4日、日本選手権リード競技大会2018(加須市民体育館=埼玉県・加須市)の決勝が行われ、2018年のリード国内チャンピオンが決定した。女子では14歳の森秋彩(もり・あい)が決勝唯一の完登で初優勝。男子でも昨年日本男子史上3人目のW杯優勝を果たし、年間3位に立ったリード代表のエース・是永敬一郎がはじめての頂点に輝いた。

 午前に行われた準決勝は男女ともに完登者が現れないシビアな展開で、女子では野口啓代と森がTOPに手をかける高度を記録し同率でトップ通過。男子では是永が楢崎智亜を半手差で抑え首位で決勝に進出した。

 準決勝から約2時間30分をあけ、先に行われたのが女子決勝。ここでも準決勝で完登への可能性をみせていた野口と森が火花を散らす。この2人を残した時点で、暫定首位は終盤に差し掛かる27+を記録した伊藤ふたば。この状況で先に登場した森は、ダイナミックな動きが取り入れられたルートを慎重に登り高度を重ねていくと、伊藤が止めきれなかった高度28を見事に捕え会場を沸かせる。その後も迷うことなく突き進み、1分を残して最後のクイックドロー(確保支点)にロープをかけた。

 この歓声を耳にし最後に登場した野口は、ファイナリストの誰よりも早いペースで次々と高度を上げていく。すると森を1分30秒以上も上回る2分30秒ほどを残してゴール手前に到達。しかし連続したムーブを繰り出したゴール取りに失敗し、目前に迫っていた3連覇を手中に収めることができず。ただ一人の完登で、まさに女王に相応しい登りを見せた森の初優勝が確定した。

 続いて行われた男子決勝はスタートから巨大なハリボテ(壁から出っ張っている大振りなホールド)が用意され、途中ランジ(ジャンプする大技)も組み込まれるなど女子に続いてボルダリングの要素が多く入った高難度課題がファイナリストたちに立ちはだかる。中盤で落下する選手が続出し、4番手に登場した土肥圭太が記録した高度30+を超えることなく、残す競技者は準決勝2位の楢崎智亜と1位の是永のみとなる。先に登る楢崎は持ち味のテンポのよい登りで高度を上げていくと32まで到達し、暫定首位で是永の結果を待つことに。すると是永は昨年W杯3位の実力を発揮し上位者の記録を次々と超え、最後は楢崎を準決勝と同じく半手差でかわし32+でフィニッシュ。悲願の国内リードチャンピオンの栄冠を手にした。


1位:森秋彩コメント
「去年3位で悔しい思いをしたのですごく嬉しいです。この大会のために練習を頑張ってきたので、その成果が出たと思っています。決勝の課題はオブザベーションの時に思った通り、ボルダー系のダイナミックなムーブが求められました。落ちることを怖がらずに、最初から思い切って登れたのが良かったと思います。今回(主要大会で)初めて12歳の小池はな選手がいて、年下には負けたくないと思って、絶対に完登しようと登りました。優勝してこれから追われるプレッシャーもあるけど、これからも今までと変わらず精一杯登っていきたいと思います」


2位:野口啓代コメント
「準決勝、決勝ともに終了点タッチで完登できなかったので、詰めが甘かったと感じています。会場の歓声で森選手が完登したことが分かっていました。完登で並んだ場合はタイムの争いになるので、そこは意識してはじめから早く登っていました。ペースも良かったと思いますし、下部でミスをした感じもなかったんですが、最後の終了点のムーブが少し苦手だったというか、ちょっと狭く感じて。終了点一手前をとるのに躊躇してしまって、そこでホールドどりが甘くなってしまったというか。(森選手については)ボルダ—ももちろん強いんですけど、リードに特化していて、リードを日本で一番頑張っている選手だなと思っています」


3位:伊藤ふたばコメント
「表彰台に上がるのは難しいと思っていたのでこの結果は嬉しいです。(課題については)強度はないが距離があった。特に大きなボテのアンダーからカチを取るところが遠くて難しかった。下から余力を残しながら登れるようにしていきたい。上位二人とはまだ実力差があるな感じているので、追いつけるように頑張りたいです。持久力は壁に取り付く時間を長くすることで改善していきたい。リードワールドカップについては、今の自分の実力がどの程度なのか分からない状態なので、何戦か出場して自分の力を出し切ることを目標にしていきたいです」


1位:是永敬一郎コメント
「何年か前から優勝候補と言われていて、自分でも意識していたんですけど、国際大会で優勝できても国内のコンペで勝てないイメージを払拭できなかった。それを今回果たせたので、この結果は今年のW杯にも生きてくると思います。今までは優勝という目標を意識し過ぎて空回りしてしまったり、7月からのシーズンに向けてコンディションを合わせていたのでこの大会になかなか合いませんでした。でも今回は登る時にすごく集中できていたので、優勝できるんじゃないかという手応えがありました。(初優勝の喜びは誰に伝えたいか)出身がここ埼玉県ということもあり、お世話になった地元の方々やコーチに伝えたいですね」


2位:楢崎智亜コメント
「準決勝、決勝と半手差で2位に終わったことは悔しいですが、まだまだ上のレベルにいるイメージがあった是永選手に迫れたことは成長を感じましたし、少し自信にもなりました。今回は登り方を、簡単に言えば足で乗ってから手を出すように意識して変えていたので、自分にとってのチャレンジでもありました。これがいい感覚で、表彰台に立つこともできたので間違っていなかったと思っています。自分はみんなよりも持久力がないので、いかに疲れずに、適切なムーブを選択できるかを考えています。(いきなりボテから始まった部分については)威圧感がありますよね。見た目でインパクトがあると正直ビビることもあります(笑)ランジも予想以上に滑ってしまい危なかったです」


3位:土肥圭太コメント
「もともとリード単体で順位を狙うようなタイプではなく、それほどリードの練習は行なってこなかったので予想以上の結果でした。3日前までテストがあり身体の休息が取れたことや、今までは序盤を慎重に登って、その後時間に焦るケースが多かったのでペースを上げることを意識したことが良かったと思います。僕はボルダーで二撃率が高いので、次の取り先が少し分からなくても迷わず突っ込んでいけるようなトレーニングをしてきたので、それがうまく嵌まった感じですね。僕は強いこだわりというものがなくて、目の前に用意されたものを行なっていくタイプ。スピード種目や変化していく課題の傾向、ユースオリンピックや東京五輪など、これからも用意されているものに向かって頑張っていきたい」

<決勝>

女子
1位:森 秋彩(14)/TOP
2位:野口 啓代(28)/33+
3位:伊藤 ふたば(15)/27+
4位:田嶋 あいか(19)/22
5位:谷井 菜月(22)/21+(準決勝4位)
6位:三浦 絵里菜(22)/21+(準決勝7位)
7位:廣重 幸紀(22)/19+
8位:小池 はな(12)/15+

男子
1位:是永 敬一郎(22)/32+
2位:楢崎 智亜(21)/32
3位:土肥 圭太(17)/30+
4位:本間 大晴(18)/30
5位:中野 稔(34)/29+(準決勝3位)
6位:波田 悠貴(20)/29+(準決勝7位)
6位:中上 太斗(18)/29+(準決勝7位)
8位:樋口 純裕(25)/27+(準決勝5位)
9位:藤井 快(25)/27+(準決勝7位)

CREDITS

取材・文

編集部・篠幸彦 /

写真

窪田亮