久保裕也の所属するゲントは、1月21日にウインターブレーク明けの初戦でロケレンを3-0で破ると、24日にアントワー…
久保裕也の所属するゲントは、1月21日にウインターブレーク明けの初戦でロケレンを3-0で破ると、24日にアントワープと1-1で引き分け、28日には首位を独走するクラブ・ブルージュを2-0で倒した。

ゲントの久保裕也は現在、6試合連続でノーゴール
ベルギーリーグの第24節を終えた時点で、ゲントは勝ち点39の4位。クラブ・ブルージュとの差は勝ち点18と、ゲントにとって彼らの背中はまだまだ遠い。
それでも、3月から始まる「プレーオフ1(※)」では現行のレギュラーシーズンの勝ち点が半分になるため、ゲントは2位のシャルルロワ(勝ち点46)と3位のアンデルレヒト(勝ち点45)を射程圏内に捉えたと言えるだろう。
※プレーオフ1=レギュラーシーズンの1位から6位までの計6チームで行なわれるホーム&アウェーの総当たり戦。レギュラーシーズンでの勝ち点の半分が持ち点としてスタートし、プレーオフ1終了時にもっとも多い勝ち点のチームが優勝となる。
10月半ばまで14位と極度の不振にあえいでいた「バッファローズ(ゲントのニックネーム)」にとって、ターニングポイントは10月14日のベフェレン戦(2-0でゲントの勝利)からイベス・ファンデルハーゲ監督が指揮を採り始めたことだった。
前任のハイン・ファンハーゼブルック監督(現アンデルレヒト)は戦術・選手起用を毎試合のようにいじくるタイプだったが、ファンデルハーゲ監督はフォーメーション(4-2-3-1)も起用するメンバーもある程度固定し、それが功を奏している。
久保に対するファンデルハーゲ監督の信頼は厚く、15試合連続してスタメンでピッチに送り出している。最初の2試合こそ右ウイングを任された久保だったが、その後はずっとトップ下としてプレー。このポジションには2014-2015シーズンに優勝したときのヒーローであるMFダニエル・ミリセビッチもいたが、久保との競争に敗れたことを理由に、この冬にメス(フランス)へのローン移籍を希望して去っていった。
チームは好調。久保も毎試合、スタメンで出続けている。しかし、今年に入ってからの試合後、彼の表情は冴えない――。首位のクラブ・ブルージュを撃破し、チームメイトが高らかに凱歌をあげていても、「個人的には全然すっきりしないですよ」と苦笑いするのである。
今季6ゴールを決めている久保だが、今年に入ってからはノーゴール。昨年も含めると6試合連続で無得点と、久保は今季2度目のスランプに入ってしまった。
「少ないチャンスで自分がどうにかして持っていって、点を獲るしかない。今は点の獲り方がわからないです」とまで彼は言うのである。
ここ3試合、記者席から見ていて「あ、惜しかったな」と思えた久保のシュートは、アントワープ戦の87分。パンチの効いた左足のミドルシュートで相手GKシナン・ボラトを脅(おびや)かした場面だけだった。
けっして久保がコンディションを崩しているわけではない。アントワープ戦では80分、不運にもオフェンスファウルを取られしまったものの、190cmの巨漢MFサンブ・ヤタバレとの激しいデュエルに勝ち、左サイドライン際を強引に抜け出した。さらに試合終了直前には自陣に向かってスプリントし、フリーになりかけた敵に対して読みよく身体を入れてピンチを未然に防いだ。また、敵陣の深い場所でも粘り強くプレスをかけて、ボールを奪い返していた。
開幕時に陥った今季最初のスランプは、昨季からの疲労を持ち越してしまったことと、ひざの負傷が重なったことから生じた。当時の久保は決定機が訪れてもフィニッシュで精度を欠いてしまい、開幕から6試合ノーゴール。5戦目と6戦目はベンチスタートとなる。
そんな彼を救ったのが、第7節のオーステンデ戦で決めた”ごっつぁんゴール”だった。後に「あれは大きかったですね」と振り返ったシンプルなゴールは『スシボンバー復活』の呼び水となり、シャルルロワ戦(10月27日)とムスクロン戦(11月24日)で単独突破からのスーパーゴールを生んだ。
今の久保は、当時とは違った質のスランプに陥っている。アントワープ戦の後半、久保は相手の密着マークにあいながらボールをしっかりとキープし、味方にパスを叩いてフリーランの動きをし続け、パスミスもゼロだった。しかし、久保がゴール前に走り込んでも左右からクロスは来ず、中盤からもスルーパスが出てこない。さらに、クラブ・ブルージュ戦での久保はシュートゼロに終わった。
「チームの流れに(自分も)乗りたいですけれど、自分のコンディションを上げるとか、もっとよくするしか方法はないかなと思います」と現状を振り返った久保に、「コンディションは、むしろいいと思うが」と突っ込んでみると、「うん。コンディションという面ではないかもしれません」とうなずいた。
「今の状況は、サイドに流れた選手や、最初にディフェンスラインからボールを受けた選手がひとりで何とかしてしまう。(FWサミュエル・)カルーやFWロマン(・ヤレムチュク)はひとりで持っていけるので、『チームとしてどうにかして』というのがあまりない。そうなると、僕もボールを受けたときに『自分でどうにかして』というのがないと、ゴールチャンスも出てこないのかなと思います」
このような経験は、久保にとっても初めてのこと。「今までは、最後のところはフリーの選手にきっちり出すようなシチュエーションでプレーしてきました」と振り返る。
「今はいい意味で、エゴイストが通っているというか。それで(チームメイトが)決めるから成り立っている。(彼らは)ミスしても何回もトライしている。それを自分もできれば楽しいでしょうけれど、それができないときとか、ボールが回ってこないときとかは、すごいフラストレーションが溜まります」
今から1年前の1月29日、久保はホーム「ゲラムコ・アレーナ」で鮮やかなフリーキックを決めて、クラブ・ブルージュを2-0で下す立役者となった。
あれから、ちょうど1年――。久保はベルギーでの日々を「早かったです。今思うと、一瞬でした。充実していると思います。いい日々もありながら、悶々とする日々もあるという感じです」と振り返る。
筆者にとっても、久保のプレーを追ったこの1年は、あっという間の出来事のよう。今もなお、昨年3月のメヘレン戦で久保が「メッシのようなドリブルシュート」と形容されたスーパーゴールを決めた直後の鳥肌と、スタジアムのつんざくような歓声は、昨日のことのように思い出す。
「エキストラな部分を出して、点を獲ることに重きを置いてプレーをしたほうがいいのかな、という感じがします。そういうエキストラなものを出せるよう、練習していったらいいのかなと」
きっと彼は、いい日々のイメージを内に秘めつつ、悶々とする今の日々を糧(かて)に成長していくだろう。
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