競泳の池江璃花子選手(ルネサンス亀戸)が2018年も次々と日本新記録を塗り替えています。世界水泳や夏季五輪といったビッグイベントでしか競泳を見たことがない人でも、ニュースなどで池江選手の名前を見聞きする機会はあるのではないでしょうか。先日も…
競泳の池江璃花子選手(ルネサンス亀戸)が2018年も次々と日本新記録を塗り替えています。世界水泳や夏季五輪といったビッグイベントでしか競泳を見たことがない人でも、ニュースなどで池江選手の名前を見聞きする機会はあるのではないでしょうか。
先日も第34回コナミオープン(東京辰巳国際水泳場、2月17日・18日開催)で二つの日本新記録を樹立した池江選手が水泳に出会ったのは3歳10カ月のころ。そこから水泳一筋、5歳で自由形・平泳ぎ・背泳ぎ・バタフライを泳げるように。メキメキと頭角を現すとJOCジュニアオリンピックカップなどで成績を残すようになりました。
2016年、高校1年生でリオデジャネイロ五輪の競泳日本代表に選出され、日本人選手最多となる7種目に出場します。それまでも世界ジュニア水泳など国際大会の優勝は経験していましたが、初めての五輪で最高位は100mバタフライの5位。自己ベストを叩き出すもメダルに手は届きませんでした。
身長は171cmの池江選手。両腕を横に広げた幅は身長より15cmほど長いそうで、腕のリーチが長いことはタッチの差で勝敗が決まることも多い競泳では有利になります。一方で腕の長さから普段の服選びに悩むこともあるそうですが、まだ成長期の高校生ということもあり身長はもう少し伸びることを期待しているのだとか。
コナミオープンに出場した池江璃花子選手
50m~200mで競う自由形とバタフライを得意としていますが、今年のコナミオープンでは400m自由形や100m背泳ぎにも出場しています。400m自由形は高校新記録で優勝。100m背泳ぎは予選のみ参加して3位でしたが、背泳ぎでリオデジャネイロ五輪に出場している予選1位通過の酒井夏海選手(スウィン南越谷)から遅れることわずか0秒36。池江選手はなんでも速いことがうかがえます。
400m自由形については「今の体力的には全力を尽くしたつもり。400mの練習はまったくしていなかったので、もう少し400mの泳ぎ方をわかってくればタイムが出てくるのかな」と話していますが、日本新記録は今のところ狙っていないそう。
今は2020年東京五輪に向けてバタフライ、自由形の短距離を強化期間と位置付け、その一環で他種目にもエントリーしているそうです。挑戦することでプラスになることも多く、「レースでチャレンジすることでいろんな面で自信がついてくる」のだとか。400m自由形をこなすことで、短距離のバタフライ、自由形の後半にその成果が活きてくるのです。
コナミオープン2日目で日本新記録を樹立した100m自由形の中村克選手(イトマン東進)と女子200m自由形の池江選手
挑戦といえば、昨年のコナミオープンでは50m自由形決勝を途中で息継ぎをしないノーブレスで泳ぎ切って日本新記録を樹立。この時は事前にノーブレスで泳ぐことを考えていなかったのにも関わらず、「泳ぎの感覚が良かった。ここで呼吸をしたら多分抵抗になるだろうなというのを泳ぎながら考えられた」と挑戦した結果が記録に結びついています。
でも50mを息継ぎしないで泳ぐなんでものすごい肺活量の持ち主なのかと思いきや、「吸うやつはまったく弱くて、吐くやつはまあまあ」といたって普通と笑っていました。リオデジャネイロ五輪出場も決まっていない2年前にインタビューした時も「空いた時間は録画してたテレビを観たり、あとは携帯いじったり」だったり、スーパーで手軽に買えるチョコレートが好きなど、競泳から離れると普通の女子中学生(当時3年生)と変わらない姿を見せてくれました。
ですが競泳日本代表を担うひとりとしての意識を高く持ち、海外遠征は「世界のトップ選手と一緒に練習することは自分に自信がつくことばかり」と積極的に参加。現在はコナミオープン直後に向かったメキシコでトレーニング中です。
海外選手と泳ぐと「みんな同じ人間なんだけど、なんでここまで速いんだろうと思うこともある」と力の差を感じていますが、「練習で勝ったら自信につながるし、仲間意識が芽生えたことで少しの不安も解消できてきたかな。それはこれからの世界大会に生きてくる」と将来を見据えています。
ポジティブに考えることが結果につながっている要因と池江選手は自己分析します。「一番大きいのは気持ちの面」として、4月の日本選手権でも日本新記録を狙います。
「バタフライ、自由形の100mに関しては記録を更新できる自信があるので、その自信を落とさずに自分の想像を超えるレースをしたい。自分の想像を超えるタイムを出して、いい夏を迎えられたらいいな」
日本代表の活躍に湧いた平昌五輪では、池江選手もテレビ越しに勇気をもらっています。2年後の東京五輪では、今度は彼女が冬季種目の選手たちにパワーを与える存在になるのではないでしょうか。
「世界水泳やオリンピックなど大きな試合は経験してきているので、そろそろ世界の(トップレベルの)選手に勝ちたい」
池江選手のターゲットはもちろん世界。日本新記録を重ねるその先に、日本競泳界の新たな歴史が待っています。
第34回コナミオープンで女子400m自由形予選を泳ぐ池江璃花子(2018年2月18日)撮影:五味渕秀行
第34回コナミオープンに出場した中村克(左)と池江璃花子(2018年2月18日)撮影:五味渕秀行