2月23日に開幕するJ1リーグ。photo by Sho Tamura/AFLO SPORT J1リーグ2018年シ…



2月23日に開幕するJ1リーグ。photo by Sho Tamura/AFLO SPORT

 J1リーグ2018年シーズンがまもなく開幕する。昨季は、熾烈な争いを制して川崎フロンターレが初の王者に輝いたが、今季も激戦は必至だ。そのフロンターレをはじめ、昨季二冠のセレッソ大阪、アジア王者に輝いた浦和レッズ、そして充実した戦力がそろう鹿島アントラーズなどを中心に、正直どこが優勝してもおかしくない。

 そもそも、昨季のフロンターレの優勝も予想外のことだった。実際に開幕前にフロンターレの優勝を予想した専門家はほとんどいなかった。攻撃サッカーを築いた風間八宏監督がチームを離れたことで、多くの解説者や識者がことごとくその評価を落としたのだ。本誌でも5人の専門家に全順位を予想してもらったが、フロンターレは3位というのが最高の評価で、以下、4位、6位、8位、8位という評価にとどまった。

 まったく予想がつかないJリーグの行方。それは、今季も変わりないだろう。

 はたして、意外なチームの台頭はあるのか。あるいは、思わぬチームの低迷はあるのか。今年も5人の識者に、頂点に立つチーム、J2降格危機に直面する3チームを含め、J1全18チームの順位を予想してもらった――。

全体の勢力図は昨季と変化なし
鹿島&川崎の「2強」に迫るのは浦和か

杉山茂樹氏(スポーツライター)

1位 鹿島アントラーズ
2位 川崎フロンターレ
3位 浦和レッズ
4位 柏レイソル
5位 セレッソ大阪
6位 ジュビロ磐田
7位 横浜F・マリノス
8位 サガン鳥栖
9位 FC東京
10位 ベガルタ仙台
11位 名古屋グランパス
12位 ヴィッセル神戸
13位 ガンバ大阪
14位 清水エスパルス
15位 北海道コンサドーレ札幌
16位 湘南ベルマーレ
17位 V・ファーレン長崎
18位 サンフレッチェ広島

 昨季と特段大きな変化を見せたチームはない。リーグ全体の勢力図にも大きな変化は起きないとみる。下位からまくってきそうなチームも、上位から大きく順位を下げそうなチームも見当たらない。シーズン前の動向を見る限り。

 優勝争いも同じ。川崎と鹿島が一歩抜けている。

 東京ヴェルディから新加入した安西幸輝が左SBにハマりそうなこと。19歳のFW安部裕葵がブレイクの予感を抱かせること。さらに選手層の厚さ、それに伴う安定感を考えると、鹿島がわずかに有利な気がする。

 両者を追うのは柏、C大阪、浦和。潜在能力がストレートに反映されれば、浦和が3番手候補だが。

 昨季6位に躍進した磐田も反動なく、上位を維持しそう。今季、名古屋から加わったMF田口泰士。昨季後半、チームに加わったMF山田大記。このふたりの準代表級が、チームのレベルを押し上げるハズ。

 長谷川健太新監督を迎えた東京は定位置(中位)に復帰か。昇格の名古屋も中位までは狙える。新監督にレヴィー・クルピを迎えたG大阪は、右肩下がりにストップはかからないのではないか。

 昨季クラブ史上年間順位最高位タイ(11位)を記録した札幌は、磐田とは反対に、反動で順位を落としそう。ミハイロ・ペトロヴィッチ新監督に、上を狙う勢いはないと見る。

 降格争いは、その札幌を含む、清水、湘南、長崎、広島の5チーム。昨季途中、広島の監督に就任し、チームを降格圏から脱出させたヤン・ヨンソン監督。広島はなぜか解任し、清水はその彼を獲得した。よい買い物をしたと思われる清水。判断を誤ったと思われる広島。ヨンソン監督を巡って明暗は分かれそうだ。 

V候補は勝負強さが格段に増したC大阪
対抗馬はACLを戦わない磐田か

小宮良之氏(スポーツライター)

1位 セレッソ大阪
2位 ジュビロ磐田
3位 浦和レッズ
4位 川崎フロンターレ
5位 鹿島アントラーズ
6位 柏レイソル
7位 名古屋グランパス
8位 FC東京
9位 ガンバ大阪
10位 サガン鳥栖
11位 北海道コンサドーレ札幌
12位 横浜F・マリノス
13位 サンフレッチェ広島
14位 ベガルタ仙台
15位 湘南ベルマーレ
16位 ヴィッセル神戸
17位 清水エスパルス
18位 V・ファーレン長崎

