驚愕プレー連発するオランダ代表シモンズ、背景にあるものとは… メジャー屈指の遊撃手といったら、誰の名前が思い浮かぶだろう…

驚愕プレー連発するオランダ代表シモンズ、背景にあるものとは…

 メジャー屈指の遊撃手といったら、誰の名前が思い浮かぶだろうか。コレア、リンドア、シーガーらと共に“ベスト”の1人に数えられるのが、エンゼルスの正遊撃手アンドレルトン・シモンズだろう。オランダ代表でも常連の28歳は、二塁ベース後方へのダイビングキャッチ、三遊間深くからのジャンピングスロー、投手後ろからの素手キャッチ→スローなど、アクロバティックで華麗な守備を、いとも簡単に成し遂げてしまう。中でも、一塁やホームを目掛けた矢のような送球は、文字通り“驚愕”ものだ。 

 そこで沸いてきた素朴な疑問が1つ。生まれつきの強肩なのか、練習で培った技なのか。米アリゾナ州テンピにあるエンゼルスのキャンプ施設で、開幕に向けて調整を続けるシモンズに、直撃質問をしてみた。 

――驚愕のディフェンスを連発させますが、生来の強肩なんですか? 

「(笑)、そう言ってもらえてうれしいね。肩は平均より強い方だとは思うけど、決して強肩だって誇れるレベルじゃないと思っているんだ。もちろんショートなら肩が強いに越したことはないし、運動神経がよければ守備範囲は広がる。でも、それが全てだとは思わないね」 

――ということは、たくさん練習も積んだ? 

「そりゃもちろん! 子供の頃からビックリするくらい練習したよ。身体能力があるだけでもダメ。まったく同じ打球は2度と飛んでこないから、できる限りたくさんの打球に触れて、いろいろな状況を経験しておくことが大事。自分の中に引き出しを増やしておけば、打球が飛んできた瞬間に体が自然と反応するようになるから」 

――体が自然に反応すれば、それだけプレーを完成させる時間が短くなる……。 

「そう、大体この辺に飛んできて、こういうバウンドになるというのが予測できれば、スムーズなプレーにつながる。ジャンピングスローだって、いきなりできるわけじゃない。何度も繰り返しやってきたから、大体このくらいで投げれば一塁にストライク送球できるっていうのが、体に染みついているんだ。もちろん、打球がイレギュラーする場合もあるから、その時は咄嗟の判断が必要になるけど、大体のケースは頭で意識する前に体が動いていることが多いね」

リトルリーグでは豪華な二遊間形成、投手経験も「今頃オータニになれてたかな」

――子供の頃はどんな練習をしていたんですか? 

「近所の空き地だったり、家の裏にあるちょっとした道で、友達とみんなで暗くなるまで野球をして遊んでいたよ。それこそ、ボールで家の窓ガラスを割っちゃって、一目散で逃げ出すことなんて日常茶飯事。『やばい、逃げろっ!』ってね。窓を割られた家の人が怒鳴るのを聞きながら全力疾走したよ(笑)。 

 リトルリーグでもプレーしたんだけど、世界大会まで行けるほど強くはなかったんだ。うちはピッチャーがいなくて、点を取ってもその倍くらい取られちゃって。ちなみに、二塁はディディ(・グレゴリウス)だったんだ」 

――それにしても豪華な二遊間ですね(笑)。ずっと遊撃を守っていた? 

「子供の頃からずっと。外野だと1度も打球が飛んでこないまま試合が終わっちゃうこともあるだろ。いつもプレーに関わっていたいってなると、キャッチャー、ピッチャー、二遊間、センターのセンターライン。捕手はちょっと荷が重そうだったから(笑)、ショートにしたんだ。実は、少しだけピッチャーをしたこともあるんだけど、やっぱりショートの方が面白くて。もし続けていたら、自分も今頃オータニになれてたかな(笑)」 

――どのプレーにも関わりたいくらい、本当に野球が好きなんですね。 

「今でも球場に来るのが本当に楽しみ。子供の時も、とにかく野球が好きだから、長い時間練習していても辛くはなかったし、自分がやりたいからやっていたって感じかな。むしろ『いい加減に終わりにしなさい!』って言われていたくらいだから(笑)」 

 シモンズは驚愕プレー誕生の理由は、「身体能力はあればいいけど、それよりも練習。失敗しても繰り返すこと」と言い切った。一般に「日本人内野手はメジャーで苦労する」と言われ、その要因は「身体能力の差」にあると思われている。アジア系選手、ラテン系選手、白人選手、黒人選手。確かに、人種によって身体能力の差や動きの得手不得手はあって当然だ。だが、シモンズの言葉に大きなヒントが隠されているとすれば、「身体能力の差」という先入観に囚われないことが可能性の広がりにつながるのかもしれない。(佐藤直子 / Naoko Sato)