不本意だった17年を払拭するために 毎年、周囲から大きな期待を寄せられつつ応えられないでいる。広島カープの福井優也である…

不本意だった17年を払拭するために

 毎年、周囲から大きな期待を寄せられつつ応えられないでいる。広島カープの福井優也である。もがき続けている崖っぷちの右腕は、本気で今年にかけている。

 例年のように満面の笑みで会えると思っていた。しかし様子が異なった。カープ2軍キャンプが行われている日南総合グラウンドの東光寺球場、福井の姿が見当たらない。おかしい、2軍スタートだったはずなのだが。しばらくするとその謎が解けた。なんと今キャンプ、福井は頭を丸めて臨んでいるのだ。

「気合い入ってますよ。坊主なんて何年ぶりだろう」

 30歳を迎える2018年、いよいよもって危機感の高まりを感じさせる。

「でも、頭を丸めたことで『また、何かやらかしたのか?』って言う人も多いんですよ。なんでこんな誤解されやすいんですかね(苦笑)」

 こういった部分はまったく変わらなくて少し安心した。

必要とされていないんじゃないか―、やり切れない気持ちに苛まれた2017年

 17年は実に不本意なシーズンだった。4月、得意とする巨人戦では幸先良く勝利したものの、好不調の波が激しくローテーションに定着できず。満を持して挑んだ8月の巨人戦では5回途中まで無失点で抑えるも、1球のボール判定で崩れた。試合後、審判への不満とも取られかねない書き込みをSNSでおこない、ネット上が炎上してしまった。

「勘違いを生みかねないことをやってしまった僕の責任ですけどね。でもそれだけあの試合にはかけていた。もちろん他の選手もそうだと思うけど……。何かに当たらないとやっていられないような気持ちだったのも事実です。でも軽率だったと心から反省しています」

 結果、シーズン1勝3敗という目に余る成績に終わった。レギュラーシーズン終了後、やりきれない気持ちを隠せない福井がいた。クライマックスシリーズ(CS)ファイナルが台風接近で中止になったその日、福井は広島市内の大野練習場にいた。勝ち進めば日本シリーズもある。多くの選手は宮崎フェニックスリーグへ参加し、課題を持ってプレーしている最中だった。 中には日本シリーズ用の秘密兵器として期待されている選手もいた。

「今後のこと何も言われていないんです。日本シリーズ登板があるかどうかもわからない。ここでの練習はあくまで調整のための調整ですからね。何のために練習しているのか、目標を定めるのさえも難しい」

 同じく大野にいたのは、ケガと大病からの復帰を目指す4番打者、鈴木誠也とベテラン赤松真人。鈴木は鋭い打球を打ち返し、赤松は楽しそうにボールを追いかけていた。モチベーションの違いは手に取るようにわかった。

「僕って必要とされていないんじゃないか。戦力構想にすら入っていないんじゃないか。そこまで考えてしまう。やっぱり投手って投げないと何の意味もないんでね。その場所があるのかさえわからないんですから……」

 室内練習場の屋根を叩く雨の音に消え入るような小さな声で語ってくれた。

胸に秘める強い決意、「チャンスが来たら絶対につかむ」

「結婚して何か変わればなって……。公式発表する前なんですけど、結婚することにしたんです。食事とかの生活面が安定するって言う人が多いじゃないですか。ともかく先も長くないような気もしてきたので、やれることは……、というのもあって」

 結婚は人生において最も大きなターニングポイントとも言える。もちろん素晴らしい伴侶と出会えたことが一番大きいだろう。だが「やれることは何でもやろう」という福井の気持ちもよくわかった。その後自身の背番号に合わせて11月11日に結婚をした。

 かつてのドラフト1位。 ルーキーイヤーの11年に8勝、15年には2桁まであと少しで手が届く9勝を挙げた。次期エースと常に期待されながらも7年の月日が流れた。

「たまに思いますよ、僕が左投手だったらどうだったんだろう? 下手投げや2段モーションの変則投手だったら? でもそんなこと言ってもしょうがないですからね。とにかくやれることをやる。今、投球フォームにも手応え感じつつあるので、それを固めてチャンスが来たら絶対につかむって」

 自分に素直で感情をそのまま出してしまうから誤解も生む。「福井は太陽というより不器用な月のようだ」と言った人がいた。確かにそういう部分も多い。損をしていることが多いのもよくわかる。

 しかしやはり福井は太陽だと思う。彼に最も似合うのは、結果を出した時に自信満々にみせる、あの太陽なような満面の笑顔なのだ。丸刈りのキレイな頭を見ながら、改めて感じさせてくれた。(山岡則夫 / Norio Yamaoka)

山岡則夫 プロフィール
 1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。Ballpark Time!オフィシャルページにて取材日記を定期的に更新中。