2019年9月に日本で開催されるラグビーワールドカップまで残り1年半と迫るなか、温泉地の大分県別府市でサンウルブズの3年目が始動した。2019年W杯の主力となりそうな南アフリカ出身のグラント・ハッティング サンウルブズは日本代表の強化…

 2019年9月に日本で開催されるラグビーワールドカップまで残り1年半と迫るなか、温泉地の大分県別府市でサンウルブズの3年目が始動した。



2019年W杯の主力となりそうな南アフリカ出身のグラント・ハッティング

 サンウルブズは日本代表の強化を目的に結成され、南半球の世界最高峰プロリーグ「スーパーラグビー」に参戦するプロチームだ。ただ、昨年までの2年間で通算わずか3勝となかなか結果を残せず、運営団体から「もっと競争力のあるチームを」と求められていた。

 その一方で、今年からラグビー日本代表ヘッドコーチ(HC)のジェイミー・ジョセフをはじめ、トニー・ブラウンら日本代表コーチがほぼそのままサンウルブズのスタッフを兼ねることになり、より密接に日本代表との連携が図られることになった。

「日本代表でポジションを得るために必死にがんばっている選手たちと、このサンウルブズで密に接することができるのは有利だと思います。そういった選手たちと多くの時間を過ごすことで、仕事量の負担は多くなりますが、総合的にはアドバンテージになります」(ジョセフHC)

 今年のサンウルブズのメンバーは44名。就任して1年半が経って「選手の特性・個性を掴むことができた」というジョセフHCがワールドカップを見据え、そしてスーパーラグビーでも勝つために選んだ選手たちである。

 その44名のメンバーを見てみると、2019年のラグビーワールドカップで日本代表資格(3年間居住などの条件)を得られない選手は6~7人ほど。残る37~38名は1年半後のラグビーワールドカップにおける「代表候補選手」という位置づけとなるだろう。

 ワールドカップのメンバーは計31名。その数を考慮すると、大きなケガやコンディション不良がなければ、ほぼ今年のサンウルブズのメンツがワールドカップメンバーになる可能性が高いと言える。

 それでは、サンウルブズのメンバーから2019年ワールドカップメンバーを予測していきたい。

 まずはFW。「1番」の左PR(プロップ)から見ていこう。中軸となるのは、2015年のワールドカップメンバーでもある稲垣啓太(パナソニック/27歳)だ。それに続くのが石原慎太郎(サントリー/27歳)で、南アフリカ出身のヘンカス・ファン・ヴィック(宗像サニックス/25歳)も今年6月には代表資格を取得できるだろう。

 対する右PRの「3番」はスタメン候補が多い。ヴァルアサエリ愛(パナソニック/28歳)、具智元(グ・ジウォン/ホンダ/23歳)、ルアーン・スミス(トヨタ自動車/28歳)、浅原拓真(東芝/30歳)らがポジションを争っている。

「2番」のHO(フッカー)は、サンウルブズでもキャプテンを務めたベテランの堀江翔太(パナソニック/32歳)が中心。さらに若手有力株の庭井祐輔(キヤノン/26歳)や日野剛志(ヤマハ発動機/28歳)も控えている。

「4番」のLO(ロック)には、6月のテストマッチこそ間に合わないものの、11月の代表戦ではふたりの大きな戦力が加わりそうだ。それは、待望の2メートル超えを誇るグラント・ハッティング(南アフリカ出身/元クボタ/27歳)と、身長197cmのサム・ワイクス(オーストラリア出身/パナソニック/29歳)だ。

 同じくLOの「5番」には、真壁伸弥(サントリー/30歳)とヘル ウヴェ(ヤマハ発動機/27歳)の大型2選手がポジションに定着している。スクラムやラインアウトのセットプレーで計算のできる選手がLOに揃ったと言えるだろう。

「6番」「7番」のFL(フランカー)と、「8番」のNo.8(ナンバーエイト)のFW第3列は、競争が一番激しい。日本代表キャプテンのリーチ マイケル(東芝/29歳)、現在唯一の海外組であるアマナキ・レレィ・マフィ(レベルズ、NTTコミュニケーションズ/28歳)のふたりのレギュラーは確定的。彼ら以外のFLとしては、布巻峻介(パナソニック/25歳)や德永祥尭(よしたか/東芝/25歳)、さらに今年から加わった激しいプレーが持ち味のピーター・ラピース・ラブスカフニ(クボタ/29歳)もいる。

 ただ、ワールドカップのメンバー構成を考えると、FLとLOの両方でプレーできる選手も控えとして必要だ。ルーキーの姫野和樹(トヨタ自動車/23歳)、ヴィンピー・ファンデルヴァルト(NTTドコモ/29歳)、ヴィリー・ブリッツ(NTTコミュニケーションズ/29歳)らも大きな戦力となるだろう。

 次にBKを見ていこう。まず「9番」のSH(スクラムハーフ)は田中史朗(パナソニック/33歳)を筆頭に、流大(ながれ・ゆたか/サントリー/25歳)、内田啓介(パナソニック/25歳)の3人へのコーチ陣の信頼は厚い。

 司令塔である「10番」のSO(スタンドオフ)のポジション争いは、これまでの実績から田村優(キヤノン/29歳)が一歩リードしている。ただ、立川理道(クボタ/28歳)やラファエレ ティモシー(コカ・コーラ/26歳)、ロビー・ロビンソン(リコー/28歳)、中村亮土(サントリー/26歳)らも候補と言えそうだ。

「12番」のインサイドCTB(センター)は、前出の立川、ラファエレ、中村の3人が争うだろう。そして「13番」のアウトサイドCTBには、昨年6月に代表デビューしたウィリアム・トゥポウ(コカ・コーラ/27歳)と、11月に代表デビューしたシオネ・テアウパ(クボタ/25歳)の突破力に長けたふたりが有力。ただ、状況によってはWTB(ウイング)のレメキ ロマノ ラヴァ(ホンダ/29歳)がプレーするケースもありそうだ。

 最後に「11番」「14番」のWTBと、「15番」のFB(フルバック)のバックスリーを見てみよう。WTBは山田章仁(パナソニック/32歳)、福岡堅樹(パナソニック/25歳)、レメキの3人が頭ひとつ抜けた存在だが、身長192cmのゲラード・ファンデンヒーファー(南アフリカ出身/元ヤマハ発動機/28歳)も2019年には間に合いそうだ。

 一方、FBは松島幸太朗(サントリー/24歳)とロビンソンがスタメンを争っている。また、ファンデンヒーファーもFBでプレーすることが可能で、このポジションはさまざまな組み合わせが考えられる。

 以上、今年のサンウルブズのメンバーからワールドカップメンバーを予測してみた。ただし、サンウルブズの始動とは別に、「NDSキャンプ(日本代表候補合宿)」から代表入りを狙う選手もいる。SO山沢拓也(パナソニック/23歳)、CTB松田力也(パナソニック/23歳)、FB野口竜司(東海大4年/22歳)といった若手有望株からも目が離せない。

 サンウルブズのキャプテンのひとり、SHの流は「チームとしてはスーパーラグビーで勝つことが目標ですが、個人としてはスーパーラグビーでの経験が2019年のワールドカップにつながる」と語る。

 2月24日、東京・秩父宮ラグビー場で開幕戦を迎えるサンウルブズの勝利に貢献し、ジョセフHCら首脳陣にアピールすることが、2019年のワールドカップメンバー入りへの近道となるだろう。