NFLポストシーズンのディビジョナル・ラウンドが終了し、ようやく今季の「ファイナル4」が出揃った。だが、その顔ぶれは実に興味深い。



トム・ブレイディのパスを止められるディフェンダーはいるのか?

「常勝軍団」ニューイングランド・ペイトリオッツが順当に駒を進めた一方で、残りの3チームはジャクソンビル・ジャガーズ、フィラデルフィア・イーグルス、そしてミネソタ・バイキングス。1年前のポストシーズンには出場すらできなかったチームが3つもチャンピオンシップ・ラウンドに進出してきたのだ。まさに、大混戦となった今季を象徴している。

 AFC(アメリカン・フットボール・カンファレンス)のチャンピオンシップ・ラウンドは、21世紀に入り5度のスーパーボウル王者に輝いているペイトリオッツと、10年ぶりのポストシーズンを戦うジャガーズが対戦する。同ラウンドへの進出はペイトリオッツが7年連続に対し、ジャガーズは1999年シーズン以来18年ぶり。ちなみにジャガーズは前回、このラウンドでテネシー・タイタンズに負けて敗退した。

 戦前予想ではプレーオフでの勝ち方を熟知し、かつホームで戦えるペイトリオッツが圧倒的有利と言われている。だが、ジャガーズは今回のディビジョナル・ラウンドでも下馬評を覆してピッツバーグ・スティーラーズを敵地で破っており、その勢いは決して侮れない。



試合日時は現地時間。チーム名の丸数字はシード順位

 注目すべきは、「ペイトリオッツのオフェンスvs.ジャガーズのディフェンス」という構図だろう。今季レギュラーシーズンの記録を見ると、ペイトリオッツの1試合平均得点はリーグ2位(28.6得点)で、ジャガーズの1試合平均失点もリーグ2位(16.8失点)。いわば「矛と盾」の対決と言っていい。

 そのなかでも見逃せないマッチアップは、ペイトリオッツQB(クォーターバック)トム・ブレイディとジャガーズ守備ラインの攻防だろう。

 今季、ジャガーズのディフェンスはセンセーショナルだった。守備バックでは「リーグ屈指のCB(コーナーバック)コンビ」と称されるA.J.ボイエとジェイレン・ラムジーが存在感を示し、ポール・ポスルズニーを筆頭とするLB(ラインバッカー)陣も抜群のスピード力で相手のパスを何度も防いできた。

 しかし、このラウンドの相手はレギュラーシーズンとはひと味違う。「史上最高のパサー」ブレイディにプレッシャーをかけなければ、好きなようにパスを投げられてしまうだろう。TE(タイトエンド)ロブ・グロンコウスキーなど豊富なレシーバー陣を使い分けながら、次々とパスを通してくるはずだ。

 よって、ブレイディにポケット(攻撃ラインがQBを守るために作る空間)のなかで自由を与えないためには、ジャガーズの守備ラインはペイトリオッツの攻撃ラインに勝(まさ)るパフォーマンスを見せなければならない。

 そのジャガーズの守備ライン陣で注目は、DE(ディフェンスエンド)カーレイス・キャンベルの存在だ。昨春、4年総額6000万ドル(約66億円)の高額契約で移籍してきたキャンベルは開幕戦で4サックを挙げ、最終的にはリーグ2位タイの14.5サックをマークしている。

 アメリカのフットボールサイト『フットボールフォーカス』によると、今季キャンベルが相手QBに対して仕掛けたプレッシャーはリーグ最多の81回。右DEとしてプレーすることが多く、ブレイディのような右利きのQBの背後からパスラッシュをかけてくるのを得意とする。キャンベルがどれだけブレイディに脅威を与られるかが勝負のカギとなりそうだ。

 ディビジョナル・ラウンドでペイトリオッツと対戦したタイタンズは、ブレイディからサックを奪うことができなかった。リーグ2位のサック数(55.0)をマークした今季のジャガーズは、本拠地のジャクソンビルとサックをかけて「サクソンビル」と呼ばれている。果たしてサクソンビルがブレイディからサックを奪えるのか、その点に注目したい。

 一方、NFC(ナショナル・フットボール・カンファレンス)のチャンピオンシップ・ラウンドは「イーグルスvs.バイキングス」というカードになった。両軍とも気になる存在は、司令塔のQBである。

 まず触れておかなければならないのは、イーグルスのQBニック・フォールズも、バイキングスのQBケイス・キーナムも、ともにシーズン開幕時は先発QBではなかった点だ。このラウンドはスター選手ではないQB同士の対決ということで、現地の一部メディアは「ノーネームボウル」と呼んでいる。

 イーグルスは、2016年ドラフト全体2位指名のQBカーソン・ウェンツがレギュラーシーズン第14週に大ケガを負って今季絶望となったことで、控えのフォールズに白羽の矢が立ったものの、第15週から3試合先発を任されたフォールズの平均パス成功率はわずか56.4%。レギュラーシーズンでのフォールズのプレーは明らかに安定感を欠いていた。

 しかしプレーオフ初戦となったディビジョナル・ラウンド、アトランタ・ファルコンズ戦でのフォールズのプレーはレギュラーシーズンとまったく違っていた。パス30本中23本を通して高い成功率をマークし、見事チームを勝利に導いたのである。

 好成績を挙げられた要因は、プレーオフまでの期間に練習時間を多く作れたことが大きいだろう。ファルコンズ戦ではチェックダウンパス(パスターゲットが全員カバーされているときにランニングバックに投げる短いパス)を織り交ぜながら、着実にボールを進めていた。このオフェンスは、急遽出番となったレギュラーシーズンではなかったものだ。

 チェックダウンは1度に長い距離は稼げないため、相手に大きなダメージを与えることはできない。だが、1試合平均の被喪失距離がリーグ4位(306.5ヤード)のディフェンス力を誇るイーグルスならば、オフェンスでリスクの高いプレーを選択しない賢い戦い方とも言える。

 対するバイキングスも、開幕時のスターターQBだったサム・ブラッドフォードが故障したことにより、控えのキーナムに出番が回ってきた。

 ただ、こちらはイーグルスとは違い、控えQBが「シンデレラボーイ」へと化けた。先発を任されるやいなやオフェンスの主軸として大活躍し、バイキングスを8年ぶりのNFC第2シードに導いたのである。さらにニューオーリンズ・セインツとのディビジョナル・ラウンドでは敗戦濃厚の雰囲気のなか、残り数秒で逆転のタッチダウンパスを決めてみせたのだ。

 ランディフェンスにおける1試合平均の喪失距離を見ると、イーグルスが1位(79.2ヤード)でバイキングスが2位(83.6ヤード)。ともに相手のランを止めることを得意としているため、ますますパッシングゲームの出来が重要となるだろう。両QBがどれだけバスでオフェンスを支えられるのかに注目だ。

 戦前のオッズはバイキングスが有利。オフェンスの戦術を熟知しているキーナムに分があるのは仕方ないだろう。だが、このチャンピオンシップ・ラウンドの舞台は、降雪など厳しい天候となる可能性も高いフィラデルフィアだ。ドーム球場を本拠地とするキーナムがアウェーのフィラデルフィアでこれまで通りのパフォーマンスができる保証はない。

 いずれにしても、一発勝負のプレーオフは何が起きても不思議ではない。現地2月4日、ミネソタ州ミネアポリスのUSバンク・スタジアムで行なわれる第52回スーパーボウルの舞台に立つのは、どの2チームか。