1月30日、プレミアリーグ、マンチェスター・シティは、アスレティック・ビルバオの左利きセンターバック、エメリク・ラ…
1月30日、プレミアリーグ、マンチェスター・シティは、アスレティック・ビルバオの左利きセンターバック、エメリク・ラポルト(23歳)を、クラブ史上最高額となる移籍金6500万ユーロ(約87億円)+育成金500万ユーロで獲得したことを発表している。
ラポルトを熱望したのは、シティの指揮官であるジョゼップ・グアルディオラだった。2016年6月にも仮契約まで話が進んだものの、当時、ケガで戦列を離れていたラポルト自身がサインを渋って、アスレティックに給料倍増のうえ残っている。今回、移籍金を倍増した形で契約が成立した。
シティはこれで、バックラインだけで2億7000万ユーロ(約350億円)を投資したことになる。はたして、グアルディオラ・シティはどこまで強くなるのか?

アスレティック・ビルバオからマンチェスター・シティに移籍したエメリク・ラポルト
今シーズン、シティは他を寄せつけない強さを見せている。第24節で対戦したニューカッスル戦は、3-1というスコア以上の独壇場だった。ボール支配率は81%と圧倒的で、シュート数は21本、パス成功数はなんと800本(相手は191本)。第25節のWBA戦も3-0と圧勝、すでに2位マンチェスター・ユナイテッドを15ポイントも突き放し、すでにプレミアリーグの覇権は見えつつある。
シティは欧州制覇も視野に入れる。そこで万全を期し、MFケビン・デブルイネと2023年まで契約を延長。さらにアーセナルからチリ代表FWアレクシス・サンチェスの獲得も目指していたが、こちらはユナイテッドの横槍が入ったことで頓挫した。
しかし、最大の懸案だったセンターバックには、ラポルトという望み通りの選手を加えることに成功した形だ。
そもそも、名将グアルディオラがこだわり続けたラポルトとは、どんな選手なのか?
ラポルトは18歳にして、名将の誉れ高いマルセロ・ビエルサにセンスを見いだされ、名門アスレティックでレギュラーを勝ち取っている。通常、守備の選手は攻撃の選手よりも、定位置確保に時間がかかるだけに、その素質の高さは伝わるだろう。
ラポルトはまず、対人プレーにおいてフィジカルで他を凌駕していた。アスリート能力が高く、性格も勝ち気で、名のあるアタッカーたちをものともしない。勢いあまって攻め上がりすぎるほどだった。
特筆すべきは、攻めの防御を可能にする技術、戦術レベルの高さだろう。バックラインからボールを受け、左足でつけるボールのタイミングは迅速で的確。ボランチが詰まっているときには、マークを外して持ち上がることができるし、逆サイドまで精度の高いロングボールを蹴って、展開することもできる。
「父は3部リーグのサッカー選手で、母もサッカーをプレーしていた」と言われるが、息子の感覚はほぼ天性のものだろう。
グアルディオラはビエルサに心酔していることもあって、その薫陶を受けたラポルトの獲得をずっと目指してきた。バックラインを高く保ち、攻撃的に戦えるキャラクターを評価。バイエルン・ミュンヘン監督時代にも興味を示しているが、このときは契約に至っていない。シティの監督就任のときにチキ・ベギリスタインFD(フットボール・ディレクター)に提示した条件のひとつも、ラポルト獲得だった。
「超」が付くほどの攻撃的フットボールを信奉するグアルディオラは、左センターバックには基本的に左利きを求める。右足でボールを晒さずに持てることで、危険を回避できるし、より広くピッチを使える。左足キックは右サイドにボールを蹴り込むのにも体を開かずに済み、左から右にボールを動かすプレーを自然にできる。ボールの軌道がスムーズになることで、攻撃の選択肢が増えるのだ。
ただし、左利きセンターバックは少ない。
そこでシティでも、最初にラポルトとの契約が破談になったときは、左利きサイドバックのアレクサンダル・コラロフをコンバートしている。実はバルサ時代もグアルディオラは、左サイドバックのエリック・アビダルを、バイエルン時代もダビド・アラバを左センターバックとして抜擢。結局、バルサでは右利きのハビエル・マスチェラーノを起用する機会が多かったが、それは左利きのガブリエル・ミリートがケガで長期離脱したからだ。
グアルディオラはシティで、右利きのニコラス・オタメンディを鍛え上げている。オタメンディは4バックの左センターバックとして、今や盤石のプレーを見せる。ただ、「勝っているチームはいじらない」は定石だが、スペイン人指揮官はそんな常識に囚(とら)われない。ラポルト加入によって、指揮官は開幕当初、ひとつの基軸にしていた3-3-2-2システムを再び選択肢に入れることができる。戦術システムの革新もあるかもしれない。
とはいえ、ラポルトは国際経験が乏しく(フランス代表での出場歴はない)、どこまで順応できるかは未知数。気性の荒さは長所であり、短所でもある。シーズン途中で異国のリーグに慣れるのは骨が折れる仕事だ。
また、グアルディオラは慧眼(けいがん)で知られるが、守備の選手に関してはこだわりが裏目に出る例もないわけではない。バルサ監督時代、2500万ユーロ(約33億円)で契約したセンターバック、ドミトロ・チグリンスキーは、1年で見切りをつけ、半額セールで手放すハメに。「弘法も筆の誤り」ならぬ、「ペップのチグリンスキー」とも揶揄される(やゆ)……。
「シティはずっと私に関心を示してきてくれた。それは私の力を信じているということ。グアルディオラのチームでプレーするのが楽しみだよ」
ラポルトは入団会見でこう語っている。グアルディオラ・シティの念願が叶ったことだけは間違いない。
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