中日時代の1996年と、楽天時代の2007年、セ・パ両リーグで本塁打王のタイトルを獲得し、プロで放った本塁打数は歴…

 中日時代の1996年と、楽天時代の2007年、セ・パ両リーグで本塁打王のタイトルを獲得し、プロで放った本塁打数は歴代18位の403本。ホームランアーチストとして球史に名を刻んだ山﨑武司氏は、日本ハムのゴールデンルーキー・清宮幸太郎をどう評価するのか? 技術的な話にも触れ、将来性豊かなスラッガーの可能性を予測する。



春季キャンプで一軍スタートとなった日本ハムのルーキー・清宮幸太郎

「清宮は何本のホームランを打てるか?」

 彼が日本ハムに入団が決まってから、スポーツ紙の記者などから、そういった質問を受けることが増えました。

 本音を言えば「そんなの、わかるわけねぇだろ」です(笑)。高校でどれだけホームランを打っていたとしても、まだプロでは1本も打っていない。オープン戦など、実戦の打席での反応や対応を見ることができれば予測は立てられるかもしれませんが、現時点で断定するのは難しい。

 ただ、あえて数字を述べさせてもらうとすれば、仮に143試合に出場するのなら20本近くは打てるのではないでしょうか。

 私からすれば、清宮は新しいタイプのホームランバッターだと思っています。

 高校時代に歴代で誰よりもホームランを打ったことも理由のひとつですし、子どもの頃からあれだけ騒がれ続けている選手なんて皆無。そんな中、結果を残し続けてきたし、周りは彼が活躍することを強く求めている。そういう星のもとに生まれてくる人間なんて、そうそう現れるもんじゃありませんからね。

 これまでの実績が物語るように、清宮はボールを遠くへ飛ばす才能があります。それを実感したのが木製バットへの対応でした。

 私は当初、「清宮は木製でも通用するのか?」と懐疑的でしたが、日本代表の試合(U-18ワールドカップ)でホームランを打ったし、打球もよかった。夏の甲子園で清原和博さんのホームラン記録を塗り替えて広島に入団した中村奨成は苦労していたのに、清宮はしっかり順応していた。「これは、なかなかのポテンシャルを秘めている選手だな」と感心しました。

 今の高校生は練習で木製バットを使用することがあるとはいえ、プロのピッチャーはボールの力、キレなどが明らかに違います。何年もプロでプレーしている選手でも、詰まるのが怖くてしっかりバットを振れないときがあります。でも彼には、そういった恐怖心がないんだろうなと感じました。

 天性の素質があり、ポテンシャルも高い。だったら、まずはそこを信じてプレーさせるしかないだろう、というのが私の考えです。

 幸い、日本ハムという球団は必ずチャンスを与えてくれます。栗山英樹監督がどのような起用をするのかも注目ですが、いい意味でノビノビと育てるでしょう。そういう環境があるからこそ、清宮には「今の力でどこまで通用するのか?」と試してもらいたい。

 いくら素質があるとはいえ、高卒1年目の選手は必ずプロのピッチャーのスピードに戸惑います。そういう状況で技術的な指導をしてしまえば、本人も苦しいと思う。

 現時点での清宮には、技術的な欠点はもちろんあります。

 ひとつ例を挙げれば、インコースの捌(さば)き方。映像などで彼のバッティングを見ていると「プロのピッチャーが相手なら、ちょっと詰まらされるだろうな」と感じました。

 清宮の場合、スイングをする際に一度ベース側に寄って、上体を起こしてから打ちにいってしまう傾向がある。そうなると、インコースへの反応が遅れてしまう危険性が出てきます。

 そこで「インコースをちゃんと打たないと」と意識しすぎてしまうと、今度は体の開きが早くなるからアウトコースが打てなくなるかもしれない。ひとつの課題を修正しようとすると、どんどん不具合が明るみに出てしまう恐れがあるのです。

 そうなってしまうと、清宮の個性が損なわれてしまう。彼は「バッティングフォームを変えて、2、3年の下積みを経て一軍に上げる」なんてバッターじゃない。すぐに結果を求められる選手なんです。だったら、最初は彼のバッティングには手をつけないほうがいい。

 まず取り組むべきは配球の読み。狙い球を絞るよう心がけさせることです。

 ただ漠然と、真っすぐか変化球のどちらかを狙わせるのではなく、最初は打てなくても「相手はどういう配球で攻めてくるのか?」と考える習慣を身につけさせる。そうすれば、自然と「自分にはインコースを多く投げてくるだろうから、あえてアウトコースを狙おう」という具合になってくる。

 チームが肝に銘じなければいけないのは、清宮のポテンシャルを信じてプロの水に慣れさせること。「アマチュアとプロは違うんだ」と本人に認識させることが大切です。清宮クラスの新人であれば、試合で場数を踏んでいけば、そのうち必ず対応できますから。

 あとは、早くプロの体を作ることでしょうか。新人合同自主トレで右手親指を負傷したそうですね。大事には至らなかったようですが、プロは小さなケガでも命取りになりかねません。しっかりと体を鍛え上げてもらいたい。

 あれだけの選手ですし、私を含め周りはいろんなことを言いたいでしょうが、共通しているのはめちゃくちゃ楽しみだということ。ひょっとしたら、清原さんの高卒ルーキー本塁打記録(31本)を抜くんじゃないか? そんな期待を抱きながら、清宮のバッティングを見守りたいと思います。