これぞ団体戦の醍醐味。そんなチームワークあふれる試合の立役者となったのは日本男子代表チームの兄貴分、上田仁(協和発酵キリン)だ。「チームワールドカップ2018」<2月22〜25日/イギリス・ロンドン>は大会3日目の24日、男女とも決勝トーナメントの準決勝を行い、日本の男子は韓国と対戦。日本と同じく、やはりダブルスの上手い相手チームからまず丹羽孝希(スヴェンソン)/上田仁(協和発酵キリン)ペアが1勝を挙げ、続く2番手の張本智和(JOCエリートアカデミー)もシングルスで勝利。そのまま波に乗っていくかと思われたが、3、4番手の丹羽、張本が相次いでシングルスを落とし、勝負は5番手の上田対チョンサンウンに回ってきた。



 大会初日に行われたグループリーグ2試合目のイングランド戦からダブルス、シングルスともに起用され全勝していた上田は、エースの張本の調子が上がらず取りこぼしの続く日本男子チームにあって、今大会のキーマンになっている。シニアになってから世界大会の団体戦代表に選ばれたのはこれが初めて。もともとダブルスの上手さに定評があり、特に2017年シーズンはワールドツアー・中国、ブルガリア、オーストラリアオープンで3勝するなど実績を挙げていたが、シングルスでのここまでの活躍はチームにとって嬉しい誤算と言えるだろう。

 現在26歳。今回のチームの中で最年長ということもあるが、冷静で落ち着いた物腰からも「頼れる兄貴」といった風情だ。

 その上田とチョンサンウンとの対決はフルゲームにもつれ込む、まさに死闘となった。その激しさは国際大会で百戦錬磨の指揮官・日本男子代表チームの倉嶋洋介監督が、「こんな試合は数年に1回、あるかないか」と感嘆するほど。最後まで一進一退の攻防が続き、決着は16-14でようやく上田に軍配が上がるという大接戦となった。

上田仁 Photo:Itaru Chiba


 1点が明暗を分けた名勝負の勝因は何だったのか? 試合直後、「勝ててよかったとか、ほっとしているとか、そういう感情がわからないくらい興奮している」と息を弾ませながら上田はこう語った。

「相手選手も自分ももう後がない中で緊張していた。序盤はお互いミスをしないようにというプレーが多かったが、最後は自分の方が思い切って攻め込めたのが相手を上回れた要因だと思う」

「第5ゲームの6-10でチョンサンウン選手がマッチポイントを握った時、勝ちを意識して少し気が緩んだというか、何かそういうものが見えたことで、自分は思い切って攻めることができて上手くいった。あの場面ではチームの仲間もそうだし、この大会に臨むにあたって一緒に事前合宿をしてきたナショナルチームのメンバー、自分やチームを支えてくれるたくさんの人の思いを胸に最後まで踏ん張ることができた」

「自分は国際大会での団体戦は慣れていないが、国内では社会人チームの団体戦を数多くやっているので、団体戦の準備の仕方はわかっているつもり。団体戦というのは個人戦で勝てる選手が必ずしも勝てるわけではなく、4番手の張本が勝とうが負けようが、彼の試合は一度も見ずに自分の出番の準備をしていた。一方、相手選手は張本が負けそうになってから動き出した感じだったので、そういうところも最後には差となって生きたのかなと思う」



「遅咲き」と言うにはまだ若く実績もある上田だが、丹羽や張本といった若い選手が脚光を浴びる一方で、ようやく日の目を見た感はある。また今大会は、いつもならば団体戦の大黒柱となる水谷隼(木下グループ)が不在の中で、最年長の自分がチームのまとめ役となり、チームワールドカップという大舞台で日本男子初となる決勝進出を決められたことも大きな意味を持つ。

「日本のメダルの色がかかった大事な試合で自分が勝てたというのは、今後の卓球人生においても大きなターニングポイントになってくると思う」と上田。待ち受ける世界王者・中国との大一番にも万全の態勢が整った。


(文=高樹ミナ)