長い歴史を持ち、日本の国民的スポーツでもある野球。プロ野球をはじめ、大学野球や高校野球も絶大な人気を誇ります。アメリカ…

 長い歴史を持ち、日本の国民的スポーツでもある野球。プロ野球をはじめ、大学野球や高校野球も絶大な人気を誇ります。アメリカから伝わったスポーツではあるものの、長い間にわたって多くの人々に愛されてきました。

 そんな野球から派生して誕生したのがソフトボール。気軽に行えるスポーツとして、学校の体育の時間や地域行事でプレーすることも多いでしょう。しかし一見似ているようで、実は異なる部分が数多くあります。今回は野球とソフトボールの違いについてご紹介しましょう。

フィールドの違い

①グラウンドの広さ
 球場はソフトボールに比べ、野球の方が広くなっています。野球は、ホームベースから外野フェンスまでの距離は男子が76.2m以上、女子が67.06m以上。一般的な野球場はレフト・ライトフェンスまでの距離が90〜100m、バックスクリーンまでは120m前後です。

 ソフトボールは、ホームベースから外野フェンスまでの距離は男子が68.53m以上、女子が60.96m以上。ボールが飛びにくいだけに、球場も狭くなっています。ちなみに、野球場は右中間や左中間が深いのですが、ソフトボールはホームベースからの外野フェンスまで距離が一定です。

②塁間距離
 塁間の長さもそれぞれ異なります。野球の塁間は27.431mに対し、ソフトボールの塁間は男子14.02m、女子13.11m。バッターボックスも野球は11.9cm×182.8cm、ソフトボールは91cm×213cmと、形も若干異なります。さらにソフトボールの一塁ベースには「ダブルベース」と呼ばれる、白とオレンジのベースが設置されているのです。その理由は、ソフトボールは塁間が狭いので、バッターランナーと野手が交錯しやすいから。オレンジベースは打者走者しか使えず、一塁を駆け抜けるときに踏みます。

③ピッチャーの投球距離
 ピッチャーとキャッチャー間の距離は野球が18.44mなのに対して、ソフトボールは男子が14.02m、女子が13.11mです。一般的にソフトボールの方が球速は出にくいのですが、距離が近いため体感速度は野球より速くなります。その速度は、プロならば160〜170km/hに及ぶこともあるそうです。

 また、野球の場合はピッチャーマウンドという盛り上がった場所から投球するのに対し、ソフトボールは平坦な場所から投球します。これも、大きな違いの1つです。

用具の違い

④ボールの大きさ
 野球(硬式球)が周囲22.9〜23.5cm、重さ141.7〜148.8gであるのに対し、ソフトボール(3号球)は、30.48cm、重さ190〜195gと、大きさ・重さともに野球を上回ります。実際に手に持ってみると、ソフトボールの方が多少投げにくさを感じるでしょう。

⑤バットの大きさ
 ボールのように、バットは明確な太さ・長さは決められていません。ただし、野球の方が太めです。素材も異なり、野球なら高校野球では金属、大学やプロ野球では木製のバットを使います。対してソフトボールは、カーボン製のバットを使うことが多いでしょう。

ルールの違い

⑥ピッチャーのフォーム
 野球とソフトボールの分かりやすい大きな違いが、ピッチャーの投球フォームです。野球の場合は上手や横手などさまざまなフォームで投げますが、ソフトボールは下手投げが義務付けられています。ソフトボールはルールも厳しく、投げるときに肘と手首が体の側を通過しなければなりません。体から離れて投げると、不正投球になってしまうこともあるのです。さらに腕回転は1回まで、半径2.44m内のピッチャーズサークル内での投球など、さまざまな制限が定められています。

⑦イニング数
 野球は基本的に9回までプレーしますが、ソフトボールは7回まで。さらに野球は9回で決着がつかなければ「延長戦」を行うのに対し、ソフトボールでは8回からノーアウトランナー2塁で行う「タイブレーク制度」を導入しています。

⑧交代ルール
 野球は1度交代されてベンチに退くと、その試合に再び出場することはできません。一方でソフトボールは、1度退いた後も再び同じ打順に復帰できる「リエントリー制度」が導入されています。そのため、ソフトボールでは試合序盤に代打や代走を起用することも珍しくないのです。

 なお、プロ野球のパリーグではDH制(指名打者制度)と言い、打撃専門の選手を登録することができます。しかしソフトボールでは、DP(打撃専門)とFP(守備専門)の選手登録が可能です。DP制度を使用すると10人が出場可能となり、打撃はDPの選手、守備はFPの選手が対応します。

⑨走塁ルール
 プロ野球の試合では、よくランナーがリードを取っているシーンを目にするでしょう。これをピッチャーが牽制し、警戒する場面も多々あります。しかしソフトボールは、ピッチャーの手からボールが離れるまで塁から離れることを禁止。基本的にリードは認められていません。

まとめ

 似たようなスポーツに見えても、実は違いの多い2つのスポーツ。野球は球の速さやダイナミックさ、ソフトボールは瞬時の判断力やスピード感が求められ、戦術もそれぞれ異なります。2020年の東京オリンピックでは男子野球と女子ソフトボールが正式種目として復活するので、ますます人気を集めることでしょう。

 ご自身でプレーする際はもちろん、試合観戦の際にも、それぞれの違いを頭に入れておくと新たな観点で楽しめます。

<Text:古山貴大/Photo:Getty Images>