グランドスラムの中で唯一日曜日に開幕する全仏オープン(5月22日〜6月5日/フランス・パリ)。今年は雨の開幕となった。32試合行われるはずだったが、10試合を消化したのみ。センターコートの第2試合に入った第5シードの錦織圭…

 グランドスラムの中で唯一日曜日に開幕する全仏オープン(5月22日〜6月5日/フランス・パリ)。今年は雨の開幕となった。32試合行われるはずだったが、10試合を消化したのみ。センターコートの第2試合に入った第5シードの錦織圭(日清食品)とシモーネ・ボレッリ(イタリア)の1回戦は2度の中断のあと、結局翌日の月曜日に再開されることとなった。現在のスコアは6-1 7-5 2-1。また、日比野菜緒(フリー)と第6シードのシモナ・ハレプ(ルーマニア)の1回戦も月曜に順延になった。

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 過去2度、錦織相手にフルセットに持ち込んでいるにもかかわらず、この対戦にイタリアの記者たちは冷めていた。「ニシコリの楽勝だよ」という者もいれば、「今回は1回戦負けの賞金とポイントを取るだけで十分」と辛辣なことを言う者もいる。それは、世界ランク6位の錦織と116位のボレッリとの差を強調しただけではなかった。ボレッリは左膝のケガで6週間、試合どころか練習もできていなかったのだ。

 実際、第1セットは6-1と錦織のワンサイド。ボレッリはアンフォーストエラーを連発し、ラリー戦になれば錦織の巧みなショットの組み立てに太刀打ちできなかった。

 第2セットも第2ゲームでブレークした錦織だが、あまりに一方的な展開になると、ふと集中力が途切れる悪いクセがある。このセットの第5ゲームがそうだった。40-30でポイントを握っていたが、バックハンドのミス2つとダブルフォールトで3ポイント連取を許し、ブレークバックを許した。

 ケガを除けば、過去の対戦が示しているようにボレッリは決して侮れる相手ではない。「負けてもともと」精神がプラスに働くこともあるし、実戦不足でも打ち合いながらだんだんと勘を取り戻してくるということもありえない話ではない。武器のサービスでフリーポイントを増やし、楽々とサービスキープをし始めた。

 第1セットの途中からパラパラし始めた雨は、徐々に激しさを増し、スタンドには湿っぽい傘の花が目立っていた。集中力の持続が難しい状況だ。赤土は雨に濡れても危険度が低く、ラインの滑り具合をチェックしにいってもなかなか中断を決めなかった主審が、ようやく第9ゲームが終わったところで中断を告げた。

 そこから待つこと3時間近く。再開直後の第10ゲームは3度のデュースの中で、錦織が2度ブレークポイントをブレークにつなげられなかったが、次のゲームをラブゲームでキープしていいリズムをつくると、第12ゲームを30-0から4ポイント連取でブレークに成功。タイブレークに持ち込まれずに7-5で締めくくった。しかし雨はまた強まり、第3セットの2-1でふたたび中断。その後、再開されることはなかった。

 2日前の記者会見で「日曜にスタートするつもりで準備をしている」と、多くの選手が嫌がる全仏の開幕日登場にも前向きだったが、冷たい雨の横槍も想定していただろうか。

 あの第2セットをもっと早く終えていれば中2日ゆっくり休めたのにと悔やんでみてもしょうがない。一晩挟んで、これ以上もつれさせずに試合を締めくくることに専念したい。

(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)