「群雄割拠」。それがJリーグの現状で、絶対的強者は存在しない。必然的に順位も読めず、力はあっても、しくじりでバランスを崩す、というチームもあるはずだ。

 王者・川崎はFW大久保嘉人(東京→)、MF齋藤学(横浜FM→)の補強で選手層は厚みを増したが、(ゼロックス・スーパーカップでもそうだったが)MF中村憲剛、MF大島僚太が万全でないと攻撃力は半減か。

 有力視されている鹿島、浦和は安定した力を発揮できるはずだが、突っ走る要素は乏しい。名古屋は風間八宏監督が率い、元ブラジル代表FWジョーの爆発が期待されるも、安定感に欠ける。

 東京、G大阪、札幌は、それぞれ監督交代で”特色”を見せてくれるのではないか。その結果、例えば東京のMF橋本拳人などは成長が望めそう。ただし、チーム単位での成長については、未知数だ。

 一方で、広島は危うさはあっても、MF川辺駿(磐田→)、FW工藤壮人の活躍次第で、上位もあり得る。「上位予想チームが2桁順位に沈んでも、その逆でも不思議はない」。それが実状だ。

 あえて優勝候補を挙げるなら、チームデザインが一番明瞭になったC大阪か。尹晶煥(ユン・ジョンファン)監督が率い、攻守の練度が格段に向上。ルヴァンカップ、天皇杯、ゼロックス・スーパーカップを制し、勝負強さも確実に増した。FWヤン・ドンヒョン(浦項スティーラース/韓国)など補強も充実した。

 対抗馬としては、AFCチャンピオンズリーグのない磐田。MF中村俊輔、MF田口泰士(名古屋→)、MF山田大記が高い次元で融合するか。伏兵の柏は、MF大谷秀和、FW江坂任(大宮アルディージャ→)のラインは可能性を感じさせるが、果たしてどこまで……。

 いよいよ幕を開けるW杯シーズン。その刺激を受け、新鋭の台頭にも期待したい。

二冠セレッソが初のリーグ制覇か
一方、横浜FMは残留争いの予感……

原山裕平氏(サッカーライター)

1位 セレッソ大阪
2位 柏レイソル 
3位 川崎フロンターレ
4位 鹿島アントラーズ
5位 ジュビロ磐田 
6位 浦和レッズ 
7位 サンフレッチェ広島 
8位 ヴィッセル神戸 
9位 ガンバ大阪 
10位 FC東京 
11位 ベガルタ仙台 
12位 湘南ベルマーレ
13位 名古屋グランパス
14位 サガン鳥栖
15位 北海道コンサドーレ札幌 
16位 横浜F・マリノス 
17位 清水エスパルス 
18位 V・ファーレン長崎

 昨季、広島を優勝と予想したものの、結果はかろうじて降格を免れる15位と散々なものに……。「予想なんて当たらないから予想なのだ」と開き直ってはみたものの、15年もJリーグを取材してきた者の見解としてはあまりにもお粗末であり、自らの眼力のなさに打ちひしがれた2017年だった。

 もっとも、どこが優勝するのかわからないのがJリーグの醍醐味でもある。この10年で初優勝チームが4つも生まれるなんて、他国のリーグではちょっと考えられないことだ。予想のつかないドラマが待ち受けているのだから、結末は誰も知り得ない。まさに神のみぞ知る、である。つまり、「今年も自信はありません」ということです……。

 それでも、リベンジを期して臨んだ今季の予想のキーワードは「継続力」と「守備力」。そのふたつを踏まえた結果、昨季の上位陣と変わらない顔ぶれが順位表の上に並んだ。

 最上位をC大阪としたのは、戦力面での上積みが最も感じられたから。ルヴァンカップと天皇杯の二冠を成し遂げ、タイトルホルダーとなった自信も大きいだろう。昨年の川崎Fに続いて初優勝チームが誕生するのではないかと考える。

 判断が難しいのは新監督が就任した6チーム。躍進か、低迷か。どちらに転ぶか読めないなか、唯一、Jで初采配となるアンジェ・ポステコグルー監督を迎えた横浜FMは、指揮官の手腕が不透明なのに加え、MF齋藤学とMFマルティノスの両翼を失ったことも含めると、最も失速の危険性をはらんでいる。出足につまずくようだと、残留争いを強いられることになるかもしれない。

ダークホースは戦力充実の名古屋
クルピ監督を迎えたG大阪も浮上の予感

中山 淳氏(サッカージャーナリスト)

