フランス・パリで開催されている全仏オープン(5月22日〜6月5日)の3日目。 前日に1回戦を突破したのは錦織圭(日清食品)、ダニエル太郎(エイブル)、大坂なおみ…海外で育ち、今も日本以外に拠点を持つ選手ばかりだ。この日は〈…

 フランス・パリで開催されている全仏オープン(5月22日〜6月5日)の3日目。

 前日に1回戦を突破したのは錦織圭(日清食品)、ダニエル太郎(エイブル)、大坂なおみ…海外で育ち、今も日本以外に拠点を持つ選手ばかりだ。この日は〈メイド・イン・ジャパン〉の活躍が期待される中、奈良くるみ(安藤証券)が世界ランク70位のデニサ・アレルトバ(チェコ)に5-7 6-3 2-0(途中棄権)で勝利。しかし、前日の降雨のため第2セット途中で中断になっていた土居美咲(ミキハウス)は、第21シードのサマンサ・ストーサー(オーストラリア)の強烈なキックサービスとトップスピンに最後は屈し、2-6 6-4 3-6で敗れた。    ◇   ◇   ◇

 奈良はインディアンウェルズで3回戦に進んだあと、WTAツアーレベルでは4大会連続で勝ち星がなく、過去2年連続で初戦を突破しているこの大会で何かきっかけをつかみたかった。対戦相手のアレルトバは、180cmの長身だが、恐れるほどのパワーヒッターではなく、奈良はラリー戦に持ち込むことで持ち味を発揮した。

 早いタイミングでボールをとらえて相手の時間を奪い、精度を高めてきたショットを際どいコースへ根気よく散らす。立ち上がりをブレークし、リードを守ったままサービング・フォー・ザ・セットを迎える。しかし奈良は、ファーストサービスを連続して入れたにもかかわらず、0-40とブレークバックのトリプルポイントを握られ、結局ブレークを許した。

 こうなればせめてタイブレークに持ち込みたかったが、第12ゲームの15-30からダブルフォールトをおかし、フォアハンドのリターンエースでセットを締めくくられた。嫌なかたちでの失セットだったが、「今日は勝ち負けよりも100%頭を働かせて頑張るということが目標だった」という奈良は、いい意味で開き直れたのかもしれない。  そんな考え方ができた背景には、過去に経験がないほどのスランプがあった。4月にイスタンブールで敗れたあと、いったん帰国し、テニスから距離を置いたのだ。 「期間は決めずに、テニスをまたやりたくなるまで休むつもりだった」「(全仏オープンは)出ないことも考えていた」というほど深刻だった。

 しかしテニスが恋しくなるのにそう長い日数は要さず、ふたたび試合に挑んだのは先週のストラスブール。そう劇的に復活とはいかずにまた1回戦負けだったが、休む前と違って「テニスを続けたい」という気持ちは確かに芽生えていた。そして迎えた全仏オープンの初戦だった。

 第2セット、奈良が6-3で奪い返した。そして最終セット、奈良が2ゲームを取ったところでアレルトバが棄権。奈良の3年連続2回戦進出が決まった。

 休んだことで気持ちはリフレッシュできたが、やや鈍った体はまだ元に戻りきっていない。このタイミングで運が巡ってきた意味は大きいだろう。  「私のテニスは気力がついてこないと苦しい」と奈良は言う。155cmの小さな体で戦うための武器を取り戻しつつある24歳が次に挑むのは、元女王アナ・イバノビッチ(セルビア)だ。

(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)