柏レイソルは、クラブとして悲願とする「アジア制覇」に向け、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)第3節、傑志(キッチー/香港)との戦いに挑んでいる。第1節は全北現代(韓国)に敗れ、第2節は天津権健(中国)に引き分け。勝ち星なしで残り4試…

 柏レイソルは、クラブとして悲願とする「アジア制覇」に向け、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)第3節、傑志(キッチー/香港)との戦いに挑んでいる。第1節は全北現代(韓国)に敗れ、第2節は天津権健(中国)に引き分け。勝ち星なしで残り4試合と、猶予はなかった。

「(傑志戦は)負け、あるいは引き分けても、決勝トーナメント進出は厳しくなる」

 それがチームの共通認識であり、乾坤一擲(けんこういってき)の勝負になった。柏はアジア王者への可能性を示せたのか?



ACL傑志戦で貴重なゴールを挙げた伊東純也(柏レイソル)

 3月6日、日立柏サッカー場。前評判通り、立ち上がりから試合は柏が主導権を握っていた。

 香港の雄である傑志だが、ACLはすでに2連敗で0得点9失点。レベル的にはJ2のチームにJ1の外国人助っ人が混じった程度だろうか。ひとつひとつのキックやトラップに微妙なズレが出て、リズムをつかめない。

 一方、柏もボールは支配したが、決定的な形は作り出せなかった。Jリーグ横浜F・マリノス戦から中3日。先発を7人も替えたことで(そのうち4人が今シーズン新加入選手だった)、プレーに連動性を生み出せない。サイドで幅を取る攻撃ができないことで、相手の中央の守備が乱れず、簡単に跳ね返される。前線の選手も深みを作るようなポストや裏への抜け出しをするわけでなく、遠目から可能性の低いボールを蹴り入れるしかなかった。

「思っていたよりも、難しい試合になった」(柏・MFキム・ボギョン)

 前半16分には、何気なく蹴り入れられたロングボールをDF中谷進之介が処理できず、エリア内で相手に入れ替わられると、左足ボレーでシュートを打たれてしまう。これはGK中村航輔が鋭い反応で弾き出したが、攻守に綻(ほころ)びが出ていた。

 傑志にとっては金星を挙げる絶好機だったものの、実力不足だった。

「(ディエゴ・)フォルランは100%の状態とは言えない。ただ、いいポジションを取ったり、攻撃に絡み、大きな役割をしている」(傑志・チュー・チークウォン監督)

 頼みのフォルランは体が重く見えた。ボールを引き出すタイミングなどは見る者を唸らせるものがあったが、パスは出てこない。そこでフォルラン自身が起点になって、ロングキックで展開してからゴール前に入るが、今度は味方がコントロールミス。打つ手のないフォルランは独力で仕掛けるが、南アフリカワールドカップで得点王に輝いた当時のキレはなく、打開は望めなかった。

 後半に入っても、柏がボールを持つ時間は続いた。連係は多少改善されたが、単純なミスも目立った。

 業を煮やしたベンチは、56分に伊東純也、61分にクリスティアーノという両エースを投入。これで攻撃にリズムが生まれる。とりわけ伊東は右サイドで仕掛け、1対1からマーカーを振り切ってクロスを上げ、ハモン・ロペスのシュートをお膳立て。サイドから揺さぶった。

「サイドでフリーでボールを受け、クロスまではいけると思っていた。自分はゴールに近いところまで入っていかないと」(柏・FW伊東純也)
 
 待望の先制点は66分だった。柏が全体に押し込んだ形になり、左サイド深くまでボールを持ち込んだ亀川諒史が、右足で精度の高いクロスを入れる。タイミングよくファーポストから入った伊東が、これを押し込んだ。クロスが入ったとき、傑志の最終ラインは秩序を欠き、ぽっかりと中央が空いた状態だった。柏は左右の幅を使うことで、中央の守備をたわませていたのだ。

 結局、追加点は奪えなかったものの、柏は効率よく1-0で貴重な勝ち点3を稼いでいる。

「不細工でも勝つ。そう考えていました。新しい選手も多く、コンビネーションはまだ合っていない場面もありましたが……。全体の底上げになったと、結果をポジティブに捉えたい」(柏・下平隆宏監督)

 内容は悪く、勝っただけの試合だった。しかし、勝ち点3という最低限の目的は果たした。次節は傑志とのアウェーでのリターンマッチ。これをすっきり勝ち切ることで、決勝トーナメント進出の道筋も見えてくる。同じ日、全北が天津を6-3で叩き3連勝したことで、天津との2位争いが明確になった。

「内容を含めて改善できるところはたくさんあるので、勝って修正できるこの流れを大事にし、また次に生かしたい」(柏・MF大谷秀和)

 アジア制覇を目指すなら――コンビネーションを深め、守備も強度を上げる必要があるだろう。そして、厳しい日程をどう乗り切るか。ひとつひとつの試合が鍛錬になるはずだ。