1位 鹿島アントラーズ
2位 名古屋グランパス
3位 ガンバ大阪
4位 FC東京
5位 川崎フロンターレ
6位 柏レイソル
7位 セレッソ大阪
8位 横浜F・マリノス
9位 サガン鳥栖
10位 ジュビロ磐田
11位 清水エスパルス
12位 浦和レッズ
13位 ヴィッセル神戸
14位 ベガルタ仙台
15位 サンフレッチェ広島
16位 湘南ベルマーレ
17位 北海道コンサドーレ札幌
18位 V・ファーレン長崎

 鹿島は、DF内田篤人(ウニオン・ベルリン/ドイツ→)以外に目立った補強はないものの、安定感はリーグ随一。リーグ戦とAFCチャンピオンズリーグを並行して戦う経験値も備わっており、現有戦力でも十分に優勝を狙えるはず。代表選手が多くないという点も、W杯イヤーのシーズンを戦ううえで有利に働くだろう。

 一方、ダークホースは昇格組の名古屋。CFに元ブラジル代表のジョー(コリンチャンス/ブラジル→)、GKにオーストラリア代表のランゲラック(レバンテ/スペイン→)と、大事なゴール前の仕事を担うポジションに強力な助っ人を加えたうえ、Jリーグ屈指の司令塔ガブリエル・シャビエルの存在が大きい。その他にも、風間八宏監督の攻撃サッカーを開花させるに十分な陣容がそろっており、今季の台風の目となりそうだ。

 また、昨季は実力を出し切れずに低迷したG大阪も、レヴィー・クルピ監督が就任したことが好材料。もともと選手のクオリティーではリーグ上位のレベルにあるだけに、選手を気持ちよくプレーさせることに長けている監督がチームを率いることで勢いも生まれるのではないか。

 J2降格候補では、戦力的に初のJ1に挑む長崎が濃厚。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督を迎えた札幌も、チーム戦術がドラスティックに変化する中で結果を残すことは難しく、降格の可能性が高い。

 プレーオフ枠は、仙台、広島、湘南の争いとなりそうだが、粘り強く戦えるという点で仙台と広島がやや有利。湘南はプレーオフ経由での残留か。

 昨季は厳しい戦いを強いられた清水は、ヤン・ヨンソン監督の就任が好材料だ。

伸びしろあるC大阪を「◎」に抜擢
一発あるなら、評価を落とした浦和

浅田真樹氏(スポーツライター)

1位 セレッソ大阪
2位 鹿島アントラーズ
3位 ジュビロ磐田
4位 川崎フロンターレ
5位 浦和レッズ
6位 柏レイソル
7位 サガン鳥栖
8位 横浜F・マリノス
9位 ガンバ大阪
10位 ヴィッセル神戸
11位 FC東京
12位 サンフレッチェ広島
13位 名古屋グランパス
14位 湘南ベルマーレ
15位 V・ファーレン長崎
16位 北海道コンサドーレ札幌
17位 ベガルタ仙台
18位 清水エスパルス

 単純に考えれば、優勝争いは昨季の上位勢が中心。なかでも、川崎、鹿島が”1、2番人気”だろう。だが、昨季優勝の川崎にしても、鹿島のもたつきに助けられた印象が強く、優勝し損ねた鹿島はもちろん、絶対の信頼は置けない。

 そこで、代わって最上位に推したのがC大阪。過去、能力の高い選手を擁しながら、なかなか結果が出なかったが、尹晶煥(ユン・ジョンファン)監督のもと、安定してハードワークできるチームになった。ある程度完成された感のある川崎、鹿島に比べ、伸びしろという点でも魅力がある。ただし、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)であまり勝ち上がってしまうと、J1が苦しくなる。川崎、鹿島、柏も含め、ACLの勝ち上がりがJ1にも影響するはずだ。

“ACL不出場組”で面白そうなのは磐田。昨季6位はたまたまではなく、名波浩監督就任後の段階的な積み上げを感じさせる。優勝はともかく、ACL圏内は手が届く目標だろう。

 評価が難しいのは浦和だ。昨季はACL制覇の一方で、J1は7位止まり。リーグ戦終盤は、結果も内容も芳しくなかった。だが、選手個々の能力ではJ1上位は間違いなく、いわば、”前走惨敗で人気を落とした実力馬”。安易に見限れず、ACLのない今季、あっさり優勝をさらってしまう展開もありうる。

 優勝争い同様、残留争いも混戦。昇格組の湘南、長崎、名古屋はそれぞれ特徴が異なり、J1でどんな戦いを見せてくれるか楽しみだ。どこが昇格1年目で躍進を遂げても不思議はない。昨季に続き、昇格組すべてが残留する可能性も十分にある。

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