【石川祐希が語る3度目のイタリア挑戦 後編】

 イタリアのバレーボールリーグ・セリエA1部のラティーナで奮闘中の石川祐希。年明け4戦目となる1月15日のピアチェンツァ戦では、主力選手が体調不良で欠場したこともあり、待望のスタメンフル出場を果たした。

 試合はフルセットの末に敗れたものの、石川はチーム内トップの22得点を記録するなど、攻守にわたって大活躍。インタビューの前編では、スタメン奪取に「チャンスはある」と自信をのぞかせていることを紹介したが、その明るい兆しが見えた。

 石川は、それまでの自身のプレーをどう評価していたのか。また、現在ドイツでプレーする全日本メンバーの柳田将洋と大竹壱青、春高バレーで下北沢成徳のエースとして注目された妹の石川真佑(まゆ)の活躍をどう見ているのか。世界に通用するエースを目指す石川が、その胸中を語った。



イタリア・セリエAで、3度目の競技生活を送る石川祐希

――イタリアでの2018年のスタートは、いかがでしたか?

「年明け1戦目のカステッラーナ戦は、1回しかなかったピンチサーバーでの出番でミスしてしまったので、反省からのスタートになりました。でも、チームとしては3-0で勝ちましたし、連敗していた昨年末よりもムードはよくなりましたね。次のソラ戦もストレートで勝ったんですが、第2セットの途中から出た自分のプレーは……ボチボチという感じでしょうか(笑)。相手は下位のチームだったので、あれくらい(7得点)はやらないといけませんから」

――第3戦のチビタノーバ戦では、一転してストレート負けを喫してしまいました。

「下位チームとの試合が続いた後に2位のチームとやりましたから、やはり厳しい戦いになりました。第1セットに関しては、相手のサーブが走っていなかったのもあって競ることができたのは収穫ですが、第2セットからあれだけサーブで崩されてしまったところは、これから改善しなくちゃいけません」

――石川選手の出番もなかなか回ってきませんでしたね。

「ベンチで『(出番が)くるかな? くるかな?』と待っていたんですけどね(笑)。ようやく出られたのが第2セットの11-18と、第3セットの10-16というビハインドの場面で、そこから試合をひっくり返すのは難しかったです。

 入ってすぐにブロックを2本決めることができて乗っていけるかなと思ったんですが、逆に僕のスパイクの1本目をブロックされてしまって。セッターの(ダニエレ・)ソッティーレは『今のトスは低かったね。ごめん』と謝ってくれたんですけど、そういう低いトスを、リバウンドを取るなども考えて繊細に処理していかないといけない。チーム全体としても第2セット以降はあきらめムードが漂っていたので、もっと僕が鼓舞すればよかったです」

――ここまで、なかなかスタメンを掴めない状況をどう捉えていますか?

「これは今言っても仕方ないんですが、やっぱり(グラチャンで)ケガをして、リーグ開幕のときに出られなかったのが痛いです。あと、ケガが治ってきた頃にインカレに出場するために帰国したことで、監督も自分を使うことを躊躇(ちゅうちょ)したところはあったと思います。結果、インカレでも悔しい思いをしましたし、中途半端はよくないですね」

――全日本や大学での試合を含めると今季は日程が厳しかったと思いますが、オフには何をしていますか?

「週に1日オフがあるんですが、たいてい家でゴロゴロしてます(笑)。あ、でも、先日は日本人の方が経営している美容院で髪を切りましたよ」

――髪型に特別なこだわりがあるんですか?

「普段はこだわらないんですけど、日本のファンの方もわざわざイタリアまで来てくれますし、メディアの方々にも取材していただくので、写真や映像が残るじゃないですか。イタリアの流行りではあるんですが、1回目の留学のときに角刈りっぽくカットされてしまって。それをけっこう突っ込まれたので、今回は日本人の方がやっているというところにこだわりました(笑)」

――そういった対応力も経験の積み重ねによるものですね(笑)。今回でイタリア挑戦は3度目ですが、セリエAでプレーするメリットはどこにあると考えていますか?

「世界のトップの選手たちと練習ができますし、試合でも各国の代表クラスの選手たちと対戦できるところですね。慣れていない環境でプレーする難しさを経験することもできます。言葉を覚えてコミュニケーションを取ることも重要ですが、それができるまではプレーで実力を証明しなくちゃいけない。ずっと日本にいたら経験できないことばかりです」

――チームメイトで、元イタリア代表のクリスチャン・サバーニに石川選手の印象を聞いたところ、「もっと筋肉をつけたら、世界のベストプレーヤーのグループに食い込めると思う」と答えてくれました。

「僕個人のことに関しては、スケジュールがタイトで体を作る時間あまりとれなかったので、これからしっかりやっていきたいと思います」

――日本と世界との差として、サバーニの言うパワーだけでなく、高さも挙げられることが多いですが、それについてはどう思いますか?

