1軍3番手捕手の最有力候補も、2月20日に左肩を負傷 その悔しさは計り知れない。大きなチャンスを目の前にして降りかかった…

1軍3番手捕手の最有力候補も、2月20日に左肩を負傷

 その悔しさは計り知れない。大きなチャンスを目の前にして降りかかった故障の悪夢。失意のままに、宮崎で行われていた春季キャンプ地を後にする21歳がいた。

 ソフトバンクの栗原陵矢捕手。キャンプ中に左肩を脱臼し、離脱。一足先にキャンプを終えて福岡へと戻るリハビリ組の中に、その姿はあった。

 2018年、栗原にとっては千載一遇のチャンスをものにするため臨んだキャンプだった。オフに山下斐紹捕手がトレードで楽天へ移籍し、鶴岡慎也捕手がFAで古巣の日本ハムへと復帰した。先輩捕手2人がチームから去り、必然的に1軍の3番手捕手の座が目の前へと転がり込んできた。

 もちろん他の若手との競争はあったが、ライバルとなるのは2年目の九鬼隆平捕手や3年目の谷川原健太捕手ら。2軍での実績は圧倒的に栗原に分があり、昨季は1軍デビューも果たした。間違いなく、その座に最も近いところにいた。高谷裕亮捕手が右肘関節炎で離脱したこともあり、2番手捕手にも手が届く…はずだった。

左肩関節前方脱臼、手術すれば全治6か月、保存療法なら全治3か月…

 それが、2月20日に暗転した。B組の練習試合JX-ENEOS戦後に行われていた特守の最中に、左肩を負傷。突きつけられた診断結果は「左肩関節前方脱臼」。手術をすれば、全治まで6か月ほど。再発のリスクが残る保存療法だと復帰まで3か月かかるという、どちらを決断するにしろ開幕までの復帰はほぼ不可能だった。

 負傷から6日経った26日、栗原は他のリハビリ組の選手たちと一足早くキャンプ地を離れた。「落ち込むところもありますし、不甲斐なさもありますけど…。みんながプレーしているところを見ていると、モヤモヤとした気持ちにはなりますけどね…」と話す表情には悔しさが滲む。患部の左肩を固定したまま、キャンプ地を離れるバスに乗り込んだ。

 ただ、起きてしまったことは取り返せない。過去には戻れない。栗原も必死に前を向こうとしている。「今はとにかく治すことと、今の自分よりもレベルアップした姿で帰ってくることを意識してやっていこうと思っています。出来ることをやっていきます」。落ち込む心を奮い立たせるように、己に言い聞かせるように語った。

 高谷裕亮捕手も右肘の関節炎で離脱しており、チームは“捕手難”に直面している。チームにとっても痛いが、最も辛いのは負傷した選手たちだ。今の自分よりもレベルアップした姿を――。その言葉を信じ、より一層逞しくなった姿で帰ってくることを期待して待ちたい。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)