1月21日に都内で開かれた日本最高峰トップリーグの表彰式で、安堵の顔つきを浮かべていたのがコカ・コーラの山下昂大主将だった。

 前日は福岡・ミクニワールドスタジアム北九州で、下部トップチャレンジリーグの三菱重工相模原との入替戦に臨んでいた。本職のオープンサイドFLではなくNO8として先発した山下主将は、17-24とビハインドを背負ったまま交代。結局は27-27とドローに持ち込み、規定によりトップリーグ残留を決めた。

「最後は見守るしかなかった。厳しいかなと思いながらも、信じていました。ほっとした気持ちが、一番、大きいです」

 主将就任3年目のシーズンは、アール・バー新ヘッドコーチ(HC)のもと苦しい戦いを強いられた。もともと強みにしていた連続攻撃でファンを魅了する場面こそ作れど、8~12月のリーグ戦は13戦全敗で得られた総勝点は3。加盟するホワイトカンファレンスでは8チーム中最下位に沈んだ。

 しかし、順位決定トーナメントで決まる自動降格はなんとか回避できた。

 1月6日、愛知・パロマ瑞穂ラグビー場での1回戦でNTTドコモに19-14と競り勝ったからだ。13日の13、14位決定戦は宗像サニックスに5-32で負けたが(大阪・ヤンマースタジアム長居)、三菱重工相模原と引き分けてトップリーグに残った。

 転機は、リーグ戦中断期間中の11月にあった。その時にしていた鹿児島合宿の終盤、練習を終えた選手は突如として集合をかけられ、ある訓示を聞いたという。

 声の主は向井昭吾。このクラブで監督やGM兼総監督などを歴任した中興の祖だ。

 コカ・コーラウエスト(当時名称)で2004年から8季指揮を執り、就任2年目にはその時いたトップキュウシュウAリーグからトップリーグへ昇格。2011年度にトップキュウシュウに再降格するまでの間、地元出身の選手を鍛え上げるなどして2009年度はクラブ史上最高の8位に入るなど爪痕を残している。

 その前の2003年のワールドカップオーストラリア大会では日本代表監督を務めた名士は、コカ・コーラの成り上がりの歴史をもとにシンプルなゲキを飛ばしたという。その場に居合わせたスタッフによれば、内容はこうだった。

「ボールが落ちていたら何をする? そこへ飛び込むだろう。相手が走ってきたらどうする? タックルするだろう。そういう気持ちの部分が、いまは見えてこない」

 山下の述懐。

「向井さんにゲキというか、喝を入れてもらって。そこで皆がチームにコミットするようになったところがあります。(言われた内容は)メンタル的な部分です。ミスを仲間がカバーする、そもそもそれが起きないように周りとコミュニケーションを取る…。そうした絆、つながりが見えないということを仰られていて…」

 向井監督時代に現役時代を過ごしたスタッフによれば「アール・バーも大変にいい指導者ですが、やはり今季就任したプロコーチです。うちががむしゃらにやって勝ってきたという歴史はまだ知らない」。そもそもバーHCに限らず、向井の言うような土の匂いのする真実を「あえて強調すべきでない項目」と見なす指導者は少なくない。

 しかし秋のカンフル剤注入は、コカ・コーラには効果的だった。関係者の話を総合すると、その日の夜に選手同士でミーティングを開いたという。向井の話を振り返りながら涙を流した外国人選手もいたとされる。

 12月のリーグ戦4試合は白星こそ得られなかったが、同17日のクボタとの第12節は5-12とロースコアに持ち込めた。最終決戦で成果を残すための下地は、確かに11月に作られたようだ。

 山下が改めて、当時の感情を思い返す。

「僕らは慣れていくと、シークエンス(チーム内の決め事)やゲームプランに目が行きがち。そこでラグビーというよりスポーツをするうえで当たり前のことを再認識させてもらえました。中断明けにいくつかいい試合ができて、少しだけつながりは出せたのかな、と」
 
 コカ・コーラの残留決定を受け、一部のファンが疑問を投げかけていた。

 ふたつあるカンファレンスの下から2チームずつが最下位を争う順位決定戦に進んだが、レッドカンファレンスの7位はNTTドコモで勝点26、同8位は近鉄で勝点17だったのに対し、ホワイトカンファレンスの7位は宗像サニックスで勝点8、同8位のコカ・コーラは勝点3だった。

 それでも最後の一発勝負を受け、リーグ戦で4勝していた近鉄が自動降格。ホワイトカンファレンス4位のNECと勝点や勝利数(6勝)が同じだったNTTドコモも、日野自動車との入替戦を17-20で落として下部のトップチャレンジリーグに陥落した(長居)。

 そのため今回のレギュレーションへの不満が各所で噴出。ルールのもとで最善を尽くしたコカ・コーラが、やや肩身の狭い状況に追いやられていた。

 当事者は何を思ったか。山下は言った。

「いろいろな意見があることはSNSなどを通じて見ていますし、それぞれごもっともだとも思います。ただ、僕らはルールに従ってやるしかない。トップリーグがいろいろな方式を試すなか、今年はこの形で僕らのように救われるチームがあって、落ちたチームがあって…というのは、勝負の世界なので、そういうものなのではないのかな、と思います」

 優勝したサントリーも準優勝のパナソニックも、コカ・コーラもNTTドコモも近鉄も、予め決まっていたルールのもとで最善を尽くした。その結果として、コカ・コーラの残留があったのである。「勝負の世界なので、そういうもの」の声は、抑揚の少ない調子だった。東福岡高や早大でも主将を務めて勝敗の責任を背負ってきただけに、結果とは別領域の見解には惑わされない。

 辛苦を味わった2017年度を受け、2018年度は「まずベスト8が目標になると思います。最終的には日本一を目指していますが」と決意は新たである。リーグ戦の試合数が13から7に減るなか、ひとつひとつの「勝負」の意味は今季以上に深くなりそう。タフなチャレンジへ、コカ・コーラが再び走り出す。(文:向 風見也)