寒風が吹く東京・辰巳の森ラグビー練習場。戦術やコンビネーションを確認する全体練習の後に、身体を追い込むサーキットトレーニングが組まれる。選手は追い込まれる。

 藤田貴大はひるまなかった。サイドステップを繰り返すセッションの直後に、バーベルを用いてのスクワットに移る。深く腰を落とす。

 キャンプ3日目となる3月7日の練習時のことだ。それ以前のトレーニング中も、合間、合間に他の参加選手へ「頑張りましょう!」と声をかけていた。

 日本代表キャップを持たない24歳の意識は。

「アピールしなくちゃいけない立場。小さくなっていても何も始まりませんし、どんどん自分を出していけたらなと。ああいう場面では、元気を出していこうと思いながらやっています」
 
 藤田が参加していたのは、3月5~8日に都内であったナショナル・デベロップメント・スコッド(NDS)の「2017年度 第7回合宿」だ。NDSはラグビー日本代表のジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ発案の強化機関で、日本代表と同種の戦術やスキルなどを有力選手にしみこませるのが狙いである。

 現在ジョセフが率いるサンウルブズ(国際リーグのスーパーラグビーに参戦)の一部選手、過去に日本代表選出歴のある選手が揃うNDSにあって、今回が高校日本代表以来という代表関連の活動となる藤田は「本当にいい経験ができている」。キャリア組から刺激を受ける。

「こういう形で他のチームの人とやるのは、社会人になってから初めて。新しい感性、感覚、いろんな人の話に触れてラグビー観が変わります。より小さいことにこだわっているな、と思っていて。立つポジショニング、立つ速さ…。そういうことはチームでも意識しているんですが、ここでは周りの皆のレベルが高いのでそこに追いつけるようにより速く動かなきゃと感じます」

 身長176センチ、体重96キロ。一線級のFLにあっては小柄だが、地上戦での粘り腰に定評がある。大男へ突き刺さる。相手の持つ球へへばりつく。

 青森北高から入った東海大時代は、最終学年時に満場一致で主将に就任。大学日本一こそ果たせなかったが、リーダーシップと激しさをファンに印象付けた。

 現所属先の東芝へ入ったのは、学生時代に叶った練習参加のおかげだ。当日は大学の先輩で東芝の主軸、リーチ マイケルらに「本気でやっていいよ」と耳打ちされ、本来ならタックルを伴わない練習でも外国人選手に鋭くぶち当たった。トレーニングの雰囲気を変えた頃には、事実上、合格していた。2年目の2017-18シーズン、公式戦15戦中12戦に先発した。

 入社を前後し、所属企業の業績不振が顕在化。それでも東芝を愛して東芝で戦う藤田は、こんな態度を貫くのである。

「会社も少しずつ良くなってきていると思いますし、僕らにプレッシャーやストレスがかからないようにスタッフの方が気遣いをしてくれている。そのなかで昨季はいい結果を残せなかったので(16チーム中6位)、今年はもっとアグレッシブにファイトしていきたいと思います」

 NDSはこの先、12~15日の「2017年度 第8回合宿」(都内)、4月1~7日の「2018年度 第1回合宿」(沖縄)が予定され、4月10~28日にはニュージーランド遠征を控える。

 藤田と同じFLにはサントリーの西川征克、小澤直輝、パナソニック兼サンウルブズの布巻峻介と、身長180センチ前後のボールハンターが並ぶ。NDSが日本代表の登竜門的な性質を持つとあって、藤田はナショナルチーム入りへも意気込む。

「チャンスはある。今回のFLはタイプ的にも似ている人ばかり。そのなかで自分の個性を出せたら。持ち味はディフェンスだと思っていますし、(ランナーへの)早いサポートができたら」

 これまでと同様、決死のプレーで切符をつかみ取りたい。(文:向 風見也)