2018年シーズンに向け、J1王者である川崎フロンターレは際だった補強を敢行している。2013年から15年まで3年…

 2018年シーズンに向け、J1王者である川崎フロンターレは際だった補強を敢行している。2013年から15年まで3年連続得点王だった大久保嘉人をFC東京から呼び戻し、横浜F・マリノスのエースで攻撃を牽引していた齋藤学を2年越しのオファーで獲得。さらにFW赤崎秀平(鹿島アントラーズ)、MF鈴木雄斗(モンテディオ山形)も新戦力として加えた。連覇に照準を合わせ、盤石の態勢を整えつつある。

 動画配信サービス「DAZN(ダ・ゾーン)」との大型契約により、J1優勝チームには賞金、配分金で合わせて総額22億円を支給。これによって川崎は積極的な強化が可能になった。さらに勝ち続ける”うまみ”も出たと言えるだろう。

 しかし、アタッカーの頭数が増えたことは単純な戦力アップにつながるのか。試合に出られない選手が出てくると、どうしてもチームの空気は淀む。コンビネーションが合うのか、という不安もないわけではない。

 川崎は最強伝説を作り上げられるのだろうか?



FC東京から川崎フロンターレに復帰した大久保嘉人

 川崎は2017年シーズン、爆発的な攻撃力を見せている。トータル72得点は、他を引き離してトップ。2位の鹿島は53得点だった。

「守備の安定が優勝をもたらした」と言われるが、攻撃が戦術軸になっていたことは間違いない。前のシーズンまでチームを率いた風間八宏監督の色が残り、それを、中村憲剛を筆頭にしたピッチにいる選手たちがアジャストさせた形だった。

 フロントラインは国内最強の攻撃力を誇っている。得点王&MVPに輝いた小林悠、日本代表にも選ばれた阿部浩之、ケガから復帰後は絶大な存在感を示した家長昭博、そして攻撃を司(つかさど)った中村。基本形は小林がトップ、阿部が左サイド、家長が右サイド、中村がトップ下だったが、ポジションは流動的に入れ替わった。切り札として活躍した長谷川竜也も含め、人材は揃っていた。

 しかし、Jリーグとアジアチャンピオンズリーグ(ACL)を並行して戦うには、さらなる戦力の充実が求められる。昨シーズンの浦和レッズはACLで優勝したものの、国内リーグの戦いは不安定だった。DAZN効果によってJリーグ制覇が大きな富をもたらすのは明らかだけに、2冠を目指して補強は欠かせなかったと言えるだろう。

 では、はたして大久保、齋藤は噛み合うのか。

 結論から言えば、大きな問題はないだろう。いずれもプレーインテリジェンスが高く、スキルも十分。お互いのよさを引き出せるはずだ。

 そもそも、大久保は一昨シーズンまで川崎のエースだった。FC東京でも、川崎時代のパス出しを恋しがっていたほどだ。その感覚が身についていて、甘美なものがあるのだろう。

 一方の齋藤も選手としての成熟が見られ、守備やタメの作り方などディテールも向上している。ディフェンスを崩し、ラインを突破するプレーはJ1でも屈指。ケガからの復帰はGWくらいになりそうだが、サイドに起点を作ることでピッチを広げ、パスサッカーの精度をさらに高められるはずだ。

 なにより、小林、阿部、家長、中村はそれぞれポジション的なユーティリティ性を持っている。連係力が飛び抜けて高い。これは、川崎のフロントが「賢い選手」を優先的に獲得していることとも関係あるはずだ。

 とりわけ小林はサイド、中央でプレーを変化させられ、戦術理解度が抜群。身体的に大きくはないが、跳躍に優れ、ヘディングで負けない。攻守の強度が高く、日本代表選手としてもE-1選手権でそれを証明していた。

 大久保と齋藤の2人が入ったことで、戦術システムのバリエーションも増えるに違いない。例えば小林、大久保のツートップで、齋藤、家長をサイドに、中村をボランチに下げる4-4-2。トップに大久保、左から阿部、小林、中村、齋藤が並ぶ4-1-4-1も面白い。そしてトップに大久保、左に阿部、右に小林、インサイドハーフに中村、家長という4-3-3なども選択肢になるだろう。

 まずは噛み合わせを調整することになるが、期待は高まる。

 攻撃陣のカギを握るのは、やはり中村だろうか。他の選手も得点力や崩す力、高いスキルを持っているが、ピッチでタクトを振っているのは中村。パス1本で、攻撃の渦を作り出すことができる。大島僚太とのパス交換が周りの余裕を生み出し、攻撃を旋回させるはずだ。

 唯一の心配な点。それは風間監督に心酔していた大久保が、精神的な部分で不安定にならないかということだ。最大の敵は己の中にいる。