シーズンオフに出演するテレビのバラエティ番組(TBS系列『ジョブチューン』など)でその”素顔̶…
シーズンオフに出演するテレビのバラエティ番組(TBS系列『ジョブチューン』など)でその”素顔”が徐々に知られてきたように、2017年のパ・リーグ首位打者&最多安打に輝いた秋山翔吾(西武ライオンズ)は独特で愛すべきキャラクターだ。

昨年の秋山翔吾はフルイニングに出場して首位打者に輝いた
「超」がつくほどのド真面目で、試合後に室内練習場へ直行して打ち込むことも珍しくない。練習の虫であるだけでなく、ホームランを打った後は決まって「長打の誘惑に負けると大振りになりがちで、不調にハマる一歩目になる」というようなことを口にし、自身の手綱を強く引き締めるストイックさを兼ね備える。
2017年6月上旬から中旬、いつもの1番ではなく3番で起用された際、辻発彦監督の「打順を気にせずやってほしい」というコメントを報道陣から伝えられると、「メンタルの弱い僕にたぶん、気を遣ってくれているんじゃないですか」と返したように、自虐的でもある。常に客観的な視点を持ち、自分自身を冷静に見つめている裏返しだ。
その内面をひと言で表せば、究極的なマイナス思考――。失敗を恐れるからその前兆に気づき、対策を立てようと行動する。だからこそ、大卒1年目の2011年に110試合の出場で打率.232だったところから、プロ入り7年の歳月をかけて球界屈指の安打製造機になることができたのだろう。
「大きい当たりを狙うためではなく、しっかりコンタクトするために、今日はよりゆったりタイミングを取ろうと思いました。不思議なものですね。力を入れて振れば飛ぶというものでもないと、今年感じるところがあります」
そう悦(えつ)に入ったのは、2017年8月3日の楽天戦で初回、安樂智大(あんらく・ともひろ)から先頭打者本塁打をバックスクリーン左に放ったときのことだ。同シーズン、キャリアハイを大きく更新する25本塁打を記録した一因はここにある。
「コンパクトに振ってあれだけセンターに飛ぶのは理想では?」
記者にそう聞かれた秋山の返答が、実に彼らしいものだった。細かいニュアンスの差を正した直後、いつものように自分の手綱を握り締めた。
「コンパクトに振っているかどうかはわからないです。小さく振ることがコンパクトではないし。しっかりタイミングを取って、振り出しのときに大振りにならないような形がバッターとしては理想です。これがコンパクト、コンパクトと言っていると、フォームが小さくなったり、タイミングの取り方が小さくなって差し込まれたりするのはよくあること。今日はある意味、逆のことをやったという感じです」
バットを最短距離で出すのがコンパクトなスイングだが、そこばかり意識するとフォームが小さくなりがちだ。そうならないためにゆったり構え、しっかりタイミングを計ってインサイドアウトのスイングで最短距離にバットを出し、ボールへの出力を大きくする。頭で考えるだけでも難しいことを打席でやってのけるから、リーグでもっとも高い打率を残せるのだ。
そうした打撃技術はもちろん、相手バッテリーとの駆け引きにも長けている。18.44メートルの距離で対峙するピッチャーほどではないだろうが、秋山との腹の探り合いは取材者としても一筋縄ではいかない。
「それを書かれたら、営業妨害です。でも聞かれたら、ちゃんとしゃべりますよ」
ある意味、記者冥利(みょうり)に尽きるセリフを秋山から言われたのは、2017年8月1日、メットライフドームで行なわれた楽天戦の試合後だった。
この日の相手先発は、左スリークオーターの辛島航(からしま・わたる)。このシーズンの対戦成績が7打数1安打だったように、ヒットメーカーの秋山にしては毎年のように分が悪い。ストレートの平均球速は130キロ台後半だが、「パ・リーグでもっとも打たれにくいチェンジアップ(「パ・リーグTV」のHPによると、2016年のパ・リーグ投手のチェンジアップでもっとも被打率が低かった)」を織り交ぜ、とりわけ左打者には厄介な相手として立ちはだかる。
だが、この日は3回の第2打席で、左中間フェンス直撃のタイムリー二塁打を放った。その理由を掘り下げるべく質問を続けると、最初は口数の少なかった秋山だが、上記の宣言直後、本当にすべてを明らかにした。
「今日はちょっと(身体を)開いて、ちょっと引っ張ってもいいポイントで打とうと思っていました。(2ストライクに)追い込まれていたから、ファウルにすることやバットに当てることを考えていたら、ああいう方向でバットの面が出た(左打席で、ストライクゾーンの真ん中付近に来るボールの右下部分を叩くイメージ)。
逆に言えば、(身体が)閉じていたら、あそこに打球が飛んでいない可能性がある。僕の意識と打球が出た方向は別でしたけど、ああいうボールの見え方をするんだな、という打席ではありました」
大半の打者が「感覚だから説明できない」と片付けるどころでも、秋山は自分のプレーを言語化することができる。頭で理屈をわかっているから、打席で再現できるのだ。そこにこのバットマンの真髄はあり、聞かれたことには答えるところに人としての清々しさがある。
最後に付け加えておきたいのが、タフネスだ。フルイニングに出場して首位打者に輝いたのは、1969年の王貞治、1995年のイチロー、2001年の松井秀喜らに次ぎ史上6人目の快挙だった。さらに言えば、秋山は2017年シーズン開幕前のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)から戦い抜いている。強化試合で負った右足第5指骨折を抱えながら、だ。
「とにかくフルイニング最後まで出るのが、今の自分の目標です。チームとしても(球団誕生40周年の)節目ですし、自分も30という年になるので、それでもやっぱりさらに若々しく激しいプレーもやっていきたい」
春季キャンプが始まる6日前、出陣式に集まった3104人のファンの前で秋山はそう宣言した。現在西武が開幕に向けた準備を進める宮崎県南郷町で、秋山は連日のように最後まで室内練習場に残り、黙々とバットを振り続けているという。
12球団唯一の3シーズン連続フルイニング出場を続けるタフネスと、球界屈指の打撃技術、それらをつくり上げる超マイナス思考――。心技体を掛け合わせ、バットマンとして上積みを続けていく。
それが、”現代の鉄人”とも形容すべき秋山翔吾の素顔だ。
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