「バレーには、パワー、スピード、高さ、テクニックといった勝つための要素がありますが、結局モノを言うのは”高さ”だと思っています。ただ、それは他の要素が全く同じレベルだったときに、最後は高さがあるチームが勝つということ。高さ以外の要素が、他の国とまったく同じレベルになるということはないですよね。だから、日本だったらスピードやテクニックなどをいかに磨いて、高さの問題をカバーしていくかが大事です。逆に、それを考えなければ世界に勝てるとは思いません」

――イタリアで、「高さに慣れる」ことはありますか?

「それはありますね。セリエAには、世界のトップ選手はもちろん、代表に選ばれていなくても高さがあってブロックがいい選手がたくさんいますから。ミドルとオポジットはみんな2m以上あるので、日頃から『高さに慣れる』という感覚を養えています」



試合ごとに徐々にプレー時間を増やしている石川 photo by Paola Libralato/www.top-volley.it #TopVolley46

――全日本の中垣内祐一監督は、2m超えの選手を積極的に起用するようになってきています。

「背が高いに越したことはないですが、先ほども言ったように、バレーは高さだけではないですからね。その選手がどれだけ動けて、テクニックがあって、メンタルが強くて、経験があるのか。監督もそこを見極めたうえで選手を選んでいると思います。全日本は選手を育成するところではなく、結果が求められるところ。僕も全日本ではそのつもりでプレーしていますし、他の選手に負けないスキルや経験を積むためにセリエAで頑張っています」

――同じ全日本のメンバーである柳田将洋選手、大竹壱青選手(石川と中央大の同級生)も今季はドイツでプレーしていますが、そのことについて相談されることはありましたか?

「マサさん(柳田)からは、相談というか、『イタリアどう?』という感じでいろいろ聞かれます。壱青の場合は『どうかな?』と相談されたんですけど、とりあえず『いいんじゃない?』って答えておきました(笑)」

――その2人以外にも、海外でプレーすることを考えている選手もいると思います。

「ぜひ海外でプレーしてみてほしいですね。もちろん日本もいい環境ですが、やはり世界のトップ選手が集まってきていてレベルが高いですから。ただ、海外に行けばどこでもいいわけではありません。自分が成長できる環境をきちんとリサーチしたうえで、そこに身を置けることが一番だと思います」

――日本のVリーグでは同学年の選手が活躍していますが、チェックしていますか?

「試合をオンタイムで見ることは難しいんですけど、Vリーグの公式のハイライト動画とスタッツはチェックしてます。年明けから同期がいっぱい出場してますから、それはやはり刺激になりますね」

――1月には春高バレーもありましたが、妹の真佑選手にはLINEでアドバイスされたと聞きました。

「最初は、『最近スパイクがうまくいかないんだけど』とメッセージがきたので、具体的な質問じゃないと、どうアドバイスしたらいいかわからないと返したんです。例えば、ボールがうまく叩けないとか、ジャンプのタイミングが取れないとか。そうしたら、後で動画を送ってきたので、それに対して僕が気づいた点を伝えました」

――真佑選手はまだ全日本の経験はありませんが、今後の活躍次第では2020年の東京オリンピックに一緒に出られるかもしれませんね。

「僕はオリンピックに出場して勝つことを目標にしていますが、妹にも自分なりの目標があると思います。それがオリンピックに出ることなら、それに向かって頑張ってほしい。兄妹としてではなく、ひとりのバレーボール選手として応援しています」

――全日本での大一番となる今年9月の世界選手権では、初戦でホスト国であるイタリアと当たります。しかも、その1試合だけ前倒しで、屋外競技場の「フォロ・イタリコ」で試合が行なわれることについてどう思いますか?

「開幕戦をそういう大きな舞台でやれるのは非常に楽しみですし、イタリアとしっかり勝負ができるようにしたいですね。完全アウェーの試合になりますが、(リオオリンピックで銀メダルを獲得した)イタリアと戦う意味を考えながら、特別な舞台でやれるということを楽しみたいです」

――セリエAのレギュラーシーズンは3月まで続きますが、どういったことを意識してプレーしようと考えていますか?

「少ないチャンスの中で、自分が持っているものをしっかり出して活躍すること。それを積み重ねていくことですね。そのために、練習から自分にプレッシャーをかけていきたいと思います」