨シーズンが始まったばかりの時、ゴンザガ大のヘッドコーチ、マーク・フューは「日本人がルイに期待するのは分かる。でも今はじっくり育てる時。我々も本人も忍耐、日本も忍耐して彼の成長を待ってほしい」と話した。八村をゴンザガに熱心にリクルートしたアシスタントコーチのトミー・ロイドも「今のルイは毎日の練習や試合から学ぶことが大切で、私は彼が20歳になる頃にどんな選手になるか興味があるのです」と語っていた。

これらの恩師たちの言葉が示すように、20歳になった八村の『心・技・体』は、昨年よりも一回り大きく、たくましくなっている。ただ、その成長の速度はコーチたちの予想を超えている。

2017-18シーズンのスタッツは34試合で平均20.2分出場、11.3得点、4.6リバウンド。その身体能力の高さは試合を重ねるごとに注目を集め、勝負が懸かった場面でのインパクトは数字以上に強い。シックスマンながらウエストコースト・カンファレンス(WCC)のファーストチームに選ばれたことからも、その勝負強さは誰の目から見ても明らかだ。2度目のNCAAトーナメントを目前に控えて成長著しい八村塁に、自身の成長と手応え、そして取り巻く環境や来たるNCAAトーナメントについて話を聞いた。

「コーチたちからすごく期待されているのが分かる」

――大きな飛躍を見せた2年目のシーズン。その要因は自分では何だと思いますか。

試合をするごとにチームが機能するようになって、チームの中で僕も機能してきたんだと思います。これからもっといろんなチームと対戦するので、どうやって戦っていくか、自分でも楽しみです。

――昨年はチームのシステムが理解できないところがあって「準備の年」と言っていたけれど、今シーズンにシステムが理解できるようになったのは、言葉や環境適応、技術力アップなど、何の要素が大きいですか?

言葉が分かるようになって、試合に慣れたのが大きいです。あとはコーチが僕にやりやすいようにシステムを作ってくれるんです。僕が分かりやすいように、やりやすいように、そんなに複雑にならないようなプレーを作ってくれるんです。

――八村選手のために分かりやすくプレーを作ってくれるということは、コーチたちから活躍を求められて、期待されている証では。

はい。コーチたちがすごく期待してくれているのが分かります。でもそういうのにまだ応えられていないところがあるので、これからもっとやらなくてはいけないと思っています。

「何でもやることが2年目の役割」

――今シーズン、特に手応えを感じているのはどんなプレーですか?

自分の身体能力を生かしたプレーというのはアメリカでも通用すると思うので、そういうところです。

――シックスマンとしてコートに出ていく時に心掛けていることは?

あとから出ていくことで流れがつかみにくいことがあって、それで昨シーズンは悩んだり、自信がないこともあったんですけど、今シーズンはコートに出て最初から全力でやることで、自分のプレーが出せるようになりました。その中でも、自分がつく相手を意識して、相手のプレーをよく見て、ディフェンスから入るようにしています。

――ヘッドコーチから求められている役割は?

なんだろう……。すべてが求められていますね。得点を取って、リバウンドを取って、ディフェンスして、ブロックして、アシストもして、何でもです。

「ゴンザガの雰囲気が好き。ここでもっと練習したい」

――八村選手から見てゴンザガ大はどういうチームですか?

みんなでやるチームですね。他の大学だと何人かの良い選手やエースがやる感じだけど、ここは一人のエースがいるわけじゃなくて、みんなでやる。そこがいいですね。

――練習見学をさせてもらいましたが、チーム全体の練習後にスキルコーチとマンツーマンで様々なバリエーションのシュート練習をやっていましたが(3ポイントシュート、ポストアップ、フックシュート、様々な角度からのドライブイン、ジャンプシュートなど)、これを毎日やっていることが成長の秘訣だと感じました。

はい。あの個人練習は本当に大きいです。コーチがつきっきりでシュート練習を毎日見てくれるんです。去年はダンクの練習もたくさんしました。ゴンザガは本当に選手一人ひとりのことを考えてコーチしてくれるんですよ。ここの雰囲気が本当に好きです。ここでもっと練習がしたいと思っています。

20歳の八村塁インタビュー(後編)
「今はトーナメント、その先に代表とNBA」

八村を熱心にリクルートしたのはアシスタントコーチのトミー・ロイドだが、八村を見出したのは個人練習でスキルトレーニングを担当しているイタリア人コーチのリカルド・フォイス。高校2年の時にU-17世界選手権で対戦したイタリアとの試合を見て八村に関心を持ったことが、ゴンザガへの勧誘につながったという。ゴンザガにはヘッドコーチを含む6人のコーチングスタッフの他、ビデオ収録やスカウティングなどを担当するスタッフがいる。リカルド・フォイスはチームではアナリストを担当するかたわら、八村のスキルトレーニングをしている。また昨夏はイタリア代表のアシスタントコーチとしてユーロバスケット(ヨーロッパ選手権)に出場している。