2018年、私のイチオシ「Jリーガー」(4)杉岡大暉(湘南ベルマーレ/DF) 世界中でさまざまな国際大会や国内リーグ…
2018年、私のイチオシ「Jリーガー」(4)
杉岡大暉(湘南ベルマーレ/DF)
世界中でさまざまな国際大会や国内リーグを取材していて気づくのは、左サイドバックを右利きの選手が務めているチームは、ほとんどないということだ。正確に数えたわけではないが、1割あるかないかだろう。
フォーメーションにもよるが、サッカーのポジションのなかで最も左利きが多いのは、左サイドバックで間違いないだろう。
基本的に体の左側にボールを置くため、ピッチの横幅いっぱいにボールを動かせるし、ピッチ全体を視野に入れられる体の向きも取りやすい。右利きと違い、いちいちキックのときに右に切り返す必要もないから、スムーズに縦へボールを持ち出しやすい。
同じ左サイドのポジションでも、ウイングなら、敵陣で内側にカットインしていきやすい右利きを置くことの有効性もある。だが、サイドバックの場合は、攻撃参加するにしても中に切れ込むというよりは、タッチライン際を攻め上がってクロスを上げるケースがほとんどのため、やはり左利きのほうが有利というわけだ。
ところが、日本でサッカーを見ていると、レベルを問わず、右利きの選手が左サイドバックを務めているチームが意外なほど多い。中高生年代ならともかく、Jリーグでも決して珍しくはないのだから、”世界水準”とはかけ離れた状況にある。
日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督も左利きの選手が持つ希少性と重要性をしばしば口にするが、言い換えれば、それだけ日本に左利きの人材が少ないということだろう。
そんな”レフティー不足”の現状にあって注目したいのが、今季J1復帰を果たした湘南ベルマーレのDF杉岡大暉である。

J1の舞台で、さらなる活躍が期待される杉岡大暉
1998年生まれの杉岡は、高校サッカーの名門・市立船橋高を卒業後、昨季湘南入り。高卒ルーキーにしてJ2開幕戦で先発フル出場すると、続く第2節には、DFながら早くも初ゴールを決める鮮烈なデビューを果たした。
結局、昨季J2リーグ全42試合のうち37試合に出場。出場時間3251分は、フィールドプレーヤーとしてはチーム2番目の記録を残した。
また、U-20日本代表としても、昨季は韓国で開かれたU-20W杯に出場。日本の全4試合のうち2試合にフル出場し、国際経験という点でも充実したシーズンを送っている。
杉岡の魅力は、まずは言うまでもなくレフティーであることだが、身長182cmと体格に恵まれたDFであるうえに、プレーに機動力があるということだ。
サイズから受ける印象どおり、DFの本分である守備力は高い。高校時代はセンターバックだったのだから、当然と言えば当然だ。湘南に入ってからは曺貴裁(チョウ・キジェ)監督に鍛えられ、攻守の切り替えも強く意識づけされており、球際でもしっかりと戦える。
とはいえ、体躯を生かし、最終ラインでドッシリと構えるというのではなく、左サイドから積極的に攻め上がる。敵陣で見せるドリブル突破には、意外なほどにスピードとキレがあり、大型DFではあるものの、非常に機動性の高い選手なのである。
昨季の湘南でも、開幕当初は3-4-3の3バックの左で起用されていたが、次第に一列前の「4」の左、すなわち、左アウトサイドMFを主戦場とするようになっていった。U-20W杯では、すべて4-4-2の左サイドバックとして出場している。
4バックに当てはめるなら、センターバックでの起用も可能だろうが、せっかくのレフティーということもあり、やはり左サイドバックで活躍してほしい逸材だ。
19歳とあって、ポテンシャルをまだまだ生かし切れていない印象も受ける。昨季J2でも、試合ごとの出来には波があった。J1でシーズンを通して活躍しようと思えば、ガムシャラにプレーするだけなく、駆け引きを覚える必要もあるだろう。
だが、裏を返せば、それだけ伸びしろを残しているということである。
もちろん、杉岡がJ1でプレーするためには、まずはチーム内の競争を勝ち抜かなければならない。
昨季は主力として、チーム2番目の出場時間を記録したとはいえ、今季の湘南は左DFに、2013年まで2シーズン湘南でプレーしていた大野和成が、アルビレックス新潟から移籍再加入。左アウトサイドMFには、右ひざの重傷で昨季をほぼ棒に振ったMF高山薫が復帰してきた。まずはJ1経験もある彼らとの争いに勝利しなければならない。
しかし、今年9月に20歳の誕生日を迎える杉岡は、よくも悪くも粗削り。危うさを抱える一方で、従来の日本人サイドバックのイメージ(小柄だが、スピードとスタミナがある、というような)とは一線を画す、スケールの大きな選手になれる可能性を秘めている。
昨季のU-20W杯で、最終的に準優勝したベネズエラの強力アタッカー陣と相対した試合を見れば、杉岡がJ1でも十分に通用することは間違いない。少々気は早いが、その活躍次第では、レフティー探しに熱心なハリルホジッチ監督の目に留まる可能性もないとは言えまい。
スケール感たっぷりの大型サイドバックが、初めてのJ1の舞台でどんな活躍を見せてくれるのか。緑と青の背番号29に注目したい。