マラソン大会前の不安・疑問として、よく挙げられるのが食事。私も周囲のランニング仲間やパーソナルレッスンに訪れた方々から、頻繁に質問を受けます。東京マラソンのような大きな大会になれば、同じような悩みを持つ方はたくさんいらっしゃることでしょう。

 食事についてはいろいろな意見がありますが、ここでは私なりに食事法についてアドバイスさせていただきます。参考にしつつ、できれば事前に練習などで試しながら、自分に合った食事法を見つけてください。

マラソン大会前の食事法でよく聞く、カーボローディングとは

 大会前の食事といえば、カーボローディングという言葉を聞いたことのある方は多いでしょう。カーボローディングとは、エネルギー源である炭水化物(=カーボハイドレート)を事前に多く摂取・蓄積しておくこと。これによって、マラソンのような長時間の運動でも、エネルギー切れを起こさずに走れるとされています。

 カーボローディングに対しては、「前日夜に多くの炭水化物を食べる」という認識をお持ちの方が多いでしょう。実際、マラソン大会の中では参加者に向け、前日にパスタパーティーなどカーボローディングを意識したイベントを開催するケースも見られます。

 しかし残念ながら、これはあまり効果的とはいえません。本当にカーボローディングの効果をレース本番で得ようと考えるのであれば、3日程前から炭水化物の多い食事に切り替える必要があるとされているのです。ただし糖質を多く摂取すると、短期間でも体重が増えやすくなるでしょう。それでは本末転倒、かえってパフォーマンスは低下してしまいます。そのため、食事全体で摂取量をコントロールする(比率として炭水化物を高める)ことが必要です。

 なお、ここで1つ注意しておきたいことがあります。炭水化物は『糖質』と『食物繊維』に分かれており、成分表などでは分けて表示されていない(=まとめて『炭水化物』量で表記されている)ことが少なくありません。しかし食物繊維は、ほとんどエネルギー源にならないのです。そのため、カーボローディングを行うのであれば、炭水化物の中でも糖質を摂取するようにしてください。

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考え過ぎず“いつも通り”のメニューがオススメ

 カーボローディングについて詳しくお伝えしましたが、私は経験上、市民ランナーならばそこまで神経質に考える必要はないと思っています。常に記録更新を狙うシリアスランナーであれば、細かな食事管理が結果にも大いに関わってくるでしょう。しかしそうでなければ、むしろ“いつも通りの食事”が最適かもしれません。

 カーボローディングを意識して、いつもよりたくさんの炭水化物を摂取する。すると、食べ過ぎてお腹が重く、大会当日になっても動きづらさを感じるかもしれません。あるいは不慣れな食事内容に身体が驚き、お腹が痛くなってしまう……なんていうことも良く聞きます。それならば、多少食べるものに配慮するだけで、あとはいつも通り過ごした方が無難ではないでしょうか。

 配慮する点としては、まず消化の悪い脂肪分の多いものを避けること。例えば揚げ物やスイーツなどがこれに当たります。また、できれば刺し身など生モノも避けた方が良いでしょう。以前私の知り合いで、大会前に生牡蠣を食べて当たってしまい、朝起きて大会ではなく病院に向かったという方がいました。

 ランナーの中には、お酒好きという方もいるはずです。結論から言えば、お酒はできれば控えたいところです。飲み過ぎれば二日酔いや脱水の原因になる可能性があるほか、眠りが浅くなって疲れが取れません。どうしても緊張して飲まないと眠れないなどの場合は、少量のみと心がけて飲み過ぎないようにセーブしましょう。

ウォーターローディングを試してみよう

 ウォーターローディングという言葉をご存知でしょうか。これは炭水化物を事前に多く摂取するカーボローディングに対し、水分をこまめに取って体内の水分状態を整えるというものです。

 暑い夏場だけでなく、マラソンで走れば冬場でもほとんどの方が汗をかきます。しかし気温が低いと、つい水分補給を疎かにしがちです。そのため、時期にかかわらずマラソン大会ではこまめな給水が必須。加えて、あらかじめ水分をしっかり摂取しておけば、汗によって失われる水分を調整するのに役立ちます。

 私の場合、だいたいレースの5日前頃からウォーターローディングを意識し始めます。1日あたり1.5Lを目安に、こまめに水分を飲むのです。このとき注意したいのが、一気に大量の水を飲まないこと。また、砂糖のたくさん入ったスポーツドリンクもオススメしません。飲むのは自分の中で飲みやすく、ミネラル成分のバランスが良いミネラルウォーター。1回あたり150〜200mlを目安に、1日かけてこまめに飲むようにしています。

 ミネラルウォーターは1本1.5mlのペットボトルが販売されていますので、これを1日1本で飲み干すと考えれば分かりやすいでしょう。

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自分に合った食事を見つけよう

 事前に食べるべき食事量は、人によって大きく異なります。それは身体の大きさはもちろん、体内環境などさまざまな要因が関わることでしょう。ちなみに私はかなり変わっていて、レース前の朝食を食べません。ウォーターローディングは直前まで継続しつつ、摂取してもアミノ酸系のサプリメントのみ。普段からお腹が減らず1日1食が中心という体質なので、逆にしっかり食べてしまうと、身体が重くて走りにくさを感じるのです。

 とはいえ、マラソンを始めた当初はちゃんと朝食を食べていました。その頃はおにぎり2個に豆乳、あとはスタート前まで麦茶かミネラルウォーター。添加物が嫌いなので、おにぎりは手作りです。お餅も、腹持ちがよくエネルギー源になるので、確かにマラソン向きでしょう。

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 しかしもっとも大切なことは、自分が最高にパフォーマンスを発揮できる食事を知ること。私の場合はそれが「食べない」ということになりますが、まずはいろいろと試してみてください。土日など朝から練習できる日を見つけたら、レース本番と同じスケジュールで動いてみる。そのとき、自分の中で良さそうだと思えるメニューで前日夜・当日朝の献立を考えてみるのです。

 その中で「なんとなく走りが軽い」など感じられたメニューがあれば、本番も同じにしてみてください。少なくとも過去に成功体験があるため、安心してレースに臨めるはずです。

《東京マラソン完走HOWTO》
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[筆者プロフィール]
三河賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。またトレーニングサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室、ランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。3児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表。
【HP】http://www.run-writer.com

<Text:三河賢文/Photo:Getty Images>