【柳田将洋が語るプロとして戦うドイツ 後編】インタビュー前編はこちら>> ドイツのブンデスリーガで活躍を続ける柳田将洋の胸には、いつも全日本への思いがある。 慶應義塾大学時代の2013年に全日本メンバーに登録されてから、今年で6年目。現…

【柳田将洋が語るプロとして戦うドイツ 後編】

インタビュー前編はこちら>>

 ドイツのブンデスリーガで活躍を続ける柳田将洋の胸には、いつも全日本への思いがある。

 慶應義塾大学時代の2013年に全日本メンバーに登録されてから、今年で6年目。現在イタリアのセリエAでプレーする石川祐希とともにチームをけん引してきたが、2016年のリオデジャネイロ五輪への出場を逃し、昨年のグラチャンバレーでは5戦全敗を喫するなど、たくさんの悔しさを味わってきた。

 世界の強豪国に勝つために、ドイツでどんなことを考えているのか。リーグ終盤を戦う柳田を直撃した。




昨年4月にプロに転向し、現在はドイツのブンデスリーガでプレーする柳田

――プロ転向1年目のシーズンも終盤に差しかかっています。残るリーグ戦をさらに充実させるために、何が必要だと考えていますか?

「ここまでプレーしてきて感じたのは、コンディショニングの調整が最も大事だということです。長くリーグ戦が続く中で、いかにベストなコンディションを維持するか。そこを意識しながら、しっかり準備をして試合に臨みたいです」

――昨年4月までプレーしていたVリーグとの環境の違いはどこにありますか?

「今の状況と比べると、古巣のサントリー(サンバーズ)のほうがバレーをする環境は整っていたと思います。その分、ブンデスリーガでは成績を下げることは許されません。プロの選手になって、『来季はどうなるかわからない』という状況に身を置いたから感じることですね」

――他にも「プロリーグならでは」と感じるところが多そうですね。試合前の選手入場の演出なども、すごく派手で観客を盛り上げようとしているのが伝わってきました。

「選手たちのモチベーションが上がるのはもちろん、観客の方々が楽しめるように工夫されているのはとてもいいことだと思います。ただバレーボールを見てもらうのではなく、さまざまな演出も楽しんでもらう。そういったエンターテインメント性がある点は、ドイツのほうが進んでいるかもしれません」

――サントリーのホームゲームでは、Vプレミアリーグ初のナイトゲームが開催され、会場で自社のビールを販売するといった試みも実施しているようです。

「日本では公共の体育館を使用するので難しいところはあるでしょうが、観客が楽しめる要素が多くなるのはいいですよね。飲食ができるようになるだけでも、会場は活気づくと思います。サントリーがそれを率先していろいろやってくれているのは嬉しいです」

――サントリーをはじめ、Vリーグの試合もチェックしていますか?

「全部の試合を動画で見ることはできませんが、もちろん結果は常にチェックしています。サントリーや他のチームの選手たちの中には、全日本のメンバー争いをする選手もいますから、『負けられない』という気持ちが湧いてきます」

――今年、各チームに内定した選手の多くが、早くも活躍していますね。

「サントリーでも大宅(真樹)選手や喜入(祥充)選手などが出てきていますね。若い選手がどんどんコートに立って日本バレー界の未来を切り開いてもらい、レベルを底上げしてもらいたいです」

――柳田選手個人の、2018年の目標は?

「2016年にも『結果』という目標を掲げましたが、プロ生活2年目に入る今年はさらに結果を求めたいです。全日本に関しても、代表メンバーに選ばれるようになってから約5年経ちましたが、まだ大きな結果を残すことができていないですからね。ドイツでの経験がどう生かせるのかはわかりませんが、リーグでやっていることが『全日本でも必ず生きてくる』と信じてこれからもプレーしていきます」

――全日本の練習とビュールの練習とでは、どこに違いがありますか?

「全日本の練習のほうがハードですね。今は試合が重なる時期ということもありますが、ビュールは練習時間が短いです。練習に対する意識も全日本のほうが高いかもしれません。短い時間の中で、アジリティを効率よく高めるにはどうすべきかを考えながら練習しています」

――過密な日程の中、オフはどんなことをして過ごしていますか?

「アウェーで試合した翌日は基本的に何もしません。試合を終えて帰宅するのが深夜になってしまうので、オフは昼ぐらいに起きて、炊事洗濯をしていると1日が終わっちゃう感じです。ホームゲームの次の日は、遠くに出かけることもありますね。シュツットガルトやフランスのストラスブールに行ってみたり。さらに余裕ができたら、ドイツの街を観光したいです」

――昨年のクリスマスは、同じブンデスリーガでプレーする大竹壱青選手と一緒に過ごしたそうですね。

「そうですね。クリスマスマーケットが終了するまでに、『ミュンヘンに行きたい』と思っていたので。すごくリフレッシュできましたよ。(ミュンヘンが)日本男子バレーが五輪で唯一の金メダルを手にした地であることは……言われるまで忘れていましたが(笑)。

 壱青とはお互いにホームとアウェーを行き来しているので、普段は休日が合うことが難しいですね。なので、顔を合わせるのは試合の時ぐらいですが、ときどき連絡を取って互いの現状を報告し合ったりしています」

――イタリアにいる石川祐希選手とも連絡を取りますか?

「電話でお互いの近況報告をしたり、イタリアのリーグの情報を聞いたりしています。(自身が海外に挑戦したことで)比較の対象になったので、よりイタリアのバレーが気になるようになりました。細かいところも教えてくれるので、祐希と電話で話す時間は貴重です。僕が日本にいたときは時差を気にしていたんですが、ドイツに来てからは気兼ねなく電話ができるようになりました」

――今年9月の世界選手権では、3人が揃って全日本で戦うところをファンも待ち望んでいると思います。その大会は会場が屋外で、しかもホスト国のイタリアと開幕戦を戦うことになりました。

「屋外でのプレー経験がないので、少し驚いています(笑)。それでも、世界選手権では強豪国にどんどん挑戦していきたい。どの国と戦うことになっても楽なグループはありませんし、強い相手と戦えるいい機会。そんな舞台で戦うことが『当たり前』と言える選手でありたいと思っています」、

――万全の状態で大会を迎える前に、(2年契約が満了となる)来季以降のことも考えなくてはいけませんね。

「今は、ステップアップしていくのみです。上を目指して取り組むことはプロとして当然のことですし、その結果によって自分の価値も決まってくる。できるだけいい環境で、それに相応しいプレーをしたいと思っています」




今季の活躍に、現地メディアも柳田に注目している

――「勝ちグセ」をつけるために、リーグ上位のチームに移籍することも視野に入れていますか?

「『勝ちグセ』といっても、自分が活躍して勝たないと意味がないと思っています。移籍するのであれば、そのあたりも考えて慎重にチームを選びたいですね」

――あらためて、全日本への思いを聞かせてください。

「代表は国を背負って戦う以上、リーグ戦よりも結果を求められますし、それに応えられなければ代表には残れません。その危機感をなくすことなく、結果に結びつけていきたいです。

 ファンのみなさんからは応援メッセージたくさんいただけて感謝しています。なかには、海外の試合にまで駆けつけてくれる方もいて、『自分は本当に幸せ者だな』と。だからこそ、ドイツで自分のバレーボールが成長しているところを見せたいですし、これからもずっと応援していただけるように活躍したいと思っています」