2月24日、スーパーラグビー参入3年目のサンウルブズは東京・秩父宮ラグビー場で開幕戦を迎え、オーストラリアの強豪ブランビーズと対戦した。前半は19―15でリードしたものの、最終的には25-32の逆転負け。それでも7点差以内の敗戦でオーストラリア勢から初めて勝ち点1を獲得し、今後の躍進に期待の持てる内容だった。



パドルの中央で全員に指示を出す、ひときわ小柄な流大

 開幕戦でゲームをコントロールするSH(スクラムハーフ)の先発に名を連ねたのは、国際経験の豊富な「日本人初のスーパーラグビープレーヤー」田中史朗ではなかった。サンウルブズの「9番」を背負ったのは、身長165cmの小柄な新キャプテン。スーパーラグビー経験ゼロながらキャプテンのひとりに抜擢された流大(ながれ・ゆたか)だった。

 どこからでも攻めていく「アタッキングマインドを持って臨んだ」という流は、初めてのスーパーラグビーの試合でも持ち味であるテンポの速いボールさばきを披露。2シーズン連続2冠に導いたサントリーサンゴリアスでのプレーと同じように、サンウルブズでも巧みに攻撃をリードして前半の3トライに貢献した。

「前半はすごくいい形で入れて、(19-15で)リードして折り返すことができた。どこからでも攻めようという意志があってモールからトライも獲れたし、スクラムから2次、3次攻撃でトライを獲れたシーンもあった。準備したプレーはすごくよかった」

 ただし、流は前半最後にノックオンを犯し、後半早々にも自陣ゴール前で味方がボールを奪った直後にパスミス、そのボールをそのままトライされて逆転を許してしまう。

「後半最初に僕のミスでリードされて、そのままリードできずに終わったので、反省が残ります」

 この失トライはパスの受け手とのコミュニケーション不足で生じたものであり、流ひとりの責任とは言い切れないが、試合後には肩を落としていた。

 昨年はサンウルブズに1週間の限定招集で出番がなかったこと、そして今回がスーパーラグビーのデビュー戦だったことを考慮すると、流は十分に及第点のパフォーマンスを見せたと言えよう。キャプテンとして、しっかりとチームを引っ張っていた。

 流は小学校2年のとき、福岡の「りんどうヤングラガーズ」でラグビーを始めた。高校は強豪・東福岡高への進学も考えたが、仲のいい先輩がいたことと、高校の監督に「将来の日本代表にする!」と熱心に勧誘されたことで、熊本の荒尾高(現・岱志高/たいし)に進学。3年次には主将を務め、チームを花園へと導いた。

 大学は帝京大に進学し、ここでもキャプテンとして大学選手権6連覇に大きく貢献。そして2015年、周囲からの大きな期待を受けてサントリーに入部する。だが、入団初年度はサントリーが過去最低の9位に沈み、失意の社会人スタートとなった。

 転機は2シーズン目にやってくる。日本代表コーチなどを歴任した沢木敬介氏がサントリーの監督として復帰。「スペースを見極める能力があるし、自分の意見を言えてハードトレーニングもできる」と、ルーキーイヤーは1試合しか先発しなかった2年目の流をキャプテンに据えたのだ。

 流は沢木監督とのコンビによって、さらなる成長を遂げる。サントリーを強豪チームへと蘇らせ、2016年度のトップリーグと日本選手権を制して2冠を達成。すると、ラグビー日本代表のジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)から声がかかり、NDS(日本代表候補)合宿に招集されて、代表未経験ながらアジア戦を戦うキャプテンにも指名された。

 試合はもちろんのこと、練習でも常に率先して100%で取り組み、誰ともで積極的にコミュニケーションを取る――。ジョセフHCも流の人間性を、こう高く評価する。流の士気を高める行動はチームの結果にも結びつき、日本代表に定着した2017年はサントリーをふたたび2冠へと導いた。

 2018年、ジョセフHCがサンウルブズの指揮官も兼任するにあたり、昨年からゲームキャプテンを務めているNo.8(ナンバーエイト)ヴィリー・ブリッツに加え、共同キャプテンとしてスーパーラグビー未経験の流に白羽の矢を立てた。

「流は競争心の高い選手で、素早くて、賢くて、いいリーダー。キャプテンとしての任務を果たしていることは(サントリーや日本代表で)立証しているので、自然と彼を選んだ」

 ジョセフHCの選出理由を聞き、大きな任務を与えられた流は喜んだ。

「(キャプテンに選ばれて)ビックリしました。アジアの試合や昨年11月の日本代表の遠征でリーダーをやり、そのときのリーダーシップを見て選んだと言われました。自分では普通のことをやってきたつもりでしたが、そのあたりが評価されたことはうれしいですね」

 1月28日のサンウルブズの始動では、「スーパーラグビーで勝つためにはフィジカルとメンタルが欠かせない」として、ジョセフHCは1日4部練習というハードワークを課した。流は7ヵ国からなる計46人もの多国籍軍団の先頭に立ち、そして開幕戦の「9番」を実力で勝ち取った。

 デビュー戦を終えて、ゲームキャプテンを務めた流はこう語る。

「これからもスーパーラグビーは続くので、(善戦しながらも敗戦した)経験をプラスに捉えて、プレッシャーを感じられたのが収穫。『甘くない』ということを今日学べたので、次に活かしたいなと思います」

「サンウルブズと日本代表は別のチーム」とは言うが、コーチ陣はほぼ同じであり、メンバーの大半が日本代表であるということも十分に承知している。その先に見えるものはもちろん、2019年のラグビーワールドカップだ。

「スーパーラグビーで経験を積んで、まずは ジョセフHCらコーチ陣の信頼を勝ち取ること。そして、そこでのスキルアップが(日本代表に)つながると思ってやっています」

 スーパーラグビーで結果を残すことが、日本代表の「9番」の道へと続いていく。