全日本卓球の会場に、金色に輝く脚で堂々と立つ、一際目立つ卓球台がある。2016年のリオ五輪でも使用された「infinity」(インフィニティー)と呼ばれる台だ。「infinity」は卓球台メーカーの三英が開発し、デザインはプロダクトデザイナ…

全日本卓球の会場に、金色に輝く脚で堂々と立つ、一際目立つ卓球台がある。

2016年のリオ五輪でも使用された「infinity」(インフィニティー)と呼ばれる台だ。

「infinity」は卓球台メーカーの三英が開発し、デザインはプロダクトデザイナーの澄川伸一氏が手がけた。一見するとシンプルなデザインだが、実は深く考え抜かれたコンセプトのもとに創られた芸術作品である。

誰もが目を引く金色の脚部は、ピンポン球の描く放物線をモチーフとしたフォルムが特徴だ。そのデザイン性の高さと振動の少なさを同時に実現するために、80㎜もの厚みのある成形合板が用いられている。また、その材には被災地・岩手県宮古市産のブナ材が使用され、東日本大震災の復興の願いが込められている。

テーブルカラーは「レビュブルー」で、青と緑の中間といった色だ。全日本の会場内では、他の水色の台よりも少し緑がかって見える。
この色には「新しい生命」というメッセージが込められ、東日本大震災からの復興という意味合いも含まれている。まるで地球から新しい生命が芽吹くかのような、華やかな脚部とは対照的に繊細で落ち着いた印象を受ける。

リオ五輪の際には脚部の中心に五輪のマークがついていたが、今回はその部分に「全日本卓球」と白地で書かれた大会ロゴが書かれている。




「infinity」はメインコートでのみ使用されており、数多くの試合がある大会前半には、24台のうち4台のみ置かれていた。全国各地の厳しい予選を勝ち抜いた1000人以上の精鋭の中でも、その台上でプレーできる選手はごく僅かしかいない。

「infinity」とは英語で「無限大」という意味だ。試合の勝敗に関わらず、「infinity」は全日本に出場するすべての選手たちの力を無限大に発揮させる守り神になるかもしれない。

文・写真:赤羽ひな(ラリーズ編集部)