横浜DeNAベイスターズ・今永昇太インタビュー(前編) 今永昇太は、他のピッチャーのモノマネがうまい。「けっこう、特…
横浜DeNAベイスターズ・今永昇太インタビュー(前編)
今永昇太は、他のピッチャーのモノマネがうまい。
「けっこう、特徴をとらえることはできると思いますね。石田(健大)さんのモノマネだったらすぐできますし(笑)。子どもの頃から、杉内(俊哉)さんとか和田(毅)さんのマネをしていたんです。右だったら、斉藤和巳さんも……(出身が)九州(北九州市)でしたから、ホークスのピッチャーはよく見ていました。
僕、今でも調子が悪くなったら誰かのマネをするんです。去年だったら、杉内さんみたいな投げ方もしましたし、いろんな人の投げ方を自分の中で取り入れましたよ。でも、それって、あんまりよくないんです。やっつけみたいな感じになってしまって、応急処置に過ぎません。最初は変わった感じがあって、いいなと思うこともあるんですけど、でもそれはあくまでも他人のフォームで、自分のものじゃありませんからね」

昨シーズン、チームトップの11勝をマークしたDeNAの今永昇太
研究熱心で、器用で、センスにあふれている。モノマネがうまいというのは、目で見て脳に刻んだ動きを、神経を通じて指先にまで伝え、正確に再現する能力に長(た)けている、ということだ。だから、いろんなことができてしまう。しかし、その器用さが逆に今永を苦しめてきたという一面もあった。今永が言う。
「いろんな人のフォームをマネすることで、何も考えずに済むこともあるんです。誰かのいいところを取り入れて、その人のように身体を動かして、最後、リリースだけを合わせればいいと……でも、そうすると、あのときはここがよかった、明日はこうしてみようというふうに、日々の感覚に頼って、毎日、フォームが変わってしまいます」
だから、彼は決断した。今永昇太のフォームを作ろうと――そのために、今永は”虎の穴”の門を叩いた。
コウノエ・スポーツ・アカデミー。
スポーツトレーナーの鴻江寿治(こうのえ・ひさお)さんが福岡の八女(やめ)を拠点に行なっている1月のトレーニング合宿に、今永は初めて参加したのである。鴻江さんがこう話していた。
「ビックリしました。突然、今永投手から連絡があって、参加したいと……なかなか勝てないとか、ケガに苦しんでいるという選手ならわかりますよ。でも彼は去年、あれだけ活躍したピッチャーでしょう。正直、最初は、僕に何ができるんだろうと思いました」
ルーキーイヤーに8勝をマーク、プロ2年目の昨シーズンにはチーム最多の11勝を挙げた今永。カープとのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージではリリーフとして、またベイスターズとして19年ぶりに出場した日本シリーズでは先発として切り札の役割を担い、その期待に見事、応えてみせた。
昨秋には第1回アジアプロ野球チャンピオンシップの日本代表に選出され、台湾代表との試合で先発。今永はキレのいいストレートを武器に、6回を投げて12奪三振、無失点という、相手を寄せつけないピッチングを披露した。
そんな今永が、過去、吉見一起(ドラゴンズ、今年は不参加)、千賀滉大(ホークス)、松葉貴大(バファローズ)らが毎年、参加してきた鴻江さんの主宰するトレーニング合宿に、自ら参加を申し出た。それはなぜだったのだろう。今永はその理由をこう説明した。
「一番は、感覚に頼るだけじゃなく、自分のフォームをきちんと自分で説明できるようになりたかったんです。2年間、プロでやってきて、シーズン中は感覚が大事だと思ってやってきました。フォームよりも、リリースの瞬間だけが大事で、その感覚さえよければその過程にあるフォームはそんなに意識しなくてもいいと考えていたんです。調子が悪くなっても、リリースのことだけを考えるのがいいんだと思っていました。でも、それだと自分のどこがどうなっているから、今、こうなって、こういう球がいくんだっていう具体的なメカニズムを自分の言葉で説明できないことに気づいて……」
今永は、ホークスの千賀や石川柊太(しゅうた)がこの時期、鴻江さんの指導を受けているという記事を読んで、駒大時代に一度、鴻江さんに指導を受けたことがあることを思い出した。そこで知人を通じて連絡先を入手し、自ら電話をして、今年のトレーニング合宿への参加を願い出たのだという。
「一番いいときの自分のフォームはどういうものなのか。そのフォームで1年間、投げ続けることは無理だと思いますけど、どうすればそのフォームに近づけられるのか。疲れが出てくると、どういうふうに崩れがちになるのか。それを防ぐためにどこへ意識を置いておけばいいのか。そういうことを、体はこうなっているからこういう姿勢を作れば手はこっち側には出にくくなるとか、メカニックを理解した上で体現する。
率直に言えば、鴻江先生のおっしゃっていることは頭では理解できても、それを体で表現することは難しいなと思いました。どんどん積み重ねて、どんどん研ぎ澄ませていかないと、なかなか身につかない。だから、今はまだ慣らし中です」
トレーニング合宿では、球場を借り切って、ビデオ撮影をしながらピッチングをする。そのフォームを鴻江さんがチェックし、その場で修正点を指摘して、そこを意識させながらふたたび投げる。それを繰り返し、練習が終わったら、その日に最初に投げたときのフォームと、最後に投げたときのフォームを並べた二画面の映像を作成する。
夜、ビデオルームでそのフォームを見比べながら、どこがどう変わったか、どちらのフォームが理に適っているかを議論する。その議論には、その場にいる全員が加わる。今永は、ひとりひとりが指摘してくれる言葉をメモに取って、聞き入っていた。
「今回、わかったことは、僕は投げにいくとき、背中を反らせるタイプなんですけど、それをまっすぐ、フラットな状態で投げられるようにしたほうがケガをしないということでした。反ってしまうと開きが早くなる分、腕が遅れてくるので、肩を痛めたりしやすくなるんです。鴻江先生が目指すフォーム作りのモットーは、まずケガをしないということ。僕の今までのフォームだと、首が張ってきたりとか、肩の関節の前の方が張ってきたりとか、そういうところが問題点だったので、そこを戻すために初めは極端に猫背のイメージでいいんじゃないかと……そこを意識して今は投げています」
鴻江さんの指導のもと、ケガをしにくいフォームを固めながら、今永にはもうひとつ、このトレーニング合宿で何としても会得したい球種があった。そのために彼は合宿中、ホークスの石川のもとへ歩み寄って、こう切り出した。
「石川さん、あのパワーカーブ、どうやって投げるんですか」──。
(後編に